第6話

 ロイド0ー36を診察台に寝かせた。

 私の頭に苦悩がよぎる。


 私は人間が嫌いではないのか?

 なのに何故ロイドに、人間らしさを求めているのだろう?

 私はロイドをより人間に近づけようとしている……


 私の欲望は、ロイド0ー36を完全なる人間へと近づけることへと盲進していた。




「ロイド、これを飲んで」

 テーブルの向かいに座ったロイド0ー36にコップを差し出した。

「何ですか、これは?」


 私が作った液体。

 これでロイド0ー36の脳はより人間に近づく。

 脳をつまりは退化させる。


「これは……りんごジュースよ」


 陽電子やタンパク質、メナトリウムなどを含んだ特殊な液体。

 それにりんごを混ぜた。

 知恵の実と称されるりんごを混ぜたのは、私の少しばかりの願掛けとユーモアであった。


「どう?」

「……変な味です」


 飲み終えたロイド0ー36はフラフラと頭を揺らした。


「脳に浸透するまであなたの体をオフにすることは出来ないの。少しの間、脳に障害が表れるけど辛抱して」

「はい、分かりました」


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