誰かと付き合ってみたい(3)
「よっ、また同じクラスか、よろしく!」
さっき別れた上条誠もいる。
「ウィッス。」
和祁は適当に答えた。
「よっ!スイカちゃんじゃないですか!」
ある綺麗な女子が話をかけてきた。彼女も星間学園中等部の制服を着ている。
天上桃月、スイカの友達である。背は和祁より高い、おっぱいも大きい。ピンクの髪は背中まで伸ばされている。
「おはよ。」
スイカは挨拶した
「もう午後ですよ。」
和祁もツッコミしたかったけど、桃月の方が早かった。桃月はそう言ってスイカの肩を叩いた。
「……」
ちょっと考えてから、スイカはそう答える。
「ほら、アイドルは夜でもおはようおはようって言うんじゃないんですか?」
「アイドルか、そうですね。スイカちゃんはもう新入生の有名人になってますね。ふふ、さっき本当驚きました。スイカちょんはそんな場合で先生に怒られるなんて……」
そして桃月は腰を曲げてスイカの肩に掴まり、ゲラゲラと笑い出した。
「そ、それは……」
スイカは頬を赤くして絶句した。
そばで会話中の二人見ている和祁もテンションが上がった。
(百合最高!)
そしてなんとなく寂しみを感じた。
もし彼はそんな冗談を言ったら、きっとスイカはパンチを返してくれたのだろ。
(さすが、女の子同士か、仲いいな。)
「ところで座席表は?」
スイカは聞いた。
座席表は電子黒板に移されてるんじゃんーーーーと和祁は答えたかった。
でも彼が答える必要がないことを、彼は知っている。
「ほら、黒板を見て!」
結局桃月が答えた。
「あっ、気付けませんでした。」
スイカは黒板を見ていく
彼女の席は二列目の二つ目で、和祁は同じ列の五つ目。
「運は悪くなさそうですね。」
スイカはそう呟いた。
「そうでしょ!やはりスイカちゃんもあたしの近くにいたいですね。」
「あっ、うん。」
そう言われたら、スイカは桃月の席は右にあるということに気付いて驚いた。もちろんその驚きを桃月に見せなかった。そして、そのまま誤魔化した。
「でも驚きました。こんな前に座るのが初めてです。」
桃月は背が高いからいつも後ろに座っていた。
「確かに相応しくありませんね。」
スイカは簡単に反応を与えて、視線を和祁のいるところに送る。
中等部から進学した人も多いから、クラスに和祁の知り合いも少なくない。彼らに挨拶してから、和祁は自分の席に戻った。
それで彼は一人で悩みを考え始める。
ーーーー知り合い少なくないけど、親友はいない。
(友達作らないとね、僕も高校デビューしたいな……スイカなら、すぐクラスメイトの仲良くなるだろ、彼女はもう以前みたいに偏屈じゃないし。)
和祁は苦笑を浮かべた。
そして考えるうちに、彼はふと違和感を感じた。
(あれ、静かになった?)
そう、急に、教室は静まり返った。
和祁は周りを見るとーーーー
座った生徒も、立っている生徒も黙っていて石像みたいにびくともしなくて、ただ同じ方角を見つめている。
和祁は彼らの視線を辿って、入口に立つ女性に気付いた。
その顔、和祁は知っている。
アリス先生だ。
アリス先生は視察に来た可能性もあるけど、もっと説得力のあるのはーーーー彼女がC組の担任。
(だったらスイカは怖がって泣くかもな)
和祁はスイカを睨む。
スイカは佇んでぞくぞく震えている。
怖がる感情もあるけど、その震えに混ざったのは大部悔しさ。
と、和祁はそう考えたーーーーいや、[考えた]ではなく、[知っている]だろ。
顔はよく見えないけど、和祁はスイカの感情を察することが出来る。
「ディスさん、君の席はそこじゃないでしょう?」
冷たくて鋭い声。
「……」
スイカはどっと痙攣してから黙って佇み続ける。彼女も早く席に戻って気まずさを払いたかったけどーーーー
アリス先生からの圧迫力は動くなと宣告している。
時間は気流とともに流れすぎていく。
「では、皆さんは早く席に戻ってください。」
そう言われると、生徒達は荷担を落としたように落ち着いていく。彼らは超能力者らしく早く席についた。
スイカ以外だった。
(どうして私だけ指名されたのよ!!)
(やはりスイカは嫌われたよな。)
と、和祁は思った。
………………
「皆さんはもう高校生です。もっと成熟になるべきです。元気なのは悪くありませんが、場合を見なさい……」
アリス先生はお婆さんみたいにダラダラと言っている。
(厳しいな、でも厳格な先生の元でこそ優秀な学生が育つ。)
和祁はポジティブに思っている。
「まずは自己紹介です。」
生徒達を見回して、アリス先生は怒りの消えた声で言っている。
「わたくしは皆さんの思った通り、このクラスの担任を務めます。アリスと申します。アリス先生で呼んでいいです。意外がなければわたくしは皆さんと3年間を一緒に過ごします。ご是非宜しくお願いしますーーーーそして、右の列から次々自己紹介しましょう。」
感情の感じない声だが、少々口調が柔らかくなったので、生徒達は一旦ホットした。
するとーーーー
「早くしなさい!もう一度繰り返しませんから!」
生徒達は冷たい水に落ちた猫みたいに震えた。
15:26
知らないうちに、こんな時間になった。
自己紹介と宿題の注意を終わらせたらーーーー正確に言えば、アリス先生が教室から離れたら、スイカは長くいきを吐いた。
「早く帰ろうか?」
そして彼女はそう言ってから和祁の腕を掴んで、入口へ走りかけようとする。
「あっ、そのーーー」
和祁の言葉を待たずに、スイカは彼を引きずって走り出した。
今のスイカは目立ちすぎるから、ところどころから針のような視線が彼女を刺している。彼女はイライラになって、早く立ち去りたいと思った。
「ちょっ、ちょっと!」
いくらかの人込みを駆け抜け、何度も息をつき、二人は学園外のどこかで足を止めた。
「カツケはまた弱まったね。私はもう速度をコントロールしたはず。」
息を切らした和祁を見て、スイカは言った。
「だから、ちょっとって……」
和祁はしゃがんだ。汗が彼の額から伝い落ちる。
「……」
(私走りすぎたかな?)
スイカは反省した。慌てすぎて間違いをしたかもしれない。
スイカは何気なく和祁を見下ろし、彼の回復を待っている。
しばらく。
「帰ろう?」
もう一度スイカは訊ねた。
「帰るってどこ?」
「もちろん家でしょ?私の家。」
「いや、空港に僕の……あの方を出迎えにいくべきだろ……」
「その先に一度帰らせて、いい?」
「えっ?」
「スマホ……切れた。」
「なら、僕一人でいっていい。帰っても構わん。」
しゅーーと、風が葉を巻き上げる。
「いや、私も行くの!……はい……わかった、直接に空港に行こう。」
スイカも自分の理屈を知っている。そのまま論争しても和祁に迷惑をかけるだけだ。
しかもモバイルバッテリーを持っていないのは彼女のせいだ。
そして、スマホよりその婚約者のことが重要だと、彼女は判断した。
「暇だったら僕のスマホ使っていい。」
「渡して。」
といいながら、スイカはもう自ら和祁のポケットからスマホを取り出した。
そしてすぐスマホを開けた。
和祁はパスワードを設置していない。
それは危ないと、以前スイカも警告した
その時の和祁はそう答えたーーーー「これは僕を認めたアティファクト、僕だけが使える。それに、僕の真の意識がそれに宿っていて、他の誰かに奪われるはずがない。」
中二病だった和祁。
実は和祁はIT科だから、自分でシステムを改善したのが真実だった。
ちなみに、その中二発言を聞いたスイカは「ちゃんと言え!」と叱りながら和祁を蹴飛ばした。
「まぁ、いいかな……じゃいこう。」
スイカはつぶやく。彼女は和祁のアプリを一度見てがっかりしたような顔をした。
「僕のやってるゲームがつまらないか?」
「大丈夫、ネット小説を読む。」
「実は僕の代わりにゲームをやってほしい。」
「自分でやれ。」
「疲れる。」
「まぁ、そこまで頼んだら、手伝ってあげよう。」
二人は歩きながらふざけ合った。アリス先生のことを言わずに。
スイカはもちろんそれを忘れようとしている。和祁も彼女に思い出させないようにしている。
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