大嫌いな世界へ

モリコの存在理由

『日本がするためには、アメリカのを消さないといけないんだって』


 下校中、僕はずっと考えていた。

 モリコと話し、授業をサボって調べ物に夢中になって、それでも分からなくて、僕は言われるがまま考え続けている。


「アメリカは友達じゃん」

『翔太くん。


 話の中で、日本ほど『最高の植民地』はないと言われた。

 それは、現状に表れていてるらしい。


 日本の現状が非常にマズい、という理由。

 例えば、『梅毒ばいどくが増えた』こと。


 これは『売春が増えた』ことに繋がる。

 さらに理由を深掘ふかぼりしていくと、『経済的に食べれない人が増えている』ことに繋がり、そのため体を売って『生活費を稼いでいる』となるらしい。


 これの良い例が、『トー横キッズ』と呼ばれる存在。

 様々な理由で、家無し生活を送る少女たちであるが、彼女たちのやっている事は、シンプルに『その日を生きるために、体を売る』ことである。


 まあ、本質的に同じってことだろう。


 ところが、日本の人は『行為』に対して文句を言い、『本当の理由』については、誰も何も言わないとのこと。


 だから、泣く泣く売春する人が、いなくなるわけがない。


 そして、するとのこと。

 その理由が、『海外にお金をあげている』から、らしい。


 消費税が上がり続けていたり、土地が買われていたり、酷い状況だとのこと。


 じゃあ、立ち上がったら、どうなるのか。


 アメリカの犬として、今は台湾の近隣でドンパチをしている。

 けど、これがアメリカに対して歯向かおうものなら、スイッチ一つで『日本全土のインフラが止まる』事になる。


 まあ、ウイルスか何かだろう。


 プログラマーやハッカーに頼んだら、どうか?


 残念ながら、日本のプログラマーなどは、『レベルが低すぎる』上に、『人数が足りない』らしい。


 一番の原因は、後者の方だ。


 海外のハッカーが一国につき、といる。

 けど、日本では『2~30人前後』とのこと。


 矛盾するようだが、『優秀な人はいる』のだ。

 でも、日本の中枢ちゅうすうに仕掛けられたウイルスを一人や二人で調査し、解除するなど、至難の業である。


 そして、決定的なのが、この理由。


 ――殺されるのだ。


『んで、私が生まれたってわけよ』


 日本の誰よりも優秀で、誰からも殺されないハッカー。

 ネットに繋がっていない国や社会は、現在ではほとんどない現在。

 彼女にとっては、見渡す限り道しかない。


 正直な話、僕の頭では追いつけず、「う~ん」とうなりながら、首を捻るのが精いっぱい。


「言いたい事は、分からなくもないんだけど。……う~ん」

『なによぉ』

「いや、何か、夢から覚めたと思ったけど、まだ夢だったみたいな」

『……はあ?』


 結局、モリコの存在理由が、僕には未だに理解できなかった。

 可愛い彼女、なんて存在だったら、すぐに受け入れられるんだけどね。


 ……分かる人、いるんだろうか。


『何が気に入らないのよ!』

「勉強不足で、分からないんだって」


 モリコは頬を膨らませ、理解できない僕に怒っていた。

 

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