第13話 天国か地獄か!?龍星軍のバカンス!!~前編~ (13)






意識が戻ったのは、意外と早かった。






「凛っ!!!」


「ごめんなさーい!!」






胸に感じる圧迫感。


続いて、肺呼吸が出来なくなる苦しさ。


耐え切れず、むせてしまった。







「ゲホ!ゴホゲホ!・・・・かはっ・・・・!」


「凛っ!!?」


「え・・・・?」






ボーとする意識の中、辺りを見渡す。


私を取り囲むように、沢山の海水浴客が見ていた。


その視界で、時々綺麗な髪の毛が横切った。






「凛ちゃん、無事でよかったぁー!!」


「凛たん、心配したぞ!?」


「凛道、この馬鹿者!おぼれている人を見つけた時、一番してはいかんことをお前はしたわけで―――――――!!」


「この馬鹿助!!結果オーライだったからよかったもんをよぉ~!!!?」


「・・・・モニカちゃん、烈司さん、獅子島さん、百鬼さん・・・・?」






私に抱き付き、背中をなで、首をつまみ、頭を掴んでくる4人のおかげで意識が戻って行く。






「あれ・・・?僕、どうして・・・」


「子供を助けておぼれたんだろうがっ!!!」


「ひゃっ!?」






耳元で大声がする。


ギョッとして声のする方を見れば―――――






「瑞希お兄ちゃん・・・・?」






好きな人がいた。






「ばっか野郎・・・・!」






私をきつく抱きしめていた。






「な、なんで・・・?」


「なんで、いきなり飛び込んだ!!?」





私を、自分の胸に押し付けながら彼が叫ぶ。





「おぼれた人を見かけたら、それが小さい子供でも、飛び込んで助けちゃダメなんだぞ!?知らないのか!?」


「瑞希、それは俺がすでに言ったセリフだ。」


「心配したぞ!?」


「瑞希、それも俺が言った。」


「無事だからよかったようなもんをなぁー!!」


「みーちゃん、それあたしが言った・・・」


「この馬鹿!!結果オーライだったからよかったもんを、最悪、お前は死んでたんだぞ、凛!!?」


「最後のセリフは俺様、言ってねぇなぁ~!?わははははは!」


「笑い事かボケ!!」



「そうですよ!」






瑞希お兄ちゃん達とは違う声が響く。






「大丈夫ですか?名前と、年は言えますか?」






そう言って出てきたのは、結構マッチョなさわやかなお兄さん。





「え?あ、どちら様で??」


「いいから、お答えしろ!!」


「い、言いますから怒らないで、瑞希お兄ちゃん!えーと、凛道蓮、15歳です。」


「ちょっと、この人差し指を見てもらえますか?」


「え?」


「動きに合わせて見て下さいね?」





そう言われ、右に動く指を目で追いかける。


それは上下左右と連続して続く。


指の動きに合わせてしばらく目を動かせば、人差し指を下げながらさわやかマッチョのお兄さんは言った。






「大丈夫みたいですね。」


「あの、いったいこれは・・・・?」


「ばか!!お前は、子供を助けに行って、自分もおぼれかけたんだよ!!」


「え!!?」






瑞希お兄ちゃんの言葉で思い出す。







(そうだ私は~~~~~!)






「あ、足を引っ張られておぼれかけて・・・!?」


「ああ、この辺りは海藻が多いですからね・・・ひっかかったんでしょうね。」


「え?」





そう言ったのは知らないお兄さん。


何者かというのも気になったが。






「ち、違います!あれは人の―――――――」






人の手だった。






それを海藻なんていうもんだから、反論したのだけど。






「違うか馬鹿!ライトセーバーの方が言うんだから間違いないだろう!?」





側にいた瑞希お兄ちゃんが私の言葉を否定した。




「ライトセーバー?」




聞き返せば、眉をひそめながら言われた。





「水難救助をする人達だ!」


「そ、そうでしたか・・・。」


「幸い、目に見える症状はないですが、念のために病院へ行って下さい。」




瑞希お兄ちゃんの言葉を受け、その人は私を見ながら言う。






「それから、素人がカンタンに飛び込んじゃいけませんよ?」


「でも、子供でしたし、早く助けないと・・・・」


「と思って助けに行って、死んでしまうケースが一番多いんですよ?いいですか、二度としちゃダメですよ!?」


「う、ご、ごめんなさい・・・」






怖い顔で怒られ、シュンとしぼむしかない私。



落ち込んだんだけど・・・・





「とはいえ、人命救助へのご協力、感謝いたします!」


「え?」


「君達が、女の子が波にさらわれる瞬間を遠くから見てくれていたおかげで、無事に助けることが出来ました。」


「あ、あの子!助かったんですか!?」


「今頃、病院についたころでしょう?君が気道確保の応急処置をしてくれたおかげで、助かりましたよ。」


「よかった・・・・!!」


「本当はしちゃいけないことだけど、1つの命が救われました。本当にありがとうございました!!」


「「「ありがとうございました!!」」」





さわやかマッチョに続き、彼と同じ水着をした人達が敬礼しながらお礼を言ってきた。





「そ、そんな、僕は、二次被害を出しかけてしまったのに・・・・」


「なに言ってんだ、坊主!よくやった!」


「女の子を救って偉いぞ!」


「両手で掲げてたから、守ってたの見てたんだぜ?」


「すごかったねぇ~僕?」


「最近の若い子は、感心だねぇ~」





そんな声と共に、周囲から拍手が上がる。







それで恥ずかしくなってうつむけば、それに気づいたいたお姉さんの1人が指摘する。






「あらあら~みんなで褒めるから、坊や、照れちゃったかなぁ~?」


「みたいだな~あはははは!」


「ははははは!!」




途端に、楽しそうな笑いが起こる。







「良い子だな~」


「謙虚だ。」


「立派だったぞ!」



「あ、ありがとうございます。」





ホッとしながら安堵したのだけど、その安心は長くは続かなかった。






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