第8話

 外に出たロイド0ー37は犬を見つけてはしゃぐ。

「わんわん」

 犬を鳴き声を真似ながら近づいていく。


 犬もはしゃぐ様子でロイド0ー37に近づくが、以前と違い、ロイドが犬の頭を撫でた瞬間に犬は吠え出した。


 ロイド0ー37は戸惑って私に問い掛けた。

「なんで急に機嫌悪くなったの?」

 私はワインをたしなみながら言ってやった。

「それはあなたが人間だからよ」


 ロイド0ー37はその言葉に驚く。

「どういうこと?」

「その犬は人間にだけ吠える。私がそう教え込ませたの」

「でも……」

「私には懐くけどね。そうインプットさせたの」


「インプット?」

 ロイドは不思議そうに私を見た。

「その犬は……」

 私はゆるりとその問いに答えた。

「ロボットよ」


 ロイド0ー37は犬を不思議そうに見ていた。

 同時に自分の体をまじまじと見つめていた。

 以前と何ら変わりない自分の体を見ながら、頭を傾げていた。


 私はそれを見て、ロイド0ー37が人間である実感を更に強めたのだ。


 私はその時に彼女をロイド0ー37と呼ぶことをやめた。

 もっと人間らしい名前をつけてあげよう。

 37……『ミナ』……。



 そう……今日から、あなたは『ミナ』。


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