花見(1)
2025/3/13(木)ーーーー18:04ーーーー星間島ーーーースイカの屋敷ーーーーリビングルーム
「スイカちゃん~あ~」
ユミリはフォークでゼーリーを取ってスイカに差し伸べる。
「何です?」
スイカはそれを睨んでから尋ねる。
「食べさせてあげます!」
「お断りします。」
「どうしてですか?日本人は食べさせ合うのが好みではありませんか?」
「そんなことあるか!」
和祁は即ツッコミした。
「あなたが黙ってください。」
ユミリは鋭い視線を和祁に送った。
「確かにそんなことありませんよ。」
スイカは冷静に和祁をフォローする。
「スイカちゃんもそう言ったら間違いありませんね。」
19:26
「デューデューデュー!!!」
突然、刺激的な音が響き渡る。
警報音に違いない。
その時スイカは3人掛けのソファーに座ってパソコンを弄っている。彼女の傍に座ったユミリは音に驚かされて故障したエンジンのように呆れてしまった。
(警報音ですね?きっと敵が襲ってきました!!!どうしよう!スイカちゃんに迷惑をかけて……)
「わたし……わたし……」
ユミリはただ呟いている。
混乱に陥ったユミリに救いを与えたのはスイカの面影。
スイカはそのままパソコンをいじり続けて、完全に影響された様子がない。
(スイカちゃんは慌てませんか?そうですね、スイカちゃんすごいですから!きっと大丈夫ですね!)
ユミリは希望を感じて、燃えてきた。
そして興奮しすぎたせいで彼女はティーカップを落としてしまった。
ぱっ!と、欠片と水が床に散っていく。
「ちょっとあなた何するんですか!?」
スイカは不満に叱った。
「えっ……」
ユミリは緊張しすぎて何も言えなかった。
「音に脅かされちゃったんだろ。まぁ、お客さんが来たようだ、誰かな?」
和祁は代りに答えた。
「……」
ユミリはまだ自分を落ち着かせようとしている。
(敵をお客さんって呼ぶなんて……この男も余裕ありそうですね、もしかしてこの男も強いですか?)
「知らんが、もう入らせた。」
スイカは何気なく答えた。
ユミリからすると、それはとても豪快な発言だった。
(さすが星間学園ですね!!敵に対して全然驚かなくて……)
そう思っていながら、ユミリは戦いに及ばれないようにと離れていく。そしてすぐスイカに呼び止められた。
「はぁ?カップを壊して逃げるつもりですか?」
(さすがスイカちゃん!いざとなってもカップのことに気を使って、余裕ですね!)
そう思って、ユミリは答えた。
「いいえ、逃げません。スイカちゃんはきっとてきを倒せますから。」
「なんの敵?」
和祁は割り込んだ。
「えっ?」
「あっ、チャイムを警報と間違えたよな。」
「えっ?」
ユミリは石像化した。
「屋敷は大きですから、守備隊もいませんし。響き渡れるチャイムをつけました。たまたまですけど、訪れる者に迷惑をかけないように。」
スイカが説明する。
「そういうわけですか。さすがスイカちゃん、賢いですね。」
……………………
「ええ、こちらです。」
ユミリが混乱に陥ったうちに、真弓はもう訪れる者を案内してきた。
それは背中まで伸びた栗色の髪の少女と二人のボーディガード。
ちなみにボーディガードはありふれたヤクザ姿している。
「はじめまして、桂あおいともうします。宜しくお願いします。」
スイカは何かを言えばいいのかわからなくて緊張したが、幸い相手から話をかけてくれた。
「白鷺スイカですが、何のご用ですか?」
「な、傲慢に見えてるけど…」
和祁はスイカに耳打ちして心配そうに注意した。確かにスイカは無表情なまま、冷たい声で話す様子は傲慢に見えた。
「単刀直入した方がいいから。」
スイカも小さい声で和祁に答える。
「私を救ったことで、白鷺さんに感謝しております。」
あおいはお辞儀した。
「覚えがあります、昨日犯人はあなたの名前を言いました。」
もちろん昨日空港の事件。
「そうですか。私はそれから警察署で事情を聞きました。犯人を倒すのは星間学園の生徒、確かにスイカ・ディスという名前ですねって。命の恩人ですから、私はここに来たわけです。」
あおいはスイカ・ディスと白鷺スイカの違いを気にしていないようだ。
「いいえ、別に大したことじゃありません。」
スイカは微笑みながら答える。もちろん人違いだったという真実は言わない方がいい。
(それに西瓜じゃなくて、『スイカ』って呼ぶのよ。)
「そうですか。やはり星間学園ってすごいですね。」
桂は微笑んで称賛する。
スイカは少しだけ見惚れた。桂はどう見ても育ち良い正真正銘のお嬢様である。美しさへの好感や高貴さへの憧れというのが今のスイカの気持ち。
「あなたはもしかして、昨日の犯罪者達が狙った人ですか?」
ユミリは訪ねた。
「ええ、君は?」
「わたしは巻き込まれました。」
「えっ、本当に申し訳ありません、ご迷惑かけてしまいまして…」
あおいはユミリにもお辞儀した。
「全然無事でしたよ!スイカちゃんのおかげで!スラスラとスイカちゃんは一気に敵を倒しましたよ!あっ、わたしはユミリともうします。」
その言葉を聞いて、あおいの瞳に更なる輝きが揺らいだ。
(すごい!)
「白鷺さんは本当に英雄みたいですね。ただ一人でそんな事件を解決したとは……私は強きものに心の底から敬意を示したいと思います。」
「いっ、いいえ、別に一人で処理したわけではありません、こい……東雲さんも手伝ってくれました。ねぇ。」
スイカはそっと和祁を引っ張った。
「この方は東雲和祁君ですね。かってに調べましたが、お許しください。」
「あはは、名乗る必要もないんだ。よろしく頼む。」
急に呼ばれて、しかも手伝いしなかったし、和祁は慌てている。
「ところでどうして夜に来ましたの?私びっくりしました。」
ユミリご聞いた
「スイカちゃんはもちろん可愛いですけど今日忙しかったですので、でもどうしても君たちに会いたいと思っていました。皆さん可愛くて会えてよかったですね。」
褒められてここにいる全員が照れてしまった。
(可愛いか、私……)
(スイカちゃんはもちろん可愛いですけど、この、あおいさんは気に入りません)
(ふふ、やはり僕は可愛いかな、ネットで可愛さを覚えたからだろうな///▽///)
(わたくしは成熟な姉キャラ目指してるのに!)
…………
「夜は暇でございますか?」
突然真弓が尋ねる。
「ええ、基本的にやるべきことは終わりましたから。」
あおいは優しい声で答えた。
「では一緒にお嬢様トークしてはいかがでしょうか?せっかく名門のお嬢様達が集まってますので。」
真弓は提案した。
「お茶会ですか?いいと思います。」
あおいは潔く頷いた。
「茶会!?」
和祁は驚き声を漏らした。茶会と言うのは女の子たちがイチャイチャするところ。想像するだけで興奮してしまう。
「カツケの席はないぞ。」
拒まれた。
「東雲君みたいなエリート男子は混ざってもいいと思いますが。」
多分和祁が可哀想だから、あおいは異議を出した。
「いや、ダメですよ!ガールズトークなんでしょう?なら男は禁止です。」
ユミリは反対する。
(絶対に彼をスイカちゃんに近づけさせない。)
「ユミリさんがそう言うならそうしましょう。メイドさんも来ますか?」
あおいは真弓に振り返る。
「来てね、マユミさん。」
スイカも真弓を誘う。
「では、わたくしはおもてなしをして、お供します。」
「お疲れ様ですね、真弓さん。」
ユミリは申し訳なさそうに言った。
「もてなしなら僕もできる。」
和祁はチャンスを見つけて提案した。彼はどうしても女の子のイチャイチャするビジョンが見たがっている。
「ダメです。」
ユミリは一番早く断った。
「白鷺さんはどう思ってます?」
「うむっ。」
スイカは即答していない。和祁は最後の希望を持って彼女を見つめる。
「カツ……東雲さんは来なくていい。真弓だけで十分です。」
「はい……」
和祁はがっかりそうにうなだれる。
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