専属メイドさん(4)

 2025/3/13(木)ーーーー15:42ーーーー星間島ーーーースイカの屋敷ーーーーリビングルーム


(スイカちゃんは振り向かずに行ってしまいました!)

 膝の痛みを感じる暇もなく、転んだユミリは呆然なまま人影の消えた階段を見込む。


 和祁は人扱いが苦手だから、そばでただ見守っている。



「お客様はーーーー」

 真弓は話をかける。


 すると、ユミリは直ちに振り返った。


 しかし、彼女は和祁に振り返った。


「えっと、呼んでるのは真弓さんだけど。」

 和祁は優しく注意したがーーーー



「全部全部あなたのせいですよ!!!」


 叱られてしまった。


「ごめんなさい。」

 わけわからないけど、和祁は謝ればいいと思った。


「お詫びで済むのですか?!このfool!」

 ユミリは英語の混ざった言葉を叫びだした。


「薬あるから、僕は医学学んでるよ、怪我を処理してあげる、間に合えるはず。」


「間に合うなんて、もう手遅れましたよ!!!」

(スイカちゃんを追うのが!!)

 ユミリは泣きそうだった。


「そんな大怪我?まだ走れるのか?」


「走れません!」

(スイカちゃんを追いつけるように)


「大変だな、はやく病院に行かないと。なんとかなる。」


「なれません!!!」


 話は微妙にずれている。


 しばし落ち込んでから、ユミリはふと名案を思いついた。彼女は和祁に話をかける。

「とにかく、スイカちゃんを呼んできてください。」

(ふふ、そうするとスイカちゃんと話せますし、スイカちゃんにわたしの忠誠を示せますし、それで、この男もスイカちゃんに怒られるのでしょう!イセキニチョー!いや、サンチョーですね。ところで、蝶と席はどんな関係ですかね?)


「はい。」

 和祁はすぐ2階を向いていく。部屋は多いが、スイカはどの部屋にいるのかだいたい当てる。

 それでも、彼は念のために、ラインで連絡を取ろうとした。


『どこ?』


『?』


 その?は「なんだ」ではなく、「どうして」だと、和祁にはわかる。


『いや、ただユミリさんが呼んでる。』


『なぜ?』


『しらん。』



 15:55


「じゃ、なんのご用ですか?」

 スイカは目を細めたまま不機嫌そうに訪ねた。


 でもユミリはその嫌味に気づいていない。

(ふふ、作戦成功のようですね。)

 彼女は綻びて、急に床から立ち上がってスイカに抱きついていく。それから、和祁も傍らにいることに気付いた。

(この男邪魔ですね。)



「えっ!?立てるのかよ!」

 そして和祁は本当に邪魔なことを言った。


「もちろん立てますのよ。わたしの体は強いですから!はねるのも、走るのもできます!」


「えっ……」

 和祁は心の中で突っ込むしかない。

(さっき言ってたと違う!)


「スイカちゃん、明日の花見を、思い切り楽しみましょう!」



「うん。」

 スイカは適当に答えながら、くりっとした目を見開いた。

(それは、宣戦布告?!明日どんないたずらする気?!ユミリさんは一体なにを狙ってるのかよ……)


 一方、ユミリは純粋だった。

(えへへ、スイカちゃんの体柔らかいですね!心地よいです!でも、その男がそばに居て、気味悪いですね。)

「ね、あなた、私とスイカちゃんのため茶を入れなさい!」


「はい。」

 真弓もいるが、和祁はユミリを喜ばせるために潔くお茶を入れていく。


「そして、わたしは抹茶が欲しいです。日本の抹茶試してみたいです。」


「はい。」


 和祁が台所に向いていく姿を見て、ユミリは勝ちの微笑みを浮かべた。

(これでは邪魔ものがいなくなりました。)


 彼女が知らない、このすべてはスイカにとって不思議に見えた。

(あれ?あのふたりいつの間にそんなに……仲良くなってるんだ?やはり……婚約のせいか……)

 スイカの瞳に恐れが宿る。

 和祁とユミリを仲良くさせるべきなのに、それを恐れている。


 ユミリはそんなスイカの表情に気づいた。

(スイカちゃんはわたしの愛に驚きましたね!わたしはスイカちゃんを裏切りませんよ!)

「スイカちゃん!ね!一緒に遊びましょう!」

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