お嬢様の来たる(3)
情報を言えと言われたユミリは頷いて、ぎこちない日本語で語り始める。
「あっ、多分、わかりました。でも、どこから話せばいいのですか?」
ユミリの純粋な瞳を見て、スイカはなんとなく口角をあげた。
(幸い、すこし無神経なお嬢様らしいね。)
「知ってることをいえばいいのです。」
「あっ、その、わたしの、家では何かあったらしい……ラフェル家って面倒いですよ。」
ユミリは苦笑しながら言う。
「貴族はほぼそういうものですね。」
スイカ何気なく言う。和祁はそれからなんだか悲しみが聞こえた。
(そういえばスイカも家族達に捨てられたみたいだよな。財閥というのはひどいものだろうな。)
実際、スイカはただ家族と言える人がいないとすこし寂しさを覚えている。
五歳から財閥に見捨てられた彼女は、自分が普通の女の子だと思っている。財閥のことは詳しくない。多くとも、たまに財閥の人達に連れられて宴に行く時すごいお金持ちだねと感心するだけだ。
「そして、わたしは日本に、いか、行かせられました。仲のいい人が出迎えてくれると言われましたが、どうしても、その人はスイカちゃんだなんて、思わなかったですよ!」
ユミリはだんだんテンションご上がっていく。
「いいえ、その人は私ではありません。私は巻き込まれただけですよ。出迎える相手はあなたということも、わかりませんでした。」
ユミリをがっかりさせるけど、スイカは真実を打ち明けた。でもユミリの気持ちを考えて、ユミリのことすっかり忘れていたとは言っていない。
(やっぱりわたしのこと覚えてくれましたね!スイカちゃん大好きです!!)
しかし、ユミリはそれが両思いの証だと思い込んだ。
それもこれからの騒ぎのきっかけだった。もしスイカは未来がわかるなら、きっとはっきりとユミリのことを覚えていないと言うのだろう。
「では、わたし達今ここの出会いはすごいですよね。え、縁というのですか?」
「うん。」
スイカは適当に答えた。
(縁って言葉も知ってるんだ。)
一方和祁は会話をスイカに任せたから、暇でいて、たまにスイカの足を覗く。
「つまり、出迎える人は誰かはわからないってわけですね?」
スイカは尋ねる。
「はい。スイカちゃんは知ってますか?」
「うん。でもまずそっちの話が聞きたい。」
そう言われて、ユミリは楽しそうに続けて語る
「はい。そしてわたしは日本に来たのです。」
「さっきのこと、空港のことが聞きたいです。」
「クウコウ?エアポートのことですね。えっと、確かに飛行…機から降りると、大きな声が聞こえて……ママに悪い人に襲われるかもと注意されましたから、わたしはわざと小さい道を選んで逃げていました。そしてスイカちゃんに出会えました。最初はスイカちゃんを信じてませんでした、本当にごめんなさい!」
「それはいいですから。」
「本当に運命の出会いですね!ずっとスイカちゃん会いたかったですよ!!」
テンションとともに、声の大きさも上がっていく、うるさく思われるほど。
「運命なんかじゃありません!!私が!探してたんですよ!!」
スイカは断念させるように怒鳴った。
ユミリさんを傷つけるかなと、スイカは心配したけどーーーーユミリには完全に相反する効果を与えてしまった。
運命なんかじゃなく、私が探した!
なんて美しく強い言葉だ!どれほどの愛を込めたのだろう!!
(スイカちゃんは!わたしに愛を示してくれましたね!早く答えないと!)
ユミリは泣きたいほど感動している。
「事情はわかりました。それで、こちらの知ってることも教えてあげます。」
スイカは落ち着いたように言う。
「昨日の朝、カツケ、カツケってのはこいつです。ケツケはお母さんからメールを送られました。その内容はあなたを出迎えること。」
「えっ、カーツケ、さん、ですか?どちら様ですか?会ったことありますか?」
ユミリは頭をかしげる。
「いや、会ったことないと思う。」
和祁は即答した。
「?」
ユミリは更に困惑になった。
「それはですね……彼は……彼の身分に関わります。多分知らせられましたよね?カツケとあなたの関係。」
スイカは言いながら、なぜかムラムラしてきた。彼女は冷静を保つようにしている。
「なんのことですか?」
「知らせてないんですね。なら後で教えます。今から混乱になったら話しにくいですね。」
「コンランってなんですか?」
「うむ……驚くってことです。」
「わかりました。」
「空港であなたを待つ時、ラフェル家の情報を手に入れました。するとあなたは狙われると推測しました。その後すぐ爆発が起こって、私達はあなたを救いに行くことにしました。」
「えっと、では、これもなにかをしましたよね?」
ユミリは和祁を指差しで、ぎこちない日本語で問う。
「失礼ですよ。彼は東雲カツケと申しますの。」
「あっ、これではなく、彼と言いたかったです。ごめんなさい。」
ユミリは謝ったけど、彼女はなんとなく和祁が嫌い。
「そうですか。」
スイカは納得した。
スイカの口調が柔らかくなったら、ユミリもホットした。
(さっき、スイカちゃんの目付き冷たかったですね!それはスイカちゃんの元の性格ですよね?)
「では、東雲さんはなにをしてましたか?ただ待つではなかったですよね?」
ユミリが和祁を睨んで聞く。
そして、スイカと和祁は一目見合った。
「その、僕の役割は臨機対策でした。」
真剣に、和祁は答えた。
「えっ?リンキタイ……サク?すごそうですね!それは一体なんですか?」
「簡単に言うと、外で待ってました。」
和祁はかっこいいポーズを作ってから打ち明けた。
「ええっ!?」
ユミリは驚いた。
「自分でバラすなバカ!」
スイカはつっこむに禁じ得ない。そして足をまっすぐ伸ばして軽く和祁の脛を蹴った。明かりで輝かしく見える靴とつるつるなニーハイは和祁の目を奪った。
一方、その動きがユミリの目に入るとーーーー
(スイカちゃん可愛いです!!)
「とにかく、さっき、あなたが気絶した後、私はもう敵を倒しました。もう問題がありません。」
「ごめんなさいございました!大変でしたよね、わたしのために……」
ユミリは真心込めて謝った。
しかしーーーー
(あなたのためじゃなく、あなたのせいでしょう!?)
スイカは心の底で突っ込んだ。冗談の部分もあるけど、憎みもあった。
「いいえ、別に大したことじゃありません。」
「でも敵が巻き戻ったら困りますよね。ごめんなさい。」
「いや、巻き戻るわけがありません。」
「えっ、敵をみな倒したのですか?」
「いいえ、敵は何人いるのかわかりません。」
「じゃ、わたしのラフェル家は安全になってますか?」
「いや、ラフェル家に何があったのかもわかりません。」
「なら、どうしてそう言いきれますか?」
「さっきの敵のターゲットはあなたじゃなかったきから。彼らはターゲットを間違えたってことですよ。」
「えっ。」
ユミリは驚いてから噴き出した。
「でも敵が来ないとは限らない。」
その時和祁が話に割り込んだ。
彼は変な紋章のカバンを持った女を思い出した。
和祁はただ事実を言おうとしているけど、ユミリから見ると、それはまるでユミリを責めていてスイカにも喧嘩を売っているように見えた。
ユミリは更に和祁が嫌いになる。
「それはさておき。とにかく、ラフェル家が安定になるまで、あなたはしばらくこちらに暮らしていいですよね。」
スイカはユミリを巻き込まない話題を変えようとした。
(やはり、さっきカツケは何かの手がかりを見つけたのか。)
「スイカちゃんと一緒に住むのですか!きっと楽しいですね!」
「……彼もここに泊まるんです。」
スイカは和祁を指さした。
「わかりました!」
男の子と一緒に暮らすのを聞いて、ユミリは全然気にしていないようだ。スイカと一緒に暮らせるのは楽しいし、それより彼女は生まれてからたくさんの人が住む大きな屋敷にくらしてきたから、同居ということを気にしないのだ。
「ええっ!?」
逆に、和祁は騒いだ。
彼とスイカは出合ってからもう三年だけど、最初の一年以外、休みのときは会うことが少ない。だから、同居するのはとても衝撃的なことである。
「その期間食料費は全部私が出すから、悪くはないでしょう?」
「うん。」
貧乏な和祁は納得した。
「そして、カツケはね、あなたの婚約者よ。」
スイカは急に言い出した、震えた声で。自分の劣等感を振り払うことに精一杯だったスイカは敬語を使うのを忘れてしまった。
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