お嬢様の来たる(7)

 2025/3/13(木)ーーーー12:03ーーーー星間島ーーーー白星デパート


「ここ悪くないみたいですね。」

 デパートに入ったら、ユミリは肯定の評価を与えた。


「そちらアメリカのデパートはどんな感じ?」

 和祁は尋ねる。


「わたしアメリカ人ではありません!!」

 ユミリは和祁を蹴ろうと思った。


「ラフェルってフランスの財閥らしい。覚えがある。」

 スイカはジト目で和祁を見つめながら説明する。


「さすがスイカちゃんですね、すごいです。ラフェルの所在地はなかなか知られてませんよ、秘密と言ってもいいです。」

 ユミリはスイカにてぇてぇする。


「秘密かよ!」

 和祁はツッコミした。


「でもスイカちゃんが知ってます。スイカちゃん賢いですね。」


「それはスイカがそちらに行ったことあるからだろ!」


「うるさいですねあなた。ここ二人のお嬢様がいますよ。狙われたらどうします?」



「普通狙われないでしょう……ここ治安がいいですから。」

 スイカは見てたまらなくて口を開いた。


「そうですね!スイカちゃんが守ってくれますよね!」

 ユミリはスイカを強く抱きしめていく。


「やめなさい……苦しいです……」




「日本料理の店は二階……日本料理食べたい?」

 リードする和祁はユミリに尋ねる。


「うん(↗)」


「どっちかよ!」

 上昇調だから、意味がわからない。


「ちっ。」

 そしてユミリは軽蔑な声を出した。


「ちゃんと答えてくれてほしいんだが。」

 言ってから、和祁は助けを求めるようにスイカに視線を送る。


「ふん!」

 スイカも。


「ちょっと、やめてよ……スイカ。」


「ふんふん!」

 いたずらにスイカは微笑みながら意味不明の声を出す。


 一方そばで見ているユミリは焦っていく。

(スイカちゃんに手を出してますね!なんとかしないと!あっ、何かを話せばーーーー)



「スイカちゃん、そこのdoctor bag可愛いです!!!」



「doctor bagってなんですか?私は医学学んでませんから。」


「えっ?日本はその言い方ありませんか?」


「あるかもしれないけど、私はバッグの種類詳しくありません。」


「そうですか。」

 ユミリは笑いながら答える。

(なんか間違いましたけど、スイカと話して楽しいです。)


「お昼ご飯はどうします?」

 スイカは本題に戻る。

(やっ、やはり……カツケとユミリさんを仲良くさせてあげようか……元々婚約者関係だし……面白そうだし……でもなんか……)


 スイカの気持ちが複雑だった。



「まずバッグを見ていきましょう!」

  「バッグを食べる気!?革はともかくプラスチックもありますよ。」

「スイカちゃん冗談言わないでよ。」

「はいはい、じゃ見ていきましょう。」



「まずは食事だろ!」

 和祁は歩いていく二人の女の子を呼び止めた。


「お腹すいたら、カツケは一人で行っていいよ。」

 スイカは思わずに答えた。そして彼女自分も驚いた。

(あれ?私……カツケとユミリさんを一緒にさせるべきなのに……)


 一方ユミリはもちろん興奮してしまって、鼻は蒸気機関みたいに息を出す。

「スイカちゃん~デートしましょう!」


 羨ましいほど、深く考えない純粋さ。



「手分けしちゃ危ないだろ。」

 和祁は反論した。


「うん?」

 スイカは和祁の力を疑うように目を細めて睨む。


「僕の方が危ないって。」


「じゃ、防犯グッズでも買う?」


「防犯グッズは何ですか?」

 二人の会話を邪魔するように、ユミリは割り込んだ。


「つまり、sccurity equipmentのことです。」

 スイカはペラペラと答えた。


「えっ!?よく知ってる?!」

 和祁は余計なツッコミをした。


「失礼ね、私だって。」


「doctor bag知らなくて、sccurity equipment知ってますね。さすがスイカちゃんですね。」

 今度はユミリがつっこんだ。


「……」

 もしラインでチャットしているなら、スイカはきっと『バイバイ』の絵文字を送る。

(よくも私を皮肉るんだね、ユミリさんはやはり厄介……)


「でも、スイカちゃん、ちょうどそのボープンを買いたいですけど。」


「それはボーハン、防犯グッズというのです。ボールプンを買ってどうします?字を書きたいですか?」

 スイカはチャンスを狙って皮肉り反撃をした。


「わかりました!ボーハングズですね。覚えました。ありがとう、スイカちゃん!」

 単語を覚えた子供のようにユミリははしゃいだ。彼女は急にスイカを抱きしめていて、その頭を撫で始める。


(うるさい、勝手に触るな……)

 作法のために、スイカは言い出さなかった。


「では一緒に買いに行きましょう、スイカちゃん!」


「な、何を?」


「もちろん防犯グッズです。」


「唐突と思わないですか?」


「えっ~せっかくのデートなのに、せっかくデパートに来たのに。」


「普通デパートはそんなものがありません。」

 スイカはデートという言葉を聞き流して、あとの部分をつっこんだ。



「なら食事に行きましょう!」


「ああ、お昼ご飯の時間ですね。カツ、カツケは?」

 スイカはふと和祁がいなくなったことに気付いて、びっくりした。


「東雲さんなら、さっき言ってしまいましたよ。」


「黙ってレストランに行ったか……かってに……ユミリさんはそんなかってな人になっちゃダメですよ。」

 スイカはしばし独り言してからユミリに説教する。


 普段も和祁とスイカは自分の意思で動いて、お互いに報告しないから、今スイカはあんまり気にしていない。


 しかし、ひとつ。


(カツケったら、婚約者さんを私に押し付けて……でも、なんか嬉しい?)

 スイカは自分の気持ちごよくわからなくなってしまっている。


 スイカが考えるその時、ユミリはまた抱きつこうとする。今度、スイカは一歩退いて、派手に避けた。


「えっ~スイカちゃん、抱かせて。」


「……」

(もうカツケよりずっと勝手だ!!)


「ところで、おすすめの防犯グッズありますか?スイカちゃん~」


「ちょっと待ってください。それに毎回大声で名前呼ばないでください。」

 スイカは文句言いながら、スマホでラインをひらいた。そしてカツケのアカウントを探していく。


『おすすめの防犯グッズは?』

 と、送信した。


 3秒後返信が来た。

『スイカはそんなの要る?』


(即返信!?偶然……とも言えないか。いつもスマホいじってるから…)


『失礼!!!』

 スイカは三つの!をつけて怒りを示そうとしたが、実際彼女は微笑んでいる。


『はいはい、だからユミリさんのためだよな』


 というメッセージを読んだら、スイカの笑顔は何故か固まった。


 ーーーーうん、ユミリさんが買いに行こうって騒いだからーーーー


 と、スイカは入力しては消した。


 代わりに『いや、別に』を和祁に送った。



「スイカちゃん、スイカちゃん、食事に行きましょう。」

 今度ユミリは大人しく大声を出していない。


「はい。」

 スイカの声はそれより小さかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る