感覚伝染(1)
2025/3/14(木)ーーーー13:25ーーーー白星パークーーーーお化け屋敷
「電気が消されてるみたいだけど。」
和祁のチェックが完了した。空港の事件に懲りて、今回彼は装置を持っている。
「えっ、そっか。」
スイカは明かりの消えた廊下を見回してから、闇に霞んだ和祁の顔を見上げる。
「でもこれだけじゃないかもしれない。」
「とにかく、続けて。」
「そうだな、もっと詳しく調べないと。」
と答えたら、和祁はスイカに軽く殴られた。
「そうじゃない。お化け屋敷のこと。」
「えっ?」
「停電したここはより素晴らしいじゃん。」
ここは真っ暗になっている。停電という原因も恐怖を与えてくる。
「うん。」
答えながら和祁は振り返り道を見た。
(確かに面白そうだな。)
「どう?」
スイカは訪ねた。
「悪くない。」
「怖いなら手を繋いでもいいよ~」
スイカは手を差し出した。
「ただこれ言いたいだけだろ!」
和祁はつっこんだ。
「ふふ、かっこいい真似するのはカツケの特権じゃないよ。」
スイカは手を戻した。
「行こ。」
スイカは踵を返し進もうとする。すると手を後ろから和祁に取られてしまった。
「えっ?」
スイカは驚き声を漏らす。
「あっ?!」
和祁は驚かされたスイカに驚かされた。
「あっじゃないわよ、どうしたの?」
「いや。」
和祁はまだスイカの手を離していない。
スイカは彼を振り払っていない。
つまり手を繋ぐのを許可したのだろ。
そして二人は一緒に進んでいく。
(スイカの手こんなに、折れそうに柔らかいんだな。)
和祁は優しくスイカの手を握っている。
二つの手が、離れそうな微かな力で繋がっている。
しばらく、ほかの人達が選んだ道から叫び声が聞こえた。多分当ての部屋に閉じ込められたからだろ。
彼らの叫び声は本当にお化けみたい。
スイカはふと傍の和祁を睨んだ。
(こんな雰囲気なのに……怖がったふりして甘えた方がいいかな?でも、流石に私はそういうキャラじゃないし……)
「どうしたスイカ?」
「いや、なんでも。」
「急に握りしめて。」
「えっ?」
スイカがやっと気づいた。自分はつい手に力を入れた。
少し黙った後、スイカは勇気を出して尋ねる。
「もし、ここで、私がびっくりさせられて、気絶したら、和祁はどうする?」
「気絶したのは……スタッフ?」
「なんでスタッフかよ!?」
「びっくりしたスイカに殴られて、倒れたとか。」
「そうだね。」
スイカは微笑んだ。
(私変なこと聞いちゃったね。)
「冗談だった。本当にそうなったらーーーー」
「もういいよ。ありえないことだし。」
「そうだな、スイカ強いから。」
和祁は言いながらスイカの頭を撫でてみた。
「……」
スイカは何もせず。
(なんか……嬉しい……)
「撫で心地いいな。」
和祁は褒めた。
「でしょ。」
「特に撫でやすい。」
和祁は高いから手軽にスイカの頭を撫でられる。
「ちょっと、どういう意味!?」
その時、急に光が二人を包み込んだ。
「お二人ご無事ですか?」
スタッフみたいな男が懐中電灯を持って立ち寄ってくる。
「はい。」
「はい、どうしたんですか?」
和祁とスイカは答えた。
「電力故障が起こって、本当にすみませんでした。原因はまだ不明ですか、必ず出来るだけ早く恢復して見せます。」
客に怒られるのを恐れているだろ、スタッフは慌てたように見える。
「予備電源ないのか?」
和祁は訪ねた。
「ありますけど、それも壊れてしまいまって……」
「わかりました。」
スイカは代わりに答えた。
「チケットは後で補償しますから、その時はご連絡します。電話番号とか教えていただけますか?」
「あっ、それはいいな。僕の電話番号はーー」
補償を聞いて、和祁は興奮してしまった。
「もういいです、補償はいりませんから、失礼します。」
スイカは和祁を引っ張って立ち去った。
「ええっ?!」
和祁は(╥_╥)だった。
「事件でしょ?もうチケットとか考えないでよ。」
スイカは小声で文句を言った。別に電話番号を残してもよかったが、スイカは細かいことに拘る和祁がいやだった。
13:45
「ラフェル家内部が争い起こっていて、ユミリさんを駒とするなら、きっと一般人を巻き込みたがらないでしょ。ユミリさん自身はともかく、大きな騒ぎ起こっちゃったら警察は見逃せないよね。」
「だから、敵はただ僕らをここに閉じ込めて、傷つけたりしない。」
「つまり空港の時より簡単なはず、ここから逃げ出せばきっとユミリさんを救える。」
明かりのないお化け屋敷の中で、和祁とスイカは小声で話している。
和祁はあるスマホに似た装置を弄っている。装置の微かなは唯一の光源となった。
和祁はお化け屋敷のコンピュータシステムに侵入してドアを開ける方法を探そうとしている。
スイカは傍に立って、床に座った和祁を見守っている。
静かに見守っている。
そして、彼女の視界に急に能面みたいな白い顔が現れた。
「!!急に顔上げるな!!!」
「ぶつかったのか?」
スイカの目はあんまり良くないから、動きも鈍くなる。だから、和祁はそう心配した。
「……そうじゃなくて、自分の顔いまどれだけ怖いのか知らない?」
「……」
スイカの驚いた原因を知って、和祁はまた作業にもどる。
「いや、ダメか。」
しばらく和祁は呟いた。
教えてもらっても聞き取れないから、スイカは状況聞かずに黙っている。
しばらく、和祁は訪ねてみた。
「スイカ、ドア壊せる?」
「それはちょっとね。」
壊せても傷つきやすいから、スイカはできればそうしたがらない。
「まど?まどは?」
「いいでしょう。でもどこ?」
スイカは周りを見た。ここは真っ暗ということはまどがない。それにお化け屋敷は迷宮みたいなもの。
「システムからマップを手に入れたよ。」
和祁は得意げに微笑んだ。
「おっ、それいい。」
スイカは思わず答えたがーーーー
(普通マップにまどは標記する?)
「まどは標記してないけど。」
和祁は補充した。
「ネタ弄るのも場合見てよ。じゃどうする?」
「でも、きっとまどは周りにあるんだろ。周りに着けばいい。」
「なるほど。」
二人は出発する。
さっきの調査で、電源は誰かに切られたことがわかる。そうであれば犯人は多分電源を再起動させないように仕掛けるのだろ。つまり、お化け屋敷のコンピュータシステムに侵入しても電源を再起動出来る保証がない。しかも侵入にはめっちゃ時間がかかってしまう。
故に和祁は物理的に脱出することにした。
しばらく経って、二人の道に大きな門が立ちはだかっている。
「通じないな。」
「通じないね。」
と、つぶやきながらスイカは拳を握りしめ打とうとする。
「壊せる!?」
和祁は驚いた。流石にこの門は厚い。
「ありえなさそう。だけど、狙いはボタン。」
言いながら、スイカは強く門の隣にあるボタンをぶっ壊した。
カンッ!
「いてぇ……ボタンじゃなかったのかこれ……」
スイカは泣きそうに血まみれの手を撫でながら幻紋を呼び出した。
幻紋の明るさは環境によって変わるから、今は月明かりみたいに微かだけ。
そしてスイカが打ったところを見ると、そこは拳と同じ大きさの穴が残されている。
スイカのパンチの力。
しかも幻紋を使っていなかった。
「すごい。」
和祁は感嘆するに禁じ得ない。
スイカは手の傷が大体治ってから幻紋を消した。
「あっ、門が開ける。」
和祁は門を押してみたら、今度は開けた。多分スイカの攻撃は何かの装置を壊してしまったのだろ。
「うん。」
和祁が続けて進んでいく、スイカは助手みたいに後ろに付いている。
和祁は装置を弄っているから、手は繋がれない。
怖いわけではないけど、スイカはなんとなく、和祁にもっと近付きたいと思っている。
急に、スイカは何かを気付けたように和祁を注意した。
「避け!」
「うん?」
何があったか知らないけど、スイカの言う通りにすればいい。和祁はただちに一歩を引いた。しかし避けられなかった。顔は白く柔らかい何かにぶつかっていて、視界は完全に遮断された。
「ふふっ!」
スイカは思わず吹き出してしまった。
それは幽霊のぬいぐるみを発射する仕掛けみたい。
「……」
ため息をついてから、和祁は続けて進む。
一方スイカは歩きながらまた和祁がぬいぐるみにぶつかったシーンを思い出し吹き出した。
「ふはははぁ…」
「……」
和祁は何気なく歩く。
(ところで、スイカは人の前あんまり笑わないな、特に会ったばかりの頃。笑いツボ浅いのに。)
会ったばかりの頃、二人とも目立たない子だったーーーーいや、変な意味で目立っていたが。彼らが助け合い知り合ううちに、それぞれの才能も暴れて、遂に頂きのSランクになったわけだ。
まぁ、Sランクなった今も冴えないけど。
流石に今の時代、人々は自分の世界に浸る一方で、他人に関わる気が少ない。
故に、そんなに強くて綺麗なスイカは男子からラブ手紙一本も受けたことがない。まぁ、和祁がいつも傍にいるという原因もあるけど。
「ここは窓だな。」
和祁は壁にかかる絵を指さす。
「お化け屋敷の雰囲気のため、絵で隠したわけか。」
スイカは絵を取り除くと、やっと暖かい光が二人を包み込む。
和祁は窓を開く。
「行こう。」
和祁はスイカの背中を押した。
「あっ?」
「ここ2階、僕はここから出るわけないだろ。」
「うん。」
頷いてからスイカはまどから飛び出した、魚のようにすらりとした。
彼女は先にユミリを探しに行く。
2階からスイカが完璧に地面に降りる姿を見ると、和祁は感心した。
(やはりスイカは違うな、一人でも派手に行動できる)
「わっ!?」
「あの人すごい!」
下から傍観者達の驚き声が聞こえる。
…………
それからの十分感に、白星パークにいる人達は、走っている一人の少女が見当たった。
幻のように空を舞う髪、宝石のように輝く汗と、彼女の可愛い姿。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます