空港襲撃(1)
16:25ーーーーあるレストラン
ある西洋料理の店を選び、和祁達は浅い青の明かりを浴びて螺旋の階段を上がって、窓辺の席についた。
壁にはたくさんの飾りがつけられている、宝石やベル、あるいは古く見えた時計。褐色の木のテーブルに赤い布がカバーしている。
スタッフ達は古典的な晴れ着を着って、振る舞いも優雅である。客たちは静かに料理を楽しんで、時にやや大きな声を出す。
ここを包み響いている曲は、小川のように優しい。でもはっきり聞こえて、人々の心を潤している。シックな曲で安らかで古めかしいムードが漂って、まるで思わしい時代に入ったような感じだった。
和祁とスイカは顔合わせに座っている。スイカはのんびりとスマホを弄っている。一方和祁はぼうっとしているように彼女を見ている。彼の左顔は赤くい腫れっている。
「その……」
和祁から声をかけられて、スイカはいつもの表情で見返す。
「いい曲と思わないか?」
「確かにね。この曲の名知りたくなった。」
スイカは微笑みながら答えた。全然和祁の様子を気にしなかった。
「でもスイカはやはり自分の曲リストを選ぶよな。」
「ビンゴ~」
スイカは手を✔のようにして、可愛い声を出し、萌えるふりをした。それから、彼女はイヤホンをスマホに繋げる。
和祁はまた何かを話したがる時、邪魔者ひとりがやってきた。
それはとてもキレイな店員。この店はスタッフの外見に厳しい要求をつけているらしい。
「お客様、お待たせしました。すみません。」
「いいえ、別に。」
直ちに、スイカは返事した。返したのはこれだけでなく、店員さんと同じような営業スマイルだ。
「ご注文はなんですか?メニューはここです。」
「いいえ、いらないです。」
スイカはスマホでメニューを確認している。でも直接にスマホで注文することが出来ない。なぜなら、和祁のアカウントに金が足りない。そしてスイカのアカウントでログインするには自分のスマホが必要だ。
「わかりました。」
「えっと、アイスクリーム・ダークエンジェル1杯、看板ステーキ一つ、情熱手羽先ラージ1人前。」
「えっ、それって、激情手羽先ですか?」
店員さんはスイカの間違いを指摘した。
「ああ、そうです。そして、和祁は、虹サラダとフリードムカレイライス、桜桃のジュース1杯、でいいですね?」
スイカは和祁に訪ねた。
「桜桃より、今はーー」
「異議却下です。」
和祁の申し込みを潔く断った。もちろんほかの人がいるから、スイカは声を少々抑えたけど、やはり彼女はまだすねている。
と、和祁は知った。
「以上、お願いします。」
「はい、ではご確認下さい。アイスエンジェル1杯、看板ステーキ一つ……」
店員さんの遠ざかる面影を見て、和祁はため息をついて、口を開いた。
「えっと、さっき……僕を殴ったのは……」
「はぁ?恨みあるわけ?それとも、仕返ししたい?」
「いえいえ、ただ理由が聞きたい……」
「急になぐりたくなったから、殴ったの。」
平然とした顔で笑いながら、スイカは誤魔化しようとする。
(誰と付き合うとか、別に私が彼女じゃないし、殴る理由なかったのに……)
「本当に理由を知りたい。気にするから、すごく。」
まぁ、スイカもごまかせると思っていない。彼女は笑顔を消して、目の前のプレートを見つめながら話す。
「カツケは、本当にkyだね。女の子の言いたくないことを聞くとは。嫌われがちなのよ。」
スイカは打ち明けるつもりだと、和祁は判断した。
「さっき、むかついた。だって、カツケはーーーー」
「えっと、僕は?」
「カツケは……カツケのせいで、私が犬に噛まれた。やはりそれは悔しくてたまらなかった。」
「いや、さっき大丈夫だって言ったじゃん。」
すぐツッコミされた。
スイカは目を細めた。
(「だからカツケはkyだね、言ってることは真実に限らないの。」ってのは、ダメか。私は内気だけど素直な性格だし……)
「でも、とても悔しかった、悔しい。」
「えっ、まだ痛いのか?」
突然和祁は気掛かりそうに聞いた。それに対して、スイカは目を大きく見開いた。
「……あっ、痛みは消えたけど……その、聞きたいことはもうないでしょ?」
スイカは片方のイヤホンを指で摘んでいる。和祁と話す時はいつも外している。
和祁が頷くと、スイカは再びイヤホンを耳につけて、自分の世界に入った。
和祁は疲れそうにソファーに寄りかかった。
今日一日に大したこと起こらなかったけど、何故か彼は眠くなった。
(あ、いや、普段は学校でたくさん寝るから……休みに入ると、昼に寝ないから……)
「手羽先が来たよ。そろそろ目を覚めるよ。」
「えっ?僕は寝落ちちゃった?時間いくら経った?」
「安心、15分だけ。えっと、これ、半分分け?」
テーブルの真ん中に置かれたプレートに手羽先が六つ。鮮やかな色に染められ、いい匂いを空気に漂わせる。
「えっと、なんとなく、三つが足りたい気がする。」
「うん。丁度私ダイエットしてる。じゃカツケ四つ。」
「ダイエット?そんな必要ある?」
「小柄の女の子を舐めるんじゃねぇぞ。」
「舐めるとは……」
「体重の微かな差でも、動きに無視出来ない邪魔をもたらすかもしれないぞ。知ってるでしょ?」
「理論上はそうだけど……普通はないだろ。」
「…油断は禁物。」
そして来たのは虹サラダ。それは量の多い果物サラダで、実物はメニューの写真に劣らない。もちろん、価格も只者ではない。スイカのおかげで食べられる。
「これは、食べ放題も同然じゃん。」
和祁はテンションが上がった。
「そうはさせん。私も食べるから。」
話しながら、スイカはフォークをリンゴに向ける。
和祁はサラダのリンゴが好きではない。
「ところでーー」
スイカはイヤホンを外し、何かを話すつもりらしい。
「あの方はどうして急に現れるの?急に来る?その事情が気になる。」
いいなずけのこと。
「一切知らん。」
和祁は答えた。
「つまりすべてが謎だね。厄介なことにならないならいいけど。」
「あっ、母さんは何か知ってるかも。」
「お母さんに事情を聞かなかった?」
バカをみるように、スイカはくりっとした目で和祁を見つめる。
「聞く理由を一つ教えてくださいな。」
和祁は冷たく答えた。
「そんな面白……いや、大事なこと聞かなくちゃ!」
ギャグとして、スイカはわざと言い間違えた。
「普通は深く考えないだろ。しかも夕べ急に知らせられたから。」
「カツケはてっきり好奇心に満ちてるいい子と思ってたのに、がっかり。」
「知りたいのは知りたいけど、ちょっと忙しかったから。それに、いいなずけさんに会ったこともないし、色々聞くのが失礼だろ。」
「つまり、聞く勇気や意志がなかったってわけね。」
「うん、そう考えてもいいと思う。」
「じゃ、私が聞くわ。カツケはゆっくりと大好きな黄金桃を食べて待てばいい。」
スイカはくるりと瞳をくりくりさせながら、急に和祁の口を狙って一枚の黄金桃を投げる。
当たりだった。
話そうとする和祁は口を黄金桃に塞がれてしまった。
彼は死んだ魚の目でスイカを見ると、スイカがくつくつとした。
楽しみそうに黄金桃を食べてから、和祁は文句を言う。
「それ……いたずら……」
言葉にもならない言葉だったけど。
「それじゃ私はーーお母さん、その子の情報いただきたいですって、聞くわ。」
「ちょっと、直球はだめ。しかも僕の口調に似てない。」
「面倒いね、カツケは。」
スイカは甘えているような声で文句を言った。
「自分の身分で聞いてもらいたいけど。」
和祁は巻き込まれたがらないから。
その言葉に、スイカは慌てて手を振る。
「えっ?私の身分で?いやいや!」
「どうして?自分が聞きたいならもちろん自分で。」
「でも、そうすれば、まずは自己紹介しなければならないよね?面倒そう。」
「では、僕がスイカの紹介をする。どう?」
「いや!」
スイカはぐっとフォークをテーブルに突き刺した。そして彼女は慌ててテーブルを傷付けたかないかを確かめていく。
「えっ?僕の母さんだし、自己紹介くらいいいだろ?」
「だからこそだよ……」
スイカは頬を赤くして見下ろしながら飲み物を飲む。
「えっ?」
そんなスイカに、和祁は頭をかしげる。
和祁から視線を投げられ、スイカの瞳に何かの光がちらりとした。
「だから、カツケの身分で聞くのがいいんじゃない?便利だし。」
「うっ、わかった、じゃ言葉遣いをちゃんと確かめなさい。」
「なさいって?」
スイカは不機嫌に目を細めて和祁を睨む。
彼女の仕返しである。
「あっいや、ただのアドバイス、アドバイス。」
「ふっ。それで良し。」
勝ったとばかりにスイカは得意げに微笑んだ。とても美しく眩しかった。
スマホで和祁とお母さんのメッセージを読んで、考えたあげく、スイカは提案を上げた。
「『母さん、その、あの方のことをもうちょっと知りたいです。いいなずけですし、すぐに会いに行きますし、何かの情報を教えていただきたいです。』って。」
「あっ……まぁ、いいと思うけど。」
和祁は不安にスイカを見つめる。彼女が送信のボタンを押すまでずっと。
その後、残った料理は一気に送られてきた。二人は静かに夕食を食べる。優雅な曲に包まれて。
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