花見(4)

(これだけではスイカの怒りを消せませんね、なら!)

 ユミリは覚悟決めて、その弁当に手を出して、落とそうとした!


「えっ?」

 不意打ちだったから、スイカも弁当をちゃんと守れなかった。


 弁当が落ちるうちに、スイカは少し躊躇ってから、覆された弁当を救おうとした。

 スイカは早いから、一部の料理はちゃんと弁当箱に残っているが、彼女自身が料理にびしょびしょされてしまった。


「スイカちゃん!ごめんなさい!本当にごめんなさい!!」


「……」

 スイカは何も答えなかった。

(やはりユミリさんは私に悪意抱いてるね……)

 でもユミリさんのための花見だから、スイカは無理やりに怒りを抑えることにした。


 一方、ユミリはもちろん罪を全部和祁に被せさせる。

(すべてそいつのせいです!!!)



 ーーーーーーーー


 12:03ーーーー白星パーク


 昼食が終わった後。


「スイカちゃん、スイカちゃん、一緒にそっちに遊びましょうよ!」

 ユミリはパークの遊園施設を指さす。悪いことしてしまったから、彼女は必死にスイカの笑顔を取り戻そうとする。


「花見のために来たじゃないか!?」

 和祁はつっこんだ。


「カツケの言う通りですね。遊園地のために来たわけでもありませんし。」

 このままユミリを好きにさせたがらない、とスイカはすねるように思った。


「楽しいことが一番だと思いますが。いっそ一緒に遊園しましょうか。」

 真弓は調停しようと思った。


「……」

 和祁は黙り込んだ。

(せっかくだから一緒に遊ぶのも悪くないが、スイカはスマホだけいじりたいかも。スイカの気持ちわからない以上、僕は何も言わない方がいいかな。)


「……いいですよ、でも、手分けしましょう。」

 スイカは提案した。

(ツンデレのユミリさん、罰を、与えてあげようか。)


「えっ?」

 ユミリは慌てた。今彼女は『スイカちゃんとと一緒に痛いです』と提案する勇気も失った。

 彼女はすごく震えている、体も心も。

(まさかさっきのことの罰として、スイカちゃんは別れるつもり?!最悪、スイカちゃんはあの男と一緒に……)


 そしてーーーー


 ユミリは息を止めて、スイカの言葉を待つ。


「私はーーーーユミリさんと一緒に、いいでしょう?」


 スイカはそう宣言した。

(ふふ、カツケと一緒にさせないよ。)




 12:23


「スイカちゃん~スイカちゃん~」

 ユミリはベタベタとスイカの傍に付いている。


「なんのご用ですかユミリさん?」

 スイカは微笑みを見せながら訪ねたがーーーー

(うるさいね、私に不満もあるのか。)



「お化け屋敷行きたいです!日本のお化け屋敷は西洋能登はちぎうでしょう?何があります?能面とか?」


「いや、お化け屋敷といえば洋式でしょうが。そもそも能面はお化けじゃありません。とにかく却下です!」


「はい。」

 ユミリはがっかりした。


「……」

 スイカはちょっと不安になった。ユミリに罰を与えるとはいえ、ユミリの落ち込む様子を見るに忍ばない。

「ユミリさん……」

 スイカはまた声をかけてみた。


「うん?スイカちゃん?スイカちゃんはどこ行きたいですか?どこまでも付いていきますよ!」

 ユミリの笑顔は天真爛漫だった。


「……ちょっと寄り道しましょう。そこ人大勢ですね、何かがあるんでしょ。でも、人混みに気をつけてね。」



 12:24

 真弓はあるベンチに腰をかける。

「心地いいですね。」


「ベンチか、確かに綺麗に見える。」

 和祁が相槌を打った。


「違いますよ、和祁様ったら……今日は本当に花見日和かも知れませんね。」

 言いながら真弓は空を見あげる。


「でもここ賑やかすぎると思わないか。」


「ですから、和祁様ったら、空気を読むのを学んでくださいね。」

 真弓は優しい口調で責めた。


「あっ、はは。」

 和祁は苦笑する。


「ところで和祁様はどこか遊びに行きませんか?せっかく来たのに。」


「あーー」

 和祁は『スマホでいい』と言いたかったが、空気を読んで言葉を変えた。

「そこのお化け屋敷に行きたいな。」


「そうですか。和祁様はホラーものが好きなんですか?」


「うん……それより、冒険みたいな感じが素敵と思う。まるで本当に闇の世界に飲みこまれるような感じ。」

 和祁は言い終わってから後悔した。

(やべぇ!また中二っぽいこと言っちゃった!!)


 和祁は元中二病だった。


「つまり新鮮感ですね。」


「うん。スマホで見たそこのお化け屋敷は高いな。幸いチケットをもらっちゃって、ありがとうな真弓さん。」


「いいえ。それより、和祁様は何か誤解してるんではありませんか?その……チケットは入口のチケットですが。」

 真弓は苦笑みを浮かべている。


「まさか!?」


「イベントは無料じゃないというわけですね。」


「……」

 和祁の目は死んでいる!

 期待を起こされてまた破られ、彼は落ち込んでスマホをいじる気も失ってしまった。


「和祁様はお金惜しむですか?」


「あっ、うん。」

 和祁はつい目をそらした。

(お金を惜しむというより、そもそも惜しめるかねがない。)


「お嬢様に借りますか。」


「いや。」


「和祁様プライド強いですね。」


「いいえ……ただスイカをATM扱いしちゃダメだろ。それにせっかくの花見だから、彼女を邪魔したくない。」


「和祁様優しいですね。」


「いいえ、ただ人間としての基本だろうけど……」


「ではわたくしがお金を差し出してあげます。」


「えっ?」


「何ですかその反応、一応わたくしはお姉さんでしょう?お金くらいありますよ。」


「えっ、ありがとう、真弓さん!」


「どうせ給料たかいですから。」


「……」

 そういえば真弓の月給料は十万円くらい。しかも仕事は割と自由だ。


 これも和祁がスイカの屋敷で働きたい理由。


「では行くから、また後で。」


「はい、存分に遊びましょう、和祁様。」


 ーーーーーー



 はぐれてしまった。


(スイカちゃんと!!!)


 ユミリは過ぎていく人達を見てぼうっとしている。





















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