第23話「ゴーレム四体の試練」
相変わらず四階層では発掘が行われている。
「では幸運を祈ります」
先生と別れ、先を進む僕らは様々な人に応援された。ゴーレムの部屋にたどり着きスイッチを探す。久しぶりすぎて、どこにあるか忘れてしまっている。
古代文字を見つけ、僕らは手を組んで叫んだ。
「よーし! いくぞ、お前ら!!」
王騎君の号令と共にスイッチとなる壁を押した。ゴーレムが降りてくる。もう一度押す。もう一度、もう一度。四度押した後ゴーレムが合計四体降ってきた。
僕らは手筈通りゴーレムから距離置く。走り回り、一人に一体付くように立ち回る。そして王騎君が合図を出した。
「よし! いいぞ! ヒトミやってくれ!」
瞳ちゃんが回転を加えた投擲をする。瞳ちゃんの投擲ならゴーレムの中枢を破壊できるのではないかと踏んだのだ。だがガラスの頭に刺さっただけで致命傷にならない。今の瞳ちゃんの投擲でも倒せないのか。僕らは逃げ回りながらプランBに切り替える。最初にゴーレムを倒した時のように王騎君を飛ばすやり方。だがこれにはタイミングと協力が大事だった。僕らは皆の配置に気を配りながら機を待つ。王騎君は一番壁際にいた。今しかない!
「ここだ! こい!」
王騎君が叫ぶ。僕も鴎ちゃんも瞳ちゃんも走った。三人が土台となり、王騎君が跳ぶ。四メートルは飛んだだろう。ゴーレムの頭上に飛びあがりハープーンを刺す。一体のゴーレムを片付けた。残り三体!
だがここからが大変だった。王騎君が一体の相手をして、残り二体を三人が相手する。だがゴーレムが学習したのか、ランダムに僕らを襲うようになる。
なかなか隙が見つからない。そうこうしてるうちに王騎君が痺れを切らしたのか叫んだ。
「もういい! こい! お前ら!」
「で、でも!」
僕は焦りを覚えていた。残り三体。せめてあと一体に減らせれば……。
「ここで負けたくない! 大丈夫だ! 俺を信じろ!!」
瞳ちゃんが王騎君の元へ走った。どうやら瞳ちゃんは王騎君を信じるらしい。僕も鴎ちゃんと目を合わせ走る。彼を信じよう。
王騎君の相手しているゴーレムの傍に三人土台になり王騎君を飛ばす。王騎君は空を舞いゴーレムの弱点にハープーンを刺した。
王騎君が着地しようとした時だった。一体のゴーレムが既にジャンプしており着地と同時に王騎君を掴んだ。僕は焦った。
「オウキ君!!」
「うおおおおおお! お前ら頼む! ゴーレムの手首を!」
王騎君が叫ぶが、もう一体のゴーレムが近づいている。僕は叫んだ。
「カモメちゃんと、ヒトミちゃんはもう一体を引きつけて! 僕がオウキ君を助ける!」
鴎ちゃんと瞳ちゃんは頷き、もう一体のゴーレムをハープーンを投げ刺し引きつける。その間に僕は、手首の弱点を探す。光が見えた気がした、そこに刺せと言わんばかりの線が。僕は思いっきり手首の隙間に刺した。
ゴーレムが苦しそうに手を離す。王騎君が降り立った。
「大丈夫?!」
「ああ、まだやれる! いくぞ!」
僕と王騎君はできるだけ、もう一体と離れて引きつける。僕は鴎ちゃんと瞳ちゃんに叫んで伝えた。
「やろう! あと少しだ!!」
鴎ちゃんと瞳ちゃんは走って寄ってくる。僕と鴎ちゃんと瞳ちゃんは土台になり王騎君に言った。
「跳べる?!」
「いける!」
王騎君が助走をつけて、僕らの手に乗り高く飛び上がる。そして王騎君はハープーンをゴーレムに刺した。あと一体!
その一体は高く飛び上がっていた。僕らが想像するよりも高く高く。そして降りてきたゴーレムは、着地する前の王騎君を掴む。またか!
「くそったれ!! 負けるかよおおお!!」
王騎君が叫ぶ。必死に抗っていた。僕ら三人は王騎君を助けようと手首を狙う。光の線は見えなかった。とにかく刺すしかない。手首の隙間の穴を探しをグリグリ刺すと、嫌がるようにゴーレムが手を離した。
王騎君がゴーレムの手から逃れ、僕らは距離を置く。
「まだ跳べる?」
その台詞に王騎君は、ふっと笑った。
「俺を誰だと思ってる?」
「海賊王だろ? キャプテン!」
僕らはゴーレムの後ろに回りこみ、三人で土台を作った。最後の最後だ!
「跳べ! オウキ君!」
僕らは高く王騎君を飛ばした。ゴーレムの真上からガラスの頭を貫きハープーンを刺す王騎君。最後のゴーレムが倒れて崩れた後宝石になる。僕らはそれらを拾って確認した。
「ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド。世界四大宝石ね」
鴎ちゃんが鑑定する。どれも価値が高い宝石だ。だがレッドダイヤモンドはない。
「また半年後に挑戦ね……」
ガクリと肩を落とした彼女を元気付けて、部屋を後にする。帰る途中に先生が駆けつけてきた。
「おお! 倒したんですね。証拠品を貰えますか?」
僕らは手に入れた四つの宝石を渡した。先生は確かに、と受け取ってリュックにしまい、拍手した。
「素晴らしい出来です。よく頑張りましたね。これで一年に挑戦する全ての行事を終えました。全てをクリアする人は数少なく、ごく稀なんですよ。当然人数が減ったりするグループもいます。複数のグループを合わせても合わなかったり、色々あります。最初に組んだ四人でこれをクリアしたのは誇っていい事ですよ」
先生は海底ダンジョンを出てから言う。
「貴方達なら、もっと力を付ければ教員にも研究員にもなれるでしょう」
「僕らは……」
「俺は、いつか研究員になるぞ。もっと深くまで冒険したい」
そう言うと王騎君はこちらを見た。
「お前らはどうするんだ?」
「ウチは王騎君についてくよ」
瞳ちゃんが王騎君にギュッと抱きつく。
鴎ちゃんは僕の方を見ていた。僕は先生に言う。
「僕も研究員になりたいと思っていました。王騎君達と、もっと冒険したい」
「なら私も当然ついてくわ」
鴎ちゃんが僕の手を握る。僕はギュッと握り返した。
「……。わかりました。ではこれからもビシバシ鍛えて六階層より下に行けるようになってもらいますので、覚悟していてください」
先生はそう言った後、さて、と言い食堂に向かうように言った。
「今日はフルコースで沢山食べましょう! 英気を養うのも大切ですよ!」
前菜にトマト、モッツァレラチーズ、バジルのカプレーゼ。スープにコーンスープ。メインは粗挽き黒胡椒をかけたローストビーフ、デザートにクリームチーズとプレーンヨーグルトなどで出来たレアチーズケーキ。美味しくて体に染みる。食べ終えた後、今後の方針を決める。
「暫くは迷路と大蛇を繰り返し、ゴーレムにも半年に一度挑んで貰います。もっともっと力をつけて一人でもどこでもいけるくらいになれば合格としましょう」
そして四月になった。新しい人が来る季節だという。だが今年度は生徒が来ないらしい。それだけハードルが高い場所なのだ。新しい人が来る時、古い人は出ていく場合が多い。収容人数はそこまで多くない。町ひとつ入るくらいの大きさのシークルースクールだが、裏方の店などの店員になる人もいれば、ここから出ていく人もいる。
入れる生徒は中学か高校での成績が極端に高い人のみ。その中でも残れるのはごく僅か。だからこそ、更なる高みへ目指して頑張るのだ。
ちなみに僕らは全員中学校からの卒業者だ。そういう意味ではかなりレアらしい。
先生は初めてここに来た時は、高校の卒業の後だったと言う。
僕らは普通ではないなにか特別な縁があって来たのかもしれない。そう思ってしまう。ここに入って一年経って、十六歳。僕らはまだまだ可能性を秘めている。
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