花見(3)

 2025/3/14(木)ーーーー6:24ーーーースイカの屋敷・リビングルーム


 スイカは台所から出て、ユミリも彼女の後ろについている。


「どうかしました?」

 先に歩むスイカは振り向かずに訪ねた。


「いいえ、スイカちゃんが可愛いなと思うだけです。」


「うむ……」

 スイカは一瞬頬を赤くしたが、頭を振って自分を落ち着かせる。

(ユミリさんの企みはまだ不明だから)


「スイカちゃんは、照れてますか?」


「!!私は、用事ありますから、継いでこないでください!!」

 スイカは幻紋を呼び出して、一目散にユミリの視界から逃げ出した。


 ………………


 6:25ーーーースイカのゲーム部屋


 ここはゲーム専用の部屋、ゲームカードのパッケージがいっぱいある。


 スイカはベッドにくつろいでスマホゲームをやっている。

 でも彼女のこころは悩みに満ちている。


(もう……私何考えてんだ……ユミリさん達は婚約者同士じゃないか……手伝って仲良くさせてあげるべきなのに……しかも……ユミリさんも、私の気持ちを考えてくれて、私と仲良くしようとしてるのに……私はやはり……お二人の感情を進ませよう……か?)


 複雑な気持ちと消せない矛盾がスイカの心に絡みつく。


「あっ、sr出た。悪くない。」

 スイカはつい微笑んで続けてゲームをやる。


(まぉ、少し手伝ってあげてみようか、婚約は保てるかどうかは知らんが。)


 スイカはそう決めつけると、なんか虚しさを感じる。



 8:43ーーーー白星パーク


 枝にひらひら揺れる桜が日差しに当たると、聖潔(きよめ)そうにに光って、本当に白い星に見えた。

 桜木がパークを囲んでいるだけでなく、パークの中も桜並木道が交差する。


 遠くに聳えた遊園施設も浅い色に染まり、桜とふさわしい美感を持つ。


「綺麗ですね!さすが日本です!こんなの見たことありません!」

 ユミリの瞳も白星みたいに輝いている。


「日本でもあんまり見ませんよ。」

 スイカはそうツッコミした。せめてスイカもこんなの景色を見た覚えがない。


 その時、四人の視界を割った一片の花びらがゆっくりとスイカの頭上に落ちてきた。


「ヘアピンみたいでふさわしいですよ!」

 ユミリは一番早く反応した。確かにスイカの淡い青の髪と薄紅色の桜はとても綺麗な組み合わせである。


「ありがとう。」

 スイカはユミリの称賛に対して礼を言った。初めてユミリを優しい態度で扱うらしい。


「!!」

(スイカちゃんの「ありがとう」がかわいいですっ!!)


「確かに。お嬢様はこういうヘアピンを付けてみませんか?割と似合うと思いますが。」


「ただ飾るためのヘアピンか……」

 スイカは髪を固定しないから。そして実用性のないものにあんまり興味が無い。


「いい眺めだよ。」


 和祁の褒め言葉を聞いて、スイカはぼっとして彼を見上げる。


「でもーーーー」


 スイカは『でも撫でにくくなる』と言おうとしたところで、ユミリが割り込んだ。


「ナカメは何かは知りませんけど、こんな褒めは勝手そうですね。」


「えっ?」

 和祁は困った。


「早くもっとwonderful褒め言葉を言ってください。」


 スイカは『別に』を喉から戻した。彼女も和祁はどう褒めてくれるか期待している。


「うっ、詳しくいえば……その……花の精霊的な?花園で遊んだ天然なお姫様みたいな感じだと。」

 和祁は一応合格した。ちょっと中二的な言葉だったけど。


「ちっ、スイカちゃんはあなたが褒めなくても、世界一圧倒的な美しさを持ってますの!」


「ユミリさんが褒めらせたけど。」

 和祁はつっこんだ。


「まぁ。」

 スイカは頭上の花びらを指で挟んで取って観察する。

「私に似合わないと思うけど。」

 彼女は花びらをねじったりしながら言う。


(ほほ、スイカちゃんはその男の子にありがとうを言ってません!はは、やはり彼よりわたしが大事ですね!)

 ユミリはテンションが上がった。そして彼女は兆しなく腕をスイカの首に回した。


「うっ?」

 スイカは驚いた。


「♥♥♥」

 ユミリは小動物みたいに頬をスイカほ頬に貼り付ける。


「和祁様は羨ましがりますか?」

 傍で、真弓は和祁に話をかけた。


「いいえ、見てるだけで心地いい。」

 和祁は微笑んでいながら答えたが、実際彼はすごく興奮している。

(もうだめ!女の子同士がてえてえするなんて!素晴らしい!癒された!!)



 10:34ーーーー白星パーク


「昼ご飯食べましょう!」

 ユミリは桜木の植わった丘まで駆けつけて、スイカ達に手を振る。


「はやっ!」

 和祁は思わずつっこんだ。まだ食事する時間ではない。


「あなた遅すぎたではありませんか?そんなスピードではスイカちゃんを追えませんよ。」


「いや、昼食の話でしょ。ちょっと早くませんか?」

 スイカは割り込んだ。


「でも花見といのは要するに食事ではありませんか?」


「そんな話ないだろうが。」

「うむ……アニメのお花見は確かにピクニックですが。」

 和祁とスイカはそれぞれつっこんだ。


「お花見は花を楽しむことでございますが、ユミリ様が望めば今すぐ食事してもいいですよ。三色団子もご用意しております。」

 真弓が弁当とピクニックシートを持っていく。


「三色団子?」

 スイカはそう呟いて和祁を見た。


「あっ、三色団子は忘れた。」

 和祁はお許しを求めるようにスイカに視線を送る。


「いいえ、三色団子ってなに?」

 スイカはそう訪ねた。


「知ってないか?お花見団子とも言われる。」

 話しながら、和祁とスイカも敷かれたピクニックシートに近付いていく。


「スイカちゃん!弁当交換……という言葉ですね、そうしましょう!」


「いやです。」

 スイカは思わず断った。

(カツケの手作り弁当を渡さない。)

 という考えが最初スイカの頭の中に浮かんだ。

(いやいや、今はこれをチャンスとして、カツケの料理のよさを思い知らせて好感度をアップさせるんじゃないか。婚約者同士の恋を手伝うべきでしょ……)


 スイカは自分のための作戦も考えたことがないのに、ユミリのためのプランはすぐ出てきた。



「照れるなよ、スイカちゃん~」


「うん。」

 スイカはためらってから弁当をユミリに渡そうとする。


「えっ?」


「?」

 スイカは止まったユミリに困った視線を送る。


「弁当交換と言うのは食べさせ合うではありませんか?」


「そういうことか。」

 スイカはなんとなくホットした。彼女は弁当を引き戻した。


「スイカちゃん~あ~」

 ユミリがフォークで黄金桃をスイカちゃんの口へ運んでいく。


 スイカは呆れたようにユミリを見込む。


 それを見て、ユミリは心ではしゃいだ。

(作戦成功ですね!スイカちゃんは、わたしに見惚れてます!)



「あっ、やめて。」

 和祁が急に割り込んだ。


 でもユミリは彼のことを無視にした。

(ちっ、邪魔させませんよ!)

 ユミリは楽しそうに続けて食べさせる。それからにイタズラな笑顔を和祁に見せた。


 和祁は苦笑するスイカたちを見守る。

(スイカは他人のヨダレが嫌だって……まぉ、言い出せないけど。)



「ユミリさん、果物は飯の後で……」

 スイカは顔をフォークから遠ざけながら、ユミリを説得しようとする。必死にあがいているようだな。


「では、肉を食べましょう。」

 ユミリは黄金桃を戻して肉を突き刺す。


「……」

 スイカの努力は無駄だった。


「あの、わたくしの料理はどこかが足りませんですか?ぜひ教えてください、今後は改良します。」

 真弓は割り込んで、スイカを助けようとする。


「いいえ、美味しいですよ!」

 やはりユミリは引っかかって、自分でその肉を食べた。


「『カツケ』が作った料理も劣ってませんよ。食べてみなさい。」

 スイカはチャンスを掴み自分のプランを執行する。彼女は和祁の手作り料理をユミリの前に置いた。

 ーーーーちなみに彼女は昼食抜きの覚悟した。


 今回はユミリの方がぼやいた。


 その様子を見て、スイカは得意げに微笑んだ。

(やはりユミリさんは実際カツケの料理食べたかったでしょうね、ツンデレってやばい。私はもう力尽かして手伝ってあげたよ、婚約はどうなるかはしらん。)



 一方ユミリは確かにその言葉の『カツケ』のアクセントに気づいている。

(スイカちゃん、いま、あの男の名を強調しましたね!つまり、怒ってます!!わたしがそいつに近すぎて、嫉妬してます!!誤解です!スイカちゃん!わたしの愛を信じて!!)


 そう思って、ユミリは恐る恐るフォークを和祁の手作り弁当に近付ける。


「美味しいでしょう?」

 スイカは珍しくユミリに優しい口調を使ったが、今のユミリからするとそれはまるで悪魔のささやき。


(やはりスイカちゃん怒ってます!!怖いです!)

 ユミリは恐怖に染まる。


「おいしくありません!まずいです!」

 弁解するように、ユミリは食べてみてから叱った。


「……」

 スイカはジト目でユミリを見る。

(やはりツンデレだね。)

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