空港襲撃(2)
18:40ーーーー空港
「普段この時まだ夕食だな。」
と、和祁は呟いた。
「私も。確かに今日の晩ご飯ははやかったかな。アフトヌーンティーみたい。」
今、二人はやっと空港に辿り着き、ホールで待っている。
「正直、さっきはあんまり食欲なかった。」
「幸せそうに堪能してたのに?まぁ、私は違う、本当にお腹すいてた。」
「ところで母さんは返信してくれた?」
「まだ。」
「えっ?母さんは常に浮上するはず。」
「私はまだ見てないって。」
「ちょっと、スイカが急に聞きたいって言ってたじゃん。」
和祁はツッコミしながらスイカの手にしたスマホのスクリーンを覗き込む。
「ちょっと?ゲームやってる?また切れちゃったらどうする。」
「えっ、ちょっとだけ、しかもカツケのお手伝いしてるよ。」
「それは感謝するけど……」
和祁は無力そうに視線をスイカに向ける。
「わかった。すぐ終わらせ~ま~す~」
今の対局が終わったら、スイカは直ちにラインの画面を呼び出した。
17時半くらい、和祁のお母さんが返信してくれた。一つのダイアログで一気に思いついたことを教えてくれた。
「大きなダイアログだね。」
「僕はこんなのがいいと思う。整ったように見える。」
「それはたしかに。でもラインでこんな長い文を読むのは……違和感強いわ。」
お母さんからのメッセージ:
『その子のこと私もよく知ってません。いいなずけだと知った時めっちゃ驚きましたわ。婚約は昔お爺さんがつけたらしいです、ずっと私達に教えてくれませんでした。私が知ってる限り、その子はユミリって言うんです、ラフェル財閥の総裁の娘です。今氏族で何かが起きてるらしい、ですから日本に避難しに来ました。そのゆえ使えるお金も少なくて、信頼出来る人の家に泊まらなければなりませんので、そっちを選んだみたいですね。外人ですが、日本語はちゃんと勉強してるらしい。コミュニケーションは大丈夫と思います。彼女は空港の裏門に待ちます。これは写真です。とにかく、和祁よ、ラッキー!♥』
「聞いて本当よかった。」
スイカは目を細めながら呟いた。このメッセージで伝わった情報はとても重要だった。
「まぁ、母さんは元々この時点で教えてくれるつもりかもしれん。」
「『かもしれん』ね。」
スイカはまだメッセージを読んでいる。
「今の状況ちょっと分析してみよう。珍しいことなんだし。」
「探偵ごっこかよ。」
ツッコミして、和祁はくつくつと噴き出した。実は彼も冗談が好き、ただし親友以外にはあんまり話をしない。
「ごっこなんかじゃない。今の資料によって、彼女にイベントが起こる可能性が高いわ。」
「はいはい、名探偵白鷺。」
「……」
和祁からの皮肉りを無視して、スイカは改めてメッセージを読んでいく。
「まずひとつ、そのーーーー」
スイカは和祁を睨んだ。
和祁は何回見たとしても、その鋭い目つきに続々怯えた。
「カツケのおじいさんは何者なの?なぜこんな婚約を……」
「知らないけど。ってか何者ってのは失礼だな。」
「些細なことを気にするな。」
「僕の爺さんのことも些細だろ。」
「そうじゃないわ。ラフェル家知ってる?我が氏族の仲間だよ、とてもすごい財閥なの。それに関わって、しかもれいじょうに婚約をつけた人、無視できる?」
「でも爺さんはとっくに逝った。しかもすごいことを教えたことない。」
「カツケ本当に不甲斐だね。あんなすごいお爺さんいたのに、何も引き継げなかったの?求めてなかったの?」
「あの頃僕はまだ小学生だったよ。」
「残念だね。もしお爺さんから何かを引き受けたら、さっきのような豪華なレストランで食事できるかも。」
「さっき、僕はたしかにそのレストランで食事したよね?」
二人はふざけあった。
「でも、私のお金なの。奢ったのに、文句ある?」
スイカはすねた振りをした。
そして続けに言う。
「ww、今の私はそんなに怒りやすくないわ。って、お爺さんはきっとカツケ達を危ない世界に巻き込みないようーー」
そしてスイカは絶句したーーーーそうだったらどうして和祁を星間学園に送ってきた?
「僕の爺さんを調べてどう?そのいいなずけには何か知ってるかも。それに、スイカの氏族もラフェルに関わってるなら、爺さんのこと知ーーーー」
「今はお爺さんのこと放っておく。」
スイカは和祁の話を絶った。
自分の氏族、ディス家のことを話したがらないからだろ。
「スイカが先に聞いたじゃん。」
「でも残りの時間は足りない。」
スイカは真剣な顔をした。それを見て、和祁も黙った。
「婚約者、ユミリさんは総裁の娘、そして氏族に何かがあった。ドラマみたいなイベントが起こるかもね。ひょっとして、暗殺者が空港に潜んでるかも。」
と、スイカは言った。
「でもラフェルの総裁なら、情報をきちんと封鎖するはず。」
「敵も普通じゃないよね?万が一情報が漏れて、ユミリさんが襲われちゃったらーーーー」
「ラフェル家も僕を調べたはず。うちを選んだのは、僕が婚約者だけじゃなく、僕は頼れる人だからーーーー」
「うん、カツケは星間の生徒、情報科のSランク。」
スイカは微笑んで補充するように言った。
「それじゃ、ユミリさんを僕らに預けた意図は明らかだな。」
「私達でユミリさんを守るってわけか。」
「そうだろうな。」
スイカと和祁は視線を絡ませて、しばらく黙ってから、一斉に口を開いた。
「「面倒くさいだな(ね)」」
二人ともお節介な人じゃない。スイカは事件が好きふだけど、それは自分が傍観者だった場合。
自分が命掛けて働くなら、やはり嫌だ。
「いざとなると、警察や学園の先生を呼んでこよう。」
和祁は提案を打ち出したが、スイカに即に却下された。
「本当に何かあったらそれじゃ間に合わない。相手もきっと空港の警備を対策してる。」
「結局僕らは自分でやるしかないか。ところで、銃持ってる?」
「うん。もちろんでしょ?まぉ、弾丸は多くないけど。」
「2本目の銃はあるか?」
「うむ、ない……」
和祁は銃を持っていないからスイカに借りようと思ったけど。スイカも1本しか持っていない。
銃を持っていない和祁に、スイカは不快な顔をした。でも和祁が必要な場合でしか銃を持たないことを、彼女は知っている。
『えっ?スイカはいつもそんな危ないものを持ってるの?!ダメだろ!?』と、以前和祁に言われた。
「まぉ、和祁にとって銃は役に立たないし。あ、いや。」
スイカはぱっとして、呆然とした顔を和祁に向けて続けに言う。
「今のカツケは何の役に立てるのかしら?」
「酷い言葉だな……」
「冗談じゃないよ。銃だけでなく、ハッキングの設備も持ってないでしょ?だったら何も出来ないじゃん。」
「………たしかにそうだ。」
「……」
「あっ、作戦思いついた。」
「何かがあったら一緒ににげよう、ユミリさんをほうっておく、って?」
スイカは先に一気に言った、和祁の言いたかった言葉を。
二人は大勢がいるホールに銃やら暗殺者やら物騒なことを話している。幸い、人々の話し声がかしましいから、和祁達の会話は逆に気付かれていない。
だけど、突然、もう一つの音がして、すべての話し声を抑えた。
それから、更に大きな悲鳴は次々響き始めて、その残響とともにホールを包んでいく。
さっきまでのんびりしていた人達は皆冷静さを崩した。
こういう状況でも慌てることのない人は、強いと言えるのだろ。
オーディオから出たアナウンサーの声も途中で断って、ズーズーと雑音に変わってしまう。
この場所はすぐ地震みたいな感じをもたらした足音達しか聞こえない。
あたふたと走った人々はまるで和祁達の会話の背景となっている。そういう二人は目立っているけど、誰も彼達を気にしていない。
皆は逃げることに精一杯である。
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