第2話「契約」
「旦那、正気で?」
「まぁまぁ、ダメだったとしても君に文句は言わないから安心して契約してよ」
「ま、まぁそれならいんですけどね」
男はその言葉に安心したのか手を止めていた作業を再開する。
何処からか持ってきた黒い液体が入っているビン。
兎に角よく刺さりそうな針、それに布。
どうやら想像以上に契約ってのは手間らしい。
「ねぇ、君名前は?」
俺は黙ってこちらを見続ける女に聞く。
奴隷は一瞬躊躇するも、口を開く。
「……リア」
「確か奴隷契約の時って名前変えられるんだよな?」
「そうですね」
男は作業を続けながら答える。
「リア、名前はどうする?」
「変えて……下さい」
リアは取ってつけたように敬語を付ける。
さて、名前。
まぁ思い出したくない過去も一つぐらい生きてりゃあるか。
と言ってもネーミングセンスなんて無いし…………よし。
「『ルナ』今度からそう名乗れ、意味は特にない」
俺がそういうとルナは小さく頷いた。
「旦那、準備できました。無料なら首輪、追加で銀貨三枚で奴隷紋を手首に刻めますが」
首輪の方が奴隷と分かり易くて絡まれにくいか? いや逆もしかり。
「ルナ、選べ」
「………首輪で」
「じゃ、旦那ちょっと血を貰いますね」
おぉ、テンプレとは言えちょっと感動。
素直に左腕を差し出すと男が指先に針を指そうとする。
「あ、悪いが腕にしてくれ。左でも偶に武器を持つんだ」
「了解です」
男は採取した血を奴隷の首輪に流し、呪文を唱える。
首輪の紋章が鈍く光る。
「終わりやした。 これで今から旦那の奴隷です。命令をする場合は首輪に魔力を流しながら喋ればいけやす、命令すれば半強制的に体が動きますが無理をすれば抵抗できない事もないっぽいので過信は気を付けて下さいね」
その言葉と共に布を渡される、成程。服替わりらしい、俺はルナに渡す。
「あぁ、ありがとう。じゃ、これで」
「あ、旦那! 冒険者登録をするなら心配ないですが、税は気を付けてくださいね」
「わかってる、助かった。行くぞ」
金を払い、店を出る。
ルナも下を向きながら黙ってついてくる。
首に首輪、布を羽織っただけで足は裸足。
流石に転生者として心に来るものがある。
まずは靴屋か、その次服。
そういや、腹も減った。
丁度いい、そこで話をしよう。
異世界物で奴隷制度はテンプレが、扱いはその作品ごとに違う。
この世界なら奴隷だからと言って全員から蔑まれる様な事は無い。
所有者の付属品、物、と言った扱いだ。
だから恋人の様に扱う人もいれば、それこそ奴隷の様に扱う人もいる。
服も靴も選ばせそのまま流れで入った飯屋。
ルナは終始無言無表情、……お通夜だな。
もうちょっと一人で考えさせるか、話は宿ですればいい。
俺は丁度来た飯を受け取り食べ始める。
それを見た後、ルナも黙って食べ始める。
テンプレだと今頃デレデレな筈だがまぁ、現実なんてこんなもんだろ。
「ハワード、これ奴隷の分。次から朝飯は一人分追加で頼む」
「……お前が奴隷? あんま変なことさせんなよ」
「おいおい、見る目が落ちたか? 俺の悪い噂何て一つも聞いたことが無いだろ?」
「…………まぁ、悪い噂はな」
この街に来てからの顔なじみ、今じゃこうして冗談を言い合う仲だがどうも俺を誤解してる気がする。
まぁ今はルナの事だ。
「じゃ、明日から頼んだ」
「おう、毎度!」
宿の二回に上り、一番奥の部屋に入る。
部屋にはベットが二つ、椅子二つに簡単なテーブル。
そして辺りには様々な武器や防具、魔物の素材や硬貨が無造作に散らばってる。
「あー片付けないとな。ま、座れ」
そうルナを動かし椅子に座らせる。
俺も向かい合うようにテーブルを挟んで座る。
長かった。
本当に長かった。
異世界に転移してから一年、ようやく初奴隷。
「ルナ、契約をしよう」
報告
乗りの良さで「異世界転生」とタイトルや本文中に書いていましたが、正しくは「異世界転移」です。
該当点は全て修正したつもりですが、漏れが有ったらコメント頂けると嬉しいです。
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