プロローグ 許嫁のお知らせ(3)
幻紋を使って、スイカの回復力は大幅上がって、血はもう止まった。
「とにかく、不合格。残念だけど。」
スイカは正式的に宣告した。
「わかりました。」
「もう敬語使う必要ないんだよ。ふうー」ため息をついて、スイカは生意気げに言い続けた「バカ和祁。もしさっき、執事はご主人を傷付けられないなんて言ったら、合格したのに。」
「そんな手段が…あのう…もう一回チャンスくれていい?」
「ダメ。」
さっぱりと拒否された。
「わかった。」
のっそりと立っている和祁の口から、元気なさそうな声が出てきた。
まさかスイカに拒否されたとは。きっとここで働けると、和祁は思っていたのに。
大きいショックで、彼の脳裏はぱっと真白に染まった。
まるで親友に裏切られたみたいで、まる世界を失ったような感じがしている。
彼はとても悔しがっている。だけど、おめおめと頼み続けることはない。
だって、スイカの返事はきっと変わらない、と彼は知っている。
気まずい雰囲気を打ち消そうと、スイカは沈黙を破った。
「私が片付けるから、ちょっと待ってね。欲しい飲み物は?持って来てあげる。」
「ああ、コーラでいい。」
「はいー、それで、こんなに、落ち込んでないで。」
と言ったら、スイカは再びリビングルームを立ち去った。
うっそりと佇んでいる和祁ひとりだけをここに残した。
(なんか…スイカに面するのが嫌な気がする…なんでも変わってないはずなのに…)
「あとはね――」
スイカはコーラをテーブルに置いたら、和祁に声をかけた。
「あっ、はい?」
「その令嬢さんが来たら、出迎えて案内するだろ?その時、私もいく。」
「えっ?」
「私もいくの!」
なんか、スイカがテンション上がりそう。
「ああ。もともと付き合わせるつもりだった。流石に、僕もそういうこと苦手なんだ。」
「うむっ。」
スイカの喉がこっくりと鳴った。自分の興奮を意識してきて、悔しそうな表情をした。
(うっ、ついそう言っちゃった…無関心なふりをしても済んだものを!)
と、彼女が思っている。
「そろそろ昼ごはんかな。出前?」と言った後、和祁はコーラを取って飲み始めた。
「私が作っていい。」
「まずはご飯つくってくれ。後で片付けて。」
「かってに私を使うなよー。」
と、スイカは言ったが、和祁の元気が戻った様子を見ると喜ぶの。
「お願いだ。」
「合格させなくてよかったの。執事のあるべき態度じゃないよ。」
笑って冗談をいいながら、スイカは行った。
11:53
「ちょっと考えた。その時、僕のいいなずけさんはお願いだ。僕なら、やはり住んで来ないことにしたい。同居なんて面倒いと思うし。しかも、2人の女の子。」
「それな、でもーー3人の女の子よ。明日、真弓さん帰るの。」
からかうように、スイカは言った。
真弓はこの屋敷のメイド、それに、唯一のメイド。こんな大きい屋敷では、普段スイカと真弓二人だけが暮らしている。
最初はあるわけで、使用人業界に手配されていたから、メイドなどを雇う術はなかった。そして、ある事件で、少女真弓を助けた。仕事探し中の真弓はおのずからスイカのメイドになった。いま、その手配はなくなったが、スイカはもう二人の生活を慣れてきた。
ちなみに、真弓は18歳。
「とにかく、このように決める。いい?」
和祁は最後の1杯のカレーライスを口におくると、スイカに声をかけた。
「いいけど。」
じっとしたのはスイカの視線。
それゆえ、離れようとしたばかりの和祁は不気味な感じして、うごきを止めた。
「どうした?」
「そのままどこかへ行くつもりじゃないよね?」
「そういうつもりだけど?」
事実だし、和祁は正直に認めた。
「まさか、食事の片付けも私に任せる気?」
ちょっと怒りめいた声だった。
「わっ、わかった!僕でいい!」
和祁は慌てて相手の意図に従って言った。
「こういうことも悟らせなきゃね。だから、和祁はまだまだ優しくないって。もっと自覚あれば、執事になれたかもしれないねー」
「それで刺激しないで欲しい…」
「は?文句ある?」
「ない。」
迷わずに、和祁は即答。
「ところで、午後どんな予定?」
笑いを止め、スイカは話題をかえた。
「えっ?予定って?午後学校にいくのではないか?」
「学っ校ー?」
「メール見なかった?昨日の。」
「メールか。ずっとゲームばかりしてたから。気付かなかった。」
そして、スイカはスマホを取り出して開けた。やはり学校からのメールは1件がある。
用事の知らせやクラスメイトの自己紹介などをするそうだって。
「なんて学校…休み始まったばかりなのに、生徒を呼んでいくとは。」
ぶつぶつ、スイカは呟いた。
彼女と和祁は中学校卒業したところで、今は高校へ進学の春休み。
「それで、あと電車賃お願い。」
「それくらい自分で…はい、わかった。ふっ、和祁ったら…」
ため息ついたあと、スイカは同意した。流石にこんな細かいことでムードを悪くするに値しない、と。
彼女が家事しようと思ったら、和祁がスマホをいじり始めたことに気付いた。
「早く働け。」
不満そうに、スイカは目を細めた。
「いいえ。その、母さんからのメッセージだ。いいなずけさんは今晩に着くんだって。」
「そうか。うっ、忙しい気がする。せっかくの春休みなのに…」
何度目の嘆きだろうか、スイカはした。
「…」
和祁は無言で彼女を見ている。申し訳の気持ちはもちろんある。スイカの美しい春休みを邪魔した、と。
「何見てんのよ。ところで、いいなずけさん気にかけるのね。1度も会わなかったのに。」
「基本の礼では?母さんの頼みだし。」
「まぁ、本当にお嬢様気取りなら、さっさと金貸して欲しい。」
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