〇〇を救う方法

葬儀

 初めて、同級生の葬儀そうぎに参加した。


 冠婚葬祭かんこんそうさいの会場を借りており、太一くんの家族はもちろんのこと。

 同級生や担任の先生、同じ部活の生徒たちが、列を成して献花けんかしていく。


 やれレイプ魔だの、最低だの、好き放題言っていたクラスメイト達は、皆が一様に涙を流したり、悔しそうな表情を浮かべていた。


 バカバカしかった。


 なぜ、その表情を浮かべる事ができるのか。

 ノリで生きているんだろうか。


 はっきり言うなら、今の僕から見て、彼らはとても気持ち悪かった。

 心にもない事を言うし、行動に表す。


 僕は彼らに、この言葉を捧げよう。


 鹿だ。


 くだらなくて、欠伸をかみ殺す。


 ふと、彩香さんが目に留まった。

 彩香さんは、一応太一くんの彼女だ。


 肉体関係まであったのだろうし、涙こそ流していないが、複雑そうな顔をしていた。

 というか、目の前で人が死ぬところを見れば、誰だって呆然とする。


 この日は、学校に戻らずに午前中で解散。


 くだらなかった。


 *


 葬儀会場から家に向かう途中にある、小さな公園。

 何だか、真っ直ぐ帰る気がしなくて、ベンチに座っていた。


 ボーっとしていると、首元から話しかけられる。


『ショック?』

「んーん。全然」


 僕は冷たい人間になってしまった。

 イジメられていたから、それも冷たい理由に含まれているけど。


 暇なので、ニューストピックを見る。


 今日も自衛隊の人が大勢死んだ。


 海外は、アメリカだろうが、中国だろうが、イギリス、ロシア、にしているのが、今の僕には分かった。


 標的っていうか、『支配と利用』かな。


「前まで、どうでもいいニュースだったんだけど」

『今では?』

「胸の中がザワザワする。僕、おかしいのかな」

、おかしいと思うよ。陰謀漬けで、エセ右翼に目覚めた、って見られるんじゃないかな』

「そっか……」


 直接言われたら傷つくけど、『日本の事は、自分の生活の事』と同じだと思っているので、僕には他人事に感じられない。


 正確には、そうなってしまったのだ。


 知識を付けて、調べる癖がついて、考える癖がついたから。


『でもね。翔太くんが考えて出した答えって、翔太くんのものでしょ。そこに他人の是非は、関係はないよ』


 モリコの話に頷く。

 そして、一つ気づいた事をモリコに言う。


「モリコってさ」

『なんでしょう?』

「ハッキングだけが役割じゃないでしょ」


 モリコが黙った。


「たぶん、教育プログラムが入ってるんじゃないの? それに、前に増殖とか言っていたよね。それって……」


 言いかけたところで、人の気配を感じた。


「誰と話してんの?」


 後ろを振り返ると、相変わらず疑った表情で睨む彩香さんが立っていた。


「別に」

「ずいぶんと、落ち着いてんね」


 僕はっきりと言った。


「だって、僕は太一くん嫌いだし。悲しむわけないでしょ」


 彩香さんもまた、僕が嫌いなんだろう。

 眉間に皺が寄っていた。


「もしかして、……呪いとか、そういうやつ?」

「……なにが?」

「昨日さ。家の明かり、変だったんだよねぇ。ずっとバチバチ鳴って。焦げ臭かったから、緊急ボタン押したけど反応ないし。仕方ないから、ブレーカー落としたけどね」


 モリコが何をやろうとしていたのか、大方見当が付く。


「電気回路が焼けるとか、普通はあり得ないらしいけどね」

「分からないな。それで、僕がやったと?」

「アンタしかいないじゃん。恨みあるの、アンタくらいでしょ」


 それで呪いだって?

 霊的な現象で片づけようとしてるのか。


 別にオカルト趣味やら、超常現象を頭ごなしに否定するつもりはないけどさ。


 これだけは言える。


「やっぱり、バカだよ」

「あ?」

「故障なんじゃない? 知らないよ」


 ベンチから立つと、今度こそ家に向かう。


 知識とか、学習能力とか、知能とか。

 バカっていうのは、それらが欠けている事じゃない。


 だ。

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