第5話

 庭に犬がいる。

 私の飼っている犬だ。


 ロイド0ー36はそれを見つけて興味が湧いたのか近づいていく。

 犬もはしゃぐ様子でロイド0ー36に近づく。


 犬はロイド0ー36に撫でられて気持ち良さそうに目を細めた。

 私はコーヒーを飲みながらテラスから眺めた。

 微笑ましさを感じずに、むしろ寂しさに襲われた。



 日々の生活は明らかに華やいでいった。

 それはロイド0ー36が居ることであることは言うまでもない。


 私はロイド0ー36に口づけをし、愛しい想いを込めて抱きしめる。

「私の可愛いロイド……」

 私は抑えていた欲望をロイド0ー36に吐き出した。



 私はロイド0ー36を我が娘のように、そして恋人のように愛情を注いだ。


 しかし当のロイド0ー36は愛情を知らない。


 私に想いを馳せるわけでもない。

 それが歯痒はがゆかった。


 私の欲望を満たすために生み出した者は、私の更なる欲望を生み出していく。


「ロイド、こっちへおいで」

「はい」


 そばに来たロイド0ー36を私は抱きしめた。


 この柔らかい感触、人肌の体温。

 こんなに人間であるのに。


「私が好き?」

「はい」

「…………」


 ロイド0ー36は私の言葉を待っている。

 ただ私の申し付けを待っている。

「もういい……。あっちへ行きなさい」

「はい」




 何故にこんなに感情が機械じみているんだ?

 感情表出、つまり感情を持ったかのように振る舞っているだけだ。

 ロボットであるから致し方ないが、それが私をひどく苛立たせていた。

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