モリコの技術

 コンセントからハッキングする技術。

 調べてみたけど、頭がパンクしそうだった。


 『PLC』とされるものがあり、これを介してデータの送受信を行うとか。


 このPLCとは、『電力線データ通信』と呼ばれており、『給電用のケーブル』を使って、データの送受信を行うとのこと。


「えー、ただの電線でしょ?」

『電話線と大体同じなんだってば。んもぉ、デート中に調べ物とかぁ、ちょっと複雑ぅ』


 廊下を歩くモリコがぷくっと頬を膨らませる。


「もっと分かりやすく教えてよ。全然わからん!」

『んー、とね』


 モリコが窓に寄りかかり、人差し指を顎に当てる。

 こうやって見ると、彩香さんは本当に美人だった。


 あ、いや、モリコだけど。


『データの送受信ってさ。、なんだよね』

「ん~?」

『この場合さ、逆に理解しやすくするために、電話は電話。電気は電気って、分けない方がいいよ。だから』


 バカで申し訳ないけど、いまいち分からん。


「違いは?」

。それを分別できる仕組みだったり、技術があれば、一本の金属ケーブルに二つの周波数が混在しても、全く問題ないのよ。まあ、今は、昔より世界中の電気系統が発達したから、高速で通信のやり取りができるだけなんだけどね』


 ピンク色のライトをパチパチと点滅させる。


 一昔前と現在じゃ、全く違うのか。

 考えてみれば、そうだよな。

 昔に比べれば、かなり発達したものばかりだ。


 モリコはそれを使って、まるで魔法のように操作してるだけなんだ。


『ちょい原始的だけど。ただのだって、私は拾えるから』

「電波、ね」

『周波数を合わせれば、電波を傍受ぼうじゅできるし、相手の受信口に発することだって、できちゃうよ。仕組みは、調べていけば割とシンプルだったりするんだ。ただ、シンプルな仕組みが、現在だと色々な物が重なり過ぎて、複雑になり過ぎてるように、してるだけ』


 I字バランスを取り始め、また僕は会話が耳に入ってこない。


追求ついきゅうにおいてはさ。翔太くん。

「何で?」

『例えば、学校教育で学べるだよ。でも、道徳観や価値観は、絶対に信用したらダメ。これは、本来なんだよ』


 大事な話をしてるのは分かるんだけど。

 モリコの股下が気になって仕方ない僕は、さりげなく位置をスライドして、見える角度を探そうとしてしまう。


 前からお尻のお肉が見えているのに、見えないのだ。


『ハッキングはしたら、ダメ。って、教わると思うんだけど。それは、って意味まで理解しないといけないんだ。これが防衛となれば、話は別なんだよ。……海外では、当たり前のように日本へ行ってるんだからね。よ~く、考えた方がいいよ』


 くるくると回り、モリコは僕の視界から大事な所を見事に隠す。


『まあ、学校や家庭は、もう大事な教育はできないだろうし。大人までおバカになっちゃったから。技術は表に出てこないし』


 両手の人差し指で、自分の方を指す。


『そのために、私がいるんですけど』

「なんか、モリコってさ。学習してるの、んだね」

プログラムですから』


 胸を張ると、大きな肉塊が揺れる。


 勉強にはなったけど、何だか知れば知るほど、胸の中がざわついてくるというか、不安とか恐怖とか、色々込み上げてくるものがあった。


 不安や恐怖の正体がいまいち見えてこないから、なおさら落ち着かない。


『よしっ。帰ろっか』

「う、うん」

『ま~た見せてあげるから。へへへ』


 スキップしながら暗闇に消えていくモリコ。

 僕は彼女のお尻を追いかけて、生徒玄関に向かった。

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