第10話 天国か地獄か!?龍星軍のバカンス!!~前編~ (10)






「その~この中に恋人とか、いたりする?結婚・・・してないよね?」


「なんで、初対面の奴にそんなこと言わなきゃなんないんだよ?」


「こいつはフリーで未婚だぞ。」


「獅子島さん!?」


「伊織テメー!?なに、人の個人情報を~・・・!?」


「マジで!?やったー!」






獅子島さんの言葉を聞いた瞬間、両手を上げて万歳するパーマ男。






「いや~色男ぞろいのメンバーの中にいるもんだから、『姫』かなんかだと思っちゃってさ~!てっきり、彼氏がいるもんだと思ってたんだけど、よかったー!」


「姫・・・?」






(てか、彼氏って、まさか・・・・!!?)






「俺、スバルって言うんだ!このあたりじゃ、名の知れたサーファーでね~さっき、隣の弟さん?に、サーフィン教えてたよね?よかったら俺のサーファー仲間が代わりに教えるから~そのお礼ってわけじゃねぇけど、ちょっと親でもしようよ、お姉さん♪」


「今すぐ消えろ、クソ野郎・・・・!!」



(あああ・・・・やっぱり・・・!!)





間違いない。


この人、瑞希お兄ちゃんを・・・・







「誰がお姉ちゃんだこの野郎!?」





ガシッ!!



「ぐえ!?」





(女性だと間違えてる・・・・!!)






「だから言っただろう、凛たん。」






この光景に、私の左隣の烈司さんが小声で私に言う。






「瑞希は可愛い男の子じゃなくて、可愛い女の子と思われたから、ナンパされなかったんだよ。」


「そーゆーことですか・・・」


「えええええええええ!?お、おお、男!?」


「乳ねぇだろう!?のど見ろ、のど!股間もだ!」


「げ!?うわ・・・・ホントだ・・・!」


「マジか、スバル!?」


「た、玉あるの!?」


「ポイわ・・・!!ウソだろう~!?さっき見た時は、絶対に女だと・・・!!」


「誰が女だゴラ!!?」



ミシミシ!!


「げぇええ~!?」






嘆く相手の首を片腕でつかむと、血管が浮き出るぐらいの力で締め上げ始める。






「俺は男だ、ボケ!!ボードに乗れないように、足へし折ってやろうかこの野郎ぉぉぉぉぉ!?」


「どちらかといえば、首ですよ、お兄ちゃん!折れちゃう方は!ダメです、〆落しちゃダメ!」





いくら相手が悪くても、公衆の面前でそれはダメでしょう!?


急いで瑞希お兄ちゃんに飛びつき、とめに入る。






「やめたげて!許してあげてくださ~い!」


「凛。」


「そうだぞ、やめないか、乙女。」


「そうだよ、プリティーでキュートな子。」


「凛は、ともかく!伊織!モニカ!」


「ぐえ・・・・・や、やっぱり、ただの貧乳で、馬鹿力なだけじゃ・・・・!!」


「ほらみろっ!!テメーらのせいでまた言いだしたぞ!?誤解を招く発言すんじゃねぇぇぇ!!」


「だから、やめてあげてください~!」


「・・・・チッ!!」





私のお願いに、いまいましそうに舌打ちする瑞希お兄ちゃん。


乱暴に、放り投げるようにして有名なサーファーを床にたたきつけた。






ドスン!






「い、いてぇ~」


「大丈夫かよ、おい!?」


「めっちゃつえぇーじゃん!?」


「今すぐ消えろ。次は前歯飛ばすぞ・・・!?」


「「「ひぃいい!?」」」






瑞希お兄ちゃんの言葉で、ナンパした本人も仲間もおびえる。


そして、オロオロしながら叫ぶ。






「ば、ばっきゃろー!こっちだってお断りだ!紛らわしいんだよぉ~!」


「・・・・俺、声かけなくてよかった・・・・!」


「あれで男は詐欺だろう!?」


「や、やめろ!い、行こうぜ!」




「早く消えろっ!!」


「「「「ぎゃっ!!?」」」」






捨て台詞を吐いた男達に、ドスのきいた声で追い払う瑞希お兄ちゃん。




〔★瑞希は敵を撃破した★〕





「くっそ~!またかよ!!胸糞わりぃ!!」


「わはははははは!!よかったのかよ、瑞希姫!?あのままだましてれば、おごらせられたんじゃねぇーの~!?」


「その手があったな~皇助。」


「ふ・・・まさに悪女。」


「するなら、凛道がいないときに受けろよ、逆ナン。」


「受けるかっ!!この馬鹿共がぁ~~~~!!」


「って、また怒らせること言わないでくださいよ!!」






からかう身内を注意する。






「あ、うそうそ、ごめん!凛たん!」


「凛ちゃん、かるいジョークだぜ?」


「フン。間違えられる方が悪い。」


「わはははは!」


「くそ!凛に免じて、大人しくしてやらぁ!!」


「ほっ・・・」






それで、一度は沈下した瑞希お兄ちゃんの怒りだったけど・・・・






「うそ~あの子、男だったの~?」


「貧乳だと思ってたぁ~!」


「可愛いのにもったいないねー」



(えっ!?)






様子を見ていた他の客・・・女性たちが騒ぎ出す。







「こんのぉ・・・!!」








これで瑞希お兄ちゃんのこめかみに、青筋が出来たものだから――――――






「ちょっとそこの外野!!お姉さん達も!!大きなお世話です!!」


「えーなによ~ホントじゃん?」


「お肌ツルツルで、口とかリップしてるみたいだし~」


「本家の女の子顔負けだよねぇー?」



「あんのアマ共・・・!一言文句を・・・・!」


「絶対一言じゃすまない顔してますよ!?ダメです!相手にしちゃダメです!」


「だけど、凛!」


「ダメですって!瑞希お兄ちゃ~ん!」






こうして私の食事タイムは、瑞希お兄ちゃんをなだめることで終わったのでした。




〔★あわただしい食事だ★〕










好奇の目にさらされながら、足早にお店から出る。


晴れていた空も、いつの間にか、私達の心のように曇っていた。






「こりゃあ、ひと雨来るかもなー?」


「あの、獅子島さん、ご馳走様でした。僕はもちろん、全員、ご馳走して頂いて・・・」


「なに。株で作ったあぶく銭だ。気にするな。」


「それにしても、ひどいめにあったわねぇ~女からのナンパなんて、ありえなぁーい。」


「俺の方があり得ねぇよ!!くっそ!せっかく遊びに来たのに厄日だぜ!」


「わははははは!凛助は男に見られたのになぁ~!?」




(それもそれで、どうなんだろう・・・・)




〔★男装女子心は複雑だ★〕






「そんで、どーする?けっこー俺ら、周りから、女の子チェック入ってるみたいだぜ?」


「え?」






言われて気づく。


女の子ばかりのグループが、こちらを見ていることに。


同時に納得もできた。






(可愛い系の男の子と、男前と、モデル男子と、美形と、ワイルド系がそろってれば、無理もないか・・・・)




〔★キレイ(?)どころがそろっている★〕






「モニカがアドレスを受け取ったこともあるしな・・・俺のプライベートビーチに行くか?」


「え!?プライベートビーチまであるんですか!?」




(もしかして、もしかしなくても!)




「獅子島さんってお金持ちなんですか!?」


「フン、別に普通だろう。」


「東大生で元・副総長というだけでも普通じゃないです!」




〔★めったにない事例だ★〕






「やっぱ、そうなるよなぁ~伊織のビーチに行くか?」


「あたし反対!」


「俺様もだ!」


「え!?なぜです!?モニカちゃん、百鬼さん!?」





珍しく意見の合う2人に聞けば、声をそろえて言った。









「良い女の鑑賞が堂々と出来ないだろう!?」

「良い男の鑑賞が堂々と出来ないでしょう!?」









「・・・・・・・・・・・瑞希お兄ちゃん・・・・・・・・・」


「うん、言いたいことはわかる。どうする、凛?」


「え?このタイミングで、僕に決定権を下さるんですか?」


「そりゃあ、凛のための慰安旅行みたいなもんだからな~」



「凛ちゃーん!」


「り~ん~す~け~!」






そう語る瑞希お兄ちゃんの背後で、瞳を潤ませるオネェさんとガンを飛ばしてくるお兄さん。






(天使と悪魔か・・・)






とはいえ、公平に返事した方が良いよね?






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