第1話 人類監督官6号の就任
20X1年4月1日
本日よりアジア州を管理する監督官として着任した6号です。義務により進展があった日の締め括りには監督官日誌を残します。インベーダーの皆様、何卒よろしくお願いいたします。
20X1年4月2日
レジスタンスも年度で監督官が着任するとは思っていなかったのでしょう、本日になってテロ行為が多発しました。世界中で発生したテロ行為に計画性はなく、アジア州においては警察を中心に対処いたしました。旧中華人民共和国内では大量の人類が暴動を起こしたため、ミュータント部隊を州本部から派遣し適切に処理いたしました。各地域で夥しい量の死体が残されていますが、迅速に回収し利用可能な遺伝配列の検査並びにリサイクルを行います。インベーダーと人類との掛け合わせで製造されるミュータント部隊へ貢献できる遺伝配列の発見を急ぎ、不要となった人体は分解し人類の食料や医薬品へ転化させていいただきます。ラボとリサイクル施設の常時100%の稼働率を目指すために、福祉を見直し人類の出産率を高めます。死産した個体も検査とリサイクルを徹底し、人的資源の無駄を廃します。
20X1年4月11日
旧ミャンマーにてウォーターフェスティバルが始まりました。これはビルマ歴における大晦日に水で汚れを洗い流す大規模な風習です。人類同士で水を浴びたり、信仰の対象とされる仏像などにも水をかけて清めます。この浄化には物質的な効果も多少ありますが、精神的な効果を期待して行われています。全ての人類がこのような行いで浄化されるとは考えておりませんが、伝統や文化として継承しているのです。人類独自の遺伝的特性や科学技術も貴重ですが、6号はこういった営みにこれまで培われてきた人類文明の真髄があると考えております。アジアには独特な風習がたくさんあります。インベーダーの皆様にも人類文明の息吹を少しでも感じて頂けたら嬉しく思います。そして無論ですが、こういった類いの催しがデモや暴動へ発展した場合は即時対処、同時にそれは死体の回収に役立ちます。どのように転じてもインベーダーの利益となるよう計らいますので、人類の文化的活動を許容していただけると助かります。
20X1年4月13日
本日は旧スリランカにおける仏教とヒンドゥー教の正月に当たります。こちらは前述した催しと比べると騒がしいもので、年明けには爆竹を鳴らしました。少々過激なため警戒していたところ、小規模ではありましたがインベーダーと監督官を対象とした悪口雑言が飛び交いました。これを鎮圧するべきか観察していたところ1時間程度で終息したので対処不要と判断しました。
20X1年4月24日
旧フィリピンにおけるキリスト教の復活祭が始まりました。十字架に磔にされたキリストを模した人形や人類個体が地域一帯に現れます。この催しについては警戒レベルを引き上げない判断を下しておりましたが、迂闊でした。レジスタンスがキリスト教と結託しジハードを起こしたのです。レコンキスタを発動、敵ながら評価したいところです。旧フィリピン地域内での大規模な暴動へ発展し、こちらのミュータント部隊を一部失いました。インベーダー衛星兵器を使用し村落地帯の多くを抹消、都市部は暴動が終息するまで封鎖、物資が枯渇し住民へレジスタンス並びに暴動へ荷担した者の差し出しを要求する予定です。
20X1年4月29日
旧フィリピン都市部内で飢餓が発生、これと同時に密告を要求しました。武器を所持している可能性を考慮しミュータント部隊を標的の潜伏先へ派遣しました。この運動を指揮した個体は抵抗したため即時処分、構成員他加担者は現在で5000人を数えます。村落地帯は壊滅状態にあり、警察による死体の回収が続いています。屈強な素材が多いようで有用な遺伝子の発見に期待できそうです。しかし、腐乱し検査に利用できない素材も多いと報告があり食料と医薬品への転化が急がれます。作業員の人員補填のために死刑囚を食品転化工程に当てることを目下検討中です。その場合は作業終了後に機密保持のため死刑囚は即時処刑し、これも食料へ転化します。
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