感覚伝染(2)

「どこにもいないよね。」

 スイカは焦ている。


 もしユミリは犯人に隠蔽なところに追い込まれたら最悪。


 そして、スイカのスマホが鳴った。


 和祁だった。電波が通じたということは、和祁はもうお化け屋敷から出た。


 スイカは走りながら電話に出る。

「うん?」


「スイカ?ユミリの番号は日本のじゃないから……そのスマホの位置を知るには時間かかるので、待ってて。スイカの位置はGPSでわかってるから、すぐ追いつく。」


「うん。」

 追いつくというのは和祁を待たなくていい。

 スイカは通話を切断して人混みに混ざってユミリの姿を探す。


 …………………


『ユミリさんがずっと早く移動してるな。』

 ユミリの位置情報とともに、このメッセージが和祁にラインで送られた。


(早く移動してる?やはり追われてるのか。もうすぐ付くから、待っててユミリさん。)

 スイカは走って走って、遂に遠くにユミリの姿が見えた。


「あっ!スイカちゃん!」

 ユミリもスイカに気づいて叫びだした。


「大丈夫ですか?」

 スイカは慌ててユミリに走り寄る。


「うん!」

 ユミリはすぐスイカに抱きついてくる。


「……」

 スイカは抱きついてきたユミリを無視して周りを見る。

(敵は?どこ?)



「スイカちゃん、もしかして私を探してたのですか?」


「うん。」


「!!!」

 ユミリの心は爆発しそうにドキドキしている。


「もう大丈夫ですから。」

 抱かれているから、スイカもユミリの早い鼓動を感じた。

(まだ怯えてる、やはり敵がいるのか?)


「わたしも、スイカちゃんのこと探してましたよ。」


「『こと』はつけません。それより、何があった?」


「うん?いいえ、わたしさっき、スイカちゃん急に人混みの中に消えてしまって。」


「それはすみません。」

 スイカは素直に謝る。もしユミリをはぐらせなかったら彼女は危険に会わないのだろ。


「それから、わたしはずっとスイカちゃんを探してましたよ。」


「……そうじゃなくて、悪いことあったんですか?」


「どういう意味ですか?」

 ユミリは頭をかしげた。


「……」

 スイカも呆れた。

(あれ、ユミリさんは全然襲われてたように見えない。)


 スイカがぼうっとするうち、スマホにメッセージが来た。


『ここ来て』

 和祁からの、位置情報とともに。


「ちょっとここで待ってて、いやーーーー」

 スイカは慌てて動き始めては止まった。

(ユミリさんを一人ここに放っておくわけには行かないでしょうが……カツケは詳しく話してないから、ユミリさんが狙われてる可能性は消去できないよね。)


「どうしたのですか?スイカちゃん?」

 ユミリは迷った視線でスイカを見る。


「静かに、抱かせて。」


「えっ?」


 ユミリが理解できないうちに、もうスイカに無理やりお姫抱っこされた!


「えっええっ?!」

 突然の幸せのためだろうか、飛ぶようにスピードが早すぎるためだろうか、ユミリは移りゆく景色を見ながら絶叫している。


 14:14ーーーー白星パークのある芝地


 ワイシャツとタイツの王道OL姿の女性が一歩引いてから、拳銃を打った。


『一歩』というのだが、彼女はほぼ5メートルくらい距離を取った。


 同時に、その女性の相手ーーーーまさに桂あおい。


 血の花があおいの目の前に綻びた。


「アッ!!」

 それは一人の用心棒が打たれた。彼の血は空を舞ってあおいの服に染みる。


「おじいさん!大丈夫ですか!しっかりしてよ!!」

 成熟に見えたあおいは今子供のような泣き顔をしている。



「ちっ、これくらいの用心棒たった6人?思っとより無用心ですわ、お前らは。」

 OLは余裕ありそうに嘲笑する。


 ーーーーー


 同時に


(この行動パターンの隙は……)

 和祁は少し離れた丘で、木の茂みに隠れて状況を観察している。


 あおいが襲われたのはとても予想外だった。


 もちろんあおいは救う。


 でも今和祁ができるのはそのOLの行動パターンを分析するだけ。戦闘はスイカに任せる。

(早く来て……)


 突然、和祁は後ろから引っ張られた!


(敵の連中か!?)

 恐怖が和祁のここに染まる。


 そして彼の目の前に火花が散った。


「気をつけてよ。」

 スイカの声だった。

 OLの銃撃から和祁を助けた。


 そして、スイカはその女性に立ち向かっていく。


「ちょっと、そのOLのカバン!」

 和祁は慌ててスイカを注意する。


 さっきの観察で、彼は一つのことに気づいた。そのOLはまさに先日電車で見たOL。そしてそのカバンに映った紋章は多分精神に影響を与えられる。


 あの日、和祁は急にスイカの目を触ろうとしたのもそのせいだろ。


「カバン?」

 スイカはさっぱりわからない。


「……」

(詳しく話す時間が無い……だったら!)

 和祁は手を伸ばしてスイカの目の寸前に止まった。


 するとスイカの記憶が蘇る。


 先日電車で和祁の変な行動は何かは、なんとなく理解した。


(そのOLの仕業か…)

 と思っていて、スイカは丘の下へ走りかけて戦いに混ざろうとする。



 …………


 一方ーーーー


「もらった!」

 OLが遠くにいる和祁に気をつける時、一人の用心棒の太刀が彼女の首に近付いていく!


「ふっ。」

 OLはニヤと笑いカバンを揺らした。


(カバンでふせぐ気?)

 用心棒はそう考えたら、次の瞬間彼の意識は知らないどこかへ飛んでしまった。


 意識をなくしたが、動きが止まった訳ではない。


 彼の太刀は派手に自分に突き刺さる。


 血が噴泉のように噴き出す。


 一般人にとって地獄並の光景だったが、スイカはそんなことを気にする暇がない。

(精神操作みたいな能力か。)

 超能力などは不思議だが、スイカは体験したことがあるから、迷わず信じた。


(白鷺さん!)

 スイカに気づいて、あおいは恐れて声出せないけど、心でスイカを応援している。


「うん?」

 OLは迅雷のごとく傍に殺到したスイカを防ごうとしたらーーーースイカは攻めて来なくてただ駆け抜けた。


 スイカはあおいの傍に着いた。

「もう大丈夫ですよ、あおいさん。任せて。」


「気、気をつけなさい。」

 あおいは必死に震えるのを抑えている。


 スイカは答えずに、踵を返しOLに向く。


「素晴らしいですわ、いい顔してますね、おじょうちゃん。ははぁ!」

 OLは得意げに笑っている。


 同時に、スイカは用心棒達は皆戦闘不能になったことに気づいた。


 スイカは一人で戦うしかない。、


 いやーーーー



「僕が相手にしてあげる。」

 和祁はOLの後ろに立って、拳銃を彼女に向けている。

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