空港襲撃(5)

(ただ掠っただけか。)

 打たれたかと思ったスイカは一旦安心した。


 スイカは星間学園の制服を着ている、それは防弾服。


 今スイカは学園の集会を感謝している。でないと彼女は私服でユミリを出迎えに来たのだろう。だったら戦いにくいし、見せパンもないし。


 蛇目の女はスイカの意図に気づかずに銃を打ち続ける。まるで距離を取るつもりは無いようだ。


 一方、太った男はトイレを方って置いて、どっと床を蹴てスイカに飛んでいく。


 スイカはもうすぐ蛇目の女に近付けるのに、道をその男に奪われた。


 でも仲間を傷つけないように、女は銃撃を止めた。彼女は仲間を信じて任せたらしい。


 スイカと肥った男の近接戦。

 スイカにとって悪い状況ではないかもしれない。

 でも、スイカはこの巨大な肉塊と遊ぶ気がない。

(はやく決着をつけた方がいいかな。それからもう一人に不意打ちを)

 スイカはそう考えて、すこし嫌な気持ちを抱えて、どっと男の股間を狙って蹴り上げる。


 カクン!

 硬かった!


 そいつの股間に多分金属防具がある。


(装備も桁違い!この二人が主力か。)

 と、スイカは考えた。

 でも彼女には考える余裕がないはずだ。


 大柄な男はスイカの蹴り出した足の脛を掴み、素早く振り回す。スイカは床から離れたので、いくら力が大きいとしても、反抗できない。

 男はスイカを床に飛ばす。


 彼女は頭を下げて、床にぶつかる部位を背中にした。


 カクン!

「うっ。」

 幻紋の力によって、スイカはあんまり痛くはなかった。


 だけど、右足を掴まれたまま。そして左足も男に拾い上げられて、掴まれた、しっかりと。

 今、スイカは床に倒れて、両足を男にまっすぐに挙げられている。

 スカートの中はもちろんはっきり。


 いろんな意味でやばい体勢だった。


「センスないな。見せパンなんて。」

 男は不満そうに文句を言った。一方スイカの頬は赤く染まる。


(いやいや、敵の言葉に惑わされるな。)

 スイカは自分を落ち着かせる。


「ふっ、可愛い女の子なのに、そんな陰湿なことしやがって!自業自得だぞ。」


 そう言われて、スイカの顔に浮かぶ赤は更なる。


(いやいや、これは敵、ここは戦場……集中、集中……)

 実はスイカは抗う力を持っている。だが、彼女はいいタイミングを待って、必殺の一撃で一気にこの男を再起不能にしたいと思っている。


 スイカの恥ずかしい様子を見て、男は更に喜んだ。

 へびめの女も興味たっぷりなようでこっちをみている。トイレをサーチすることを放っておいた。


(時間は稼げたけどな。)

 スイカは少々安心した。


「じゃ、これはどうだ?」

 男はニヤニヤと笑みを浮かべながら、スイカの両足を大きく開けようとする。するとスイカの見せパンはあそこの形を表した。


 スイカは自身が見えないけど、股間から確かな圧迫力が感じられる。スイカは妙な気持ちになっている。

(まだ耐えられる……まだタイミングじゃない。)


「すごいだな。足はこんなに開けるなんて。」

 男は驚いた。


 スイカは訓練を受けたため、靭帯はとても柔らかい。


「ほら、あれの形が見えてるぞ。」

 男は言葉でスイカを煽っている。スイカの苦しんでいる顔が見たいからだ。


「……」

 スイカは黙る。


「さっき、俺に酷いことしようとしたんだな。」

「うん?」

 スイカは平然な振りをして答えた。でも彼女が知らない、自分の顔はかなり苦しく見えている、からだも震えてばかり。


「俺は運が良くて逃れた。今度はお前の番だよ、お嬢ちゃん。」

 男の表情はますますキモくなる。


「まさか……」

 スイカは弱気そうな声を作って、キョロりと男を見上げる。


「女の子は急所を蹴られたらどうなるか、という授業をやろう。」



(やばっ!)

 スイカは元の計画を捨て、直ちに反撃すると思っている。



「そろそろトイレの中を見に行かないか?」

 蛇目の女が提案した。


 男は自然に彼女を見ていくーーーー



(今は、チャンス!)


 スイカは決意して、突然立ち上がり、立ち去っていく男の後頭を殴る。


(余計な話したことを、後悔すればいいわ!)


 今、スイカは怒っている、すごく。


 男はすぐ振り返って防御の仕草を取ったが、スイカの次の蹴りに頭を打たれて気絶した。


 同時、スイカは気絶した男を盾にして、蛇目女の銃撃を封じる。


 スイカはそのまま蛇目女に近付いていく。蛇目女の前に至ったら、スイカは直ちに男を投げだした。


 蛇目女は投げられた男を交わすと、スイカのパンチは彼女の目の前に届く。


 そして、二人は近接戦を始める。

 一方男はトイレの陶製タイルにぶつかってしまった、がらがらと。



 スイカは蹴りあげて、足が蛇目女の腰を掠った。同時に相手の拳もスイカの顔を掠る。


 蛇目女は眉を顰める。

(なんなんだ、この子は、ただもんじゃねぇよな。あっ、そうだ。)

 彼女は話し始める。

「ほぉ、若い者はやはり、回復が早いだなぁ。」


「なんですか?」

 スイカは適当に答えた。


「さっきまで無様な格好して。」

「……」


 スイカは頬を赤くして、動きにも一瞬の隙があった。


 蛇目女の思い通りだった。


 蛇目女はスイカの防御の隙を狙って、その胸元を殴った。

 蛇のように鋭く酷い一撃だった。


 しかも悪趣味の蛇目女はわざと片方のおっぱいを殴った。

 故にスイカに届いたのは普通の衝撃ではなく、妙な苦しみだった。


 スイカは頭を横に振って自分を落ち着かせようとする。

(いや、はずかしがっちゃだめ。集中。)

 スイカは2歩退いてから、続けて戦う。蛇目女を少々慌てさせた。


「ちっ、男の子のような胸だったな。もしかしてお前、男の娘?」

 言いながら、蛇目女は自分の巨乳をゆらゆらした。

「……」

「養分は全部格闘技に吸われたのか?」

「うるせぇ!」

「そう気短いじゃ可愛くないぞ。」

「……」


 懲りたスイカは今度蛇目女の言葉を気にしないと決めた。


 だがーーーー


「しつこいだな、じゃ、さっきの授業続けようか。」

「!」


 その言葉に、スイカは急に顔色を変え、下腹部を守るような仕草を取った。


 でも次の瞬間、蛇目女はまるで蛇のような素早さで、スイカの無防備の足を攻めてきた。

 またスイカの裏をかいた。


 スイカは足首を蹴られて、バランスを失ってしまった。

(やばい!)


 これはやばすぎる。


 スイカはそのまま無防備に蛇目女の懐中に倒れ込んでいく。それは自分の身を相手に贈るも同然。


 スイカはその瞬間で何度も祈ったが、奇跡は起こらなかった。


 彼女は蛇目女を抱きしめるようになっている。


「ほぉほぉ、こんなにあたしのことが好きかい?だったらちゃんと可愛がってあげる~おほほ~」

 蛇目女は勝ちを信じたように、嘲笑う。


「まだです!」

 スイカは臨機応変に、腕に力をいっぱい入れて、相手の腰を挟み切るように強く抱き締める。


「うっ!」

 突如の逆転に、蛇目女は驚き声を漏らしてしまった。

(この子!凄まじい力だ!!)

 腰をスイカの腕に挟まれ、蛇目女は息をつくことさえも辛くなっている。


「まだ終わりじゃないです!」

 スイカは更に攻めて行く。両足もハサミのように蛇目女の腰に絡ませる。


 遠くから見ると二人は恥ずかしい何かをしているみたいだけど、実際は残酷な戦いである。


 ちなみにスイカの顔はまるで林檎のように赤く見えている。


 一方、蛇目女は気絶しそうである。


 でもその前に!


「やめなさい、きみ!」

 もう一人の女の声がした。蛇目女と違って、可愛い声だった。


 スイカは振り返るとーーーー


 一人の小柄な女がユミリを捕まえている。


(やばい!戦いに夢中になっちゃって、ユミリのことを忘れちゃった!)

 スイカは悔しがる。でも、彼女はまだ蛇目女の体を絞っている。


「やっ、やめておけ!」

 小柄な女は銃口をユミリの頭に向けて警告した。


「何故ですか?あなた達は生け捕りが目的でしょ?傷付けることはできないでしょ?」

 スイカは落ち着いたように交渉する。


「でも、でも……」

 小柄な女は泣きそうだった。


「あっ、あっ、小さい傷はいい、いいぞ。悲鳴が止まらないほどいたいけど……命を落とさない傷……」

 蛇目女は必死に言葉を絞り出した。


「……」

 スイカはためらった。


 でも敵は彼女にそういう時間を与えない。


 蛇目女はそっと掴んだ拳銃でスイカの首の辺りを強く殴った。


「うわぁ!!!!」




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