第50話 『悪役』と辛勝

 右、左、振り上げ……からの返す刀で振り下ろし!《桜花飛沫》の構え……はブラフで本命はそこからの横薙よこなぎだろ!?


 流れる様な連続攻撃、その全てが駆け引きと一撃必殺を兼ね備えていて本当にやりづらい。なんとか対応出来てるのは昨日の特訓のお陰だ、殺気を読んでブラフに釣られてないだけ成長と言ったところか。


「ほう!修羅よ、お主はどこまで拙者を楽しませてくれるのじゃ!」

「楽しむ、余裕、あんのかよ!」

試合しあうことも死合しあうことも、拙者の楽しみじゃから……の!」


 ヒサメ の 攻撃!▼


 ミス! タイタン には 当たらなかった!▼


 ヒサメの力任せな横薙ぎを距離をとることで回避する。フードの男とはまた違うタイプの手練れ、決して速くはないが流れが綺麗でつけいる隙を与えない攻撃がヒサメの強さだった。


「面白い、面白いぞ修羅よ!血湧き肉おどる戦い、まさかこの地で人を相手にして出来るとは思わなんだ!」

「修羅道に入った覚えは無いんだがな!」

「極東の知識も持っておるのか!聡明な者は拙者は好きじゃぞ」

「そりゃ、どう……もッ!」


 軽口を叩きながらも手を止めない俺たち、横ではシアン姫とユノが俺たちの戦いを見ながら自身に吸収できるものが無いかを探していた。


「すごい、あんなにも綺麗に剣技が繋がってますトードー様……」

「シアン姫、『しゅらどう』って何?」

「えぇっと、常に争いの絶えない道……とかいう意味だったような?」

「じゃあ合ってる」


 あってねぇよ!俺は争いを避けるために今頑張ってるの!何が悲しくて自ら死亡フラグ乱立しなきゃならないんだよこんなことで!?


 そうツッコむ暇も無くガンガン攻めてくるヒサメ。《抜刀》は1回刀を納めないといけないからこの状態で撃ってくることはない、が……ッ!


 ヒサメ の 《桜花飛沫》!▼


 ミス! タイタン には 当たらなかった!▼


 この《桜花飛沫》が厄介なんだよ、振り下ろしからの返す刀で斬り上げるように袈裟けさ斬り、振り上げた状態になった刀をひるがえしてさらにもう一撃叩き込む3連斬りの剣技なのだが……この剣技の予備動作は『刀を振り上げること』の一点のみ。


 つまり、通常攻撃となんら変わらないんだよ剣技が出るための動作が!それを躱せているのは……殺気を読む技術と、ヒサメのとある癖のお陰だ。


「当たらぬ、当たらぬぞ!全て弾かれる、全て避けられる!何故だ、教えよ修羅!」

「そんな目をキラキラさせても教えるかよ!対策されて俺が死ぬわ!?」

「ならばその身体に直接聞いてやろうかの!」


 剣戟が激しくなる、まだギア上がるのかよ……ッ!さっきより一撃が重い、俺は受け流すことよりも避けることを重視で立ち回りを変える。


 こんなの真面まともに受け止めたらロングソード折れるぞ、これは学校の備品なんだから折れたら弁償しないといけないかもしれないんだぞ!?


 俺は……俺はッ!


「負けて……たまるかあああああああああああああ!!」

「ぬっ、ここで反撃じゃと!?」


 お金が、無いんだよおおおおおおおッ!俺は初めて攻勢に転じる、ヤケクソではなくちゃんと狙っての行動……既に相手の刀の癖は読み切った。


 こうして間合いを詰めに来る敵に対してのヒサメの行動は3つ、避けるか刀による突きか……刀身を下に降ろしての斬り上げか。


 今回は刀身を下に降ろした……なら!俺はシアン姫の動きを真似る、レベルが上がった今ならはずだ!


 右足を踏み込んで身体全体を前に出しながら、ロングソードを突く!疑似……《刺突一閃》!


 タイタン の 攻撃!▼


 ミス! ヒサメ には 当たらなかった!▼


 俺の攻撃がヒサメの刀にぶつかる。俺の攻撃が防がれた……が、狙いはそこじゃない!

 ヒサメの斬り上げを!重い一撃に巻き込まれて俺のロングソードが跳ね上がる。


 だが、剣身を弾かれるよりは跳ね上がりは少ない!ロングソードの間合いで、ヒサメより先に俺が先手を取れる!いける、やれる!


「鋭い突きじゃが、まだ遅いぞ修羅」

「っ!」


 刀が……戻ってきている?嘘だ、速すぎる。俺のロングソードがヒサメに届くより先に、ヒサメのひるがえした刀の方が俺の身体に当たる方が速い……?


 ダメだ、勝てない……勝てない?俺が、この俺が!?そんなの、ハルトの時一昨日と同じじゃねえかッ!


 そんな事数瞬先の敗北を考えている暇があれば頭を回せ!オークの戦いの時にもあった、極限の状況で無限に引き延ばされる時間。その全てを使って未来を変えろタイタン・オニキス!


 ゆっくりと近付いてくる刀を避けるように反射的に下に下がっていく俺の身体。そう、振り降りした刀を避けるように俺の身体は……ユノの様に低い姿勢を余儀よぎなくされていた!


 これだ!さあ実践しろタイタン・オニキス、ぶっつけ本番だけどやらなきゃ負けるぞ!

 あの速さを再現するためにロングソードは『空中に置いていく』。あの不可視な一撃を再現するためにヒサメの死角を駆け抜けろ……ッ!


「終わりじゃな」

「その勝ったと思った慢心が貴様の最大の油断だ!」

「っな!?」


 疑似再現……《首狩り》ッ!消える時間も一瞬だし、距離も5メートルなんて移動できない欠陥品。

 だが、ヒサメの油断と後ろに回り込むだけの距離なら……この一瞬で十分だ!


 俺が地面すれすれに滑り込むようにヒサメの背後に抜ける、空中に残したロングソードに意識を持って行かれたヒサメは俺が消えたように見えただろう……そのロングソードを柄をヒサメの背後に回った俺が掴み、そのままヒサメの首元に寸止め。


 その瞬間に加速していく周りの時間、ゆっくりになっていた時間が元に戻る。勝った、のか……?

 それを証明するようにヒサメは両手を挙げて降参をした。


「拙者の負けじゃ。流石じゃな修羅……いや、タイタン殿」

「はぁ……はぁ……」


 そっか、勝ったか……俺は息を荒くつきながら、その勝利を噛みしめた。



――――――

【後書き】

ここまでお読みいただきありがとうございました!


 この「死亡フラグは力でへし折れ!~エロゲの悪役に転生したので、悪役らしくデバフで無双しようと思います~」も50話を越えまして、そろそろ新規読者の人が追って来れないのでは無いかとの考えが出てきましたので……


『死亡フラグ、次回から毎日1話更新に切り替えます!』


 という後書き連絡です。なので51話目は明日に更新されるということですね、今日の18時の更新を楽しみにしていた読者の皆様には本当に申し訳ないです……


 この作品をもっと色んな人に楽しんでもらいたいという私のワガママを聞いていただけるとありがたいです!


 明日の51話からの更新に関しては、毎朝7時に更新となりますので小説のフォローをしてお待ちいただけると助かります。


 また、カクヨムコンテストの読者選考期間中ですので、☆レビューなどで応援をしていただけると幸いです。


 そ、そんなん待ってられねぇよ!って人は……どうしましょう?感想に妄想でも書いていただけたら、近況ノートで最近始めたサポ限定SSとして書くかもしれません。

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