第21話 王女と悪
「良いですか、相手が持っているスキルは『アサシンヴァイパー』『ポイズンスラッシュ』『速射』『デュアルアロー』の4つです」
「え?」
「文句は一切受け付けません。弓は今持っていないので短剣スキルの説明と予備動作を教えますので頭に叩き込んでください。二度は言う時間はないので一度で理解してくださいシアン姫」
私の耳元で
「『アサシンヴァイパー』は急所を狙う技で、予備動作は短剣を突き出すために一旦その短剣を持った手を自身の脇腹まで引きます。『ポイズンスラッシュ』は毒属性の攻撃をする技で、短剣を逆手に持つとそれが来る前兆です」
基本的にはスキルを使わない通常攻撃で組み立てて来て、隙が出来たところにスキルを撃ってくる戦いになると思いますって……待ってください、なんで相手のスキル全部知ってるんですか!?
「文句は一切受け付けないと言いました。弓のスキルは俺が最悪身体を張って止めます、シアン姫は『刺突一閃』を相手に当てることだけを考えてください」
そんな私の疑問をよそに、変態は私の前に立ってフードの男と対峙しました。まるで私を護るかのように。
「何そんなボロボロの身体で私の前に出てるんですか!?下がりなさい、私が代わりに……」
「アイツを見るだけで身体が震えているような人に代わりなんて務まりませんよ。では、頼みましたよ」
そう言って変態はフードの男に駆け出しました。私も慌てて後を追おうとして……足が動かない事に気がつく。
また麻痺状態かと自分の足を見ると、生まれたての子鹿の様に震えていました。変態と戦っているフードの男を見ると、身体の震えが大きくなります。
フードの男 の 攻撃!▼
タイタン に 24 の ダメージ!▼
「死ねッ!死ねッ!死ねッ!」
「くっ!《ポイズン》!」
「当たるかよバーカ!」
あの時……麻痺の粉で身体の自由が利かなくなった時にあの男が見せた
王城で暮らしていた私からは想像も付かなかった『女としての危機』を感じたあの出来事がフラッシュバックして、あの男から無意識に距離を取ろうと後ずさってしまいました。
変態とは違い、明確な意思を持って胸を揉まれて怖かった。払いのける力が無くてなすがまま身体をまさぐられる無力さに絶望した……
「これはどうだ!?ガキィ!」
「ッ、《アサシンヴァイパー》……!」
「残念、通常攻撃だぁ!」
フードの男 の 攻撃!▼
タイタン に 24 の ダメージ!▼
目の前で切り刻まれていく変態。痛いのに、死ぬかもしれないのに、それでも一歩も引かない彼は……こんな私を待っています。
いやだ、行きたくない、怖い。こんな私に重い想いを寄せないで……現実から目をそらそうと下を向いた瞬間。
「民を護る力が欲しいんだろ!だったら現実から目を背けるんじゃねぇ!」
「っ……」
「独りよがりの王に誰が付いていく!?自分の嫌なことから全部逃げて現実を見ない、そんな王になるのか!?ハッ、だったらこの国の未来は終わりだなぁ!?」
男と戦っている変態が私をそう煽ってきた。な……なにを馬鹿な!
「ふ、不敬です!今すぐ衛兵に言って牢屋に……」
「そうやって権力かざしてりゃあ、この状況は変わるのか!?あんたが護りたいと言っていた
そう言った変態は辺り一面に《ポイズン》を乱射する。フードの男は追撃の手を止めて素早く後退しました。
「ぜぇ……はぁ……」
肩で荒く息をしている変態。その身体の至る所から血が出て、彼の足下には既に血だまりが出来ていました。
「そんな……っ」
「ヒャーハッハッハ!残念だったなガキ!頼みの綱の王女は使えず、武器も持ってねぇお前は俺に反撃もできない。レベル差を埋める手立てもねぇ、もうお前は終わりだよ。じっくりいたぶって殺してやる」
「はっ、俺はまだ……負けてねぇ!」
「っち、まーだあの王女のこと信じてんのかよ。無理無理、俺にビビって動けてねえじゃん。さっきの攻撃もお前が発破かけたから動けただけだろ?」
だが見ろ、とフードの男は私を指さす。それだけで私は反射的に身体をビクッと震わせた。
「お前の発破ももう通じない、諦めろガキ」
「うるせぇ、てめぇが俺に指図するんじゃねぇ……ッ!」
「……殺す!」
フードの男が変態に向かって駆け寄る!変態は近付かせまいと《ポイズン》や《パラライズ》をばらまいて応戦しているが、フードの男には当たらない!
どうすればいいの……いえ、どうすれば良いのかは分かっています。私が彼の元に行って一緒に戦うだけ、でもそれが出来ないんです!
怖い、嫌だ、逃げたい。そんな気持ちが足を
フードの男 の 攻撃!▼
タイタン に 24 の ダメージ!▼
「ぐっ……」
「
そんな時、彼が頭を抑えて小さくうめく。そこを逃すはずもないフードの男は短剣を持った手を脇腹まで引く……あれは!
「死ねよ、《アサシンヴァイパー》」
「っ、成りたいものがあるなら覚悟を決めよ!シアン・クライハート!お前の民を想う気持ちは……その程度か!?」
急激に遅くなる時間、男の短剣が彼の心臓に狙いを定めて近付いていくのがハッキリと見える。
私は……私は……!
フードの男 の 《アサシンヴァイパー》!▼
タイタン に ――――――
「『刺突一閃』!」
誇り高きクライハート王国の王女、シアン・クライハートですッ!
―――― 0 の ダメージ!▼
シアン姫 の 反撃!▼
シアン姫 の 『刺突一閃』!▼
フードの男 に 80 の ダメージ!▼
「ぐおおおおっ!」
「はぁ、はぁ……私の目の前で、民は殺させません!」
民を護り、民を導く!その言葉の重みは、王となる者として背負わねばならぬ
「こんの
「っ!」
フードの男がブチ切れてこちらに全速力で駆け寄ってくる。思わず恐怖で足がすくみましたが……覚悟を決めた今、身体が動かないほどではありません!
短剣とレイピアが交差する。ぐっ、なんて重さですか!私じゃ数秒も保たな――
「やっと意識を逸らしてくれたな……ッ!《パラライズ》!」
「しまっ!」
タイタン の 追撃!▼
タイタン の 《パラライズ》!▼
フードの男の両足 は 麻痺 になった!▼
怒りで我を忘れ、彼から意識がそれた……その一瞬を見逃さなかった彼が右肩に刺さっていた短剣を引き抜いてフードの男の足に突き刺しました!
両足が完全に麻痺し、動けなくなった男。焦って懐に手を入れてさっきの麻痺なおしを取り出しますが……私の方が速い!
彼が作った最後のチャンス……これを逃してはならない!
「はああああああああああ、『刺突一閃』!」
「くっ、グアアアアアアアアアアアアアア!」
シアン姫 の 《刺突一閃》!▼
クリティカル! フードの男 に 160 のダメージ!▼
フードの男 は 気絶した!▼
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「ぜぇ……ぜぇ……」
静寂した通りに、私達の荒い息づかいが響く。勝った……ので、しょうか?
微かに足音が聞こえてくる、フードの男を倒して人避けの結界が無くなったのでしょうか。
そうですか……勝ったのですね、私達。ホッと一息ついた瞬間、ドサリと横から重いものが落ちる音が。
そちらの方に目をやると……彼が、血だまりの中に、倒れていました。
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