第12話

「博士、博士!」

 ミナは研究をしている私に駆け寄ってきた。

「何?」

「音楽聞かせて」

「え?」

「すごいきれいな声の人がたくさんいるんでしょ?」


 私は音楽を厳選してミナに聞かせてあげた。しっとりと耳を傾けるミナ。


 とりわけ気に入ったのは、アコースティックギターで弾き語る女性シンガーであった。

 ミナは人間らしい音楽を好んだ。電子音のない音楽に聞き入った。


 それはミナの心がより人間に近いからかもしれないし、ロボットであるからこそ、人間の不完全さ、つたなさを好んでいるのかもしれない。


 それでも、そんな切々たる音楽を聞いて涙を流す彼女は、まぎれもなく人間であった。



 疲れてリビングに眠るミナ。

 笑顔を忘れかけた私にミナは微笑ましい光景で包んでくれる。

 私ひとりでは味わうことの出来なかった貴重な時間だ。


 暖炉のような優しい炎と暖かさ。

 これを『幸せ』と人は呼ぶのだろう。

 私はミナに毛布を掛けてやった。


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