第9話 天国か地獄か!?龍星軍のバカンス!!~前編~ (9)






思わぬ隠し武器を見せられ、ぼーぜんとする私の前で逆ナンは終了する。






「じゃあね、バイバーイ♪カッコいいお兄さん!」


「またね♪」


「絶対連絡してね♪」



「うんうん、ありがと♪」






必死で手を振る女子達に、モニカちゃんが優雅に手を振る。


そんな彼女達がいなくなったところで聞いた。






「なんですか、あれ?」


「ナンパぞ、凛?」






答えたのは、私の隣に座っていた瑞希お兄ちゃん。


円卓の席で、モニカちゃん達を親指でさしながら言った。






「こいつらといると、絶対女からナンパされんだよ。」


「瑞希たんは男からだけどなぁー」


「ぶっ殺すぞ、烈司!?」


「静かにしないか、小動ぶ・・・瑞希。目立つではないか。」


「俺を小規模な生き物呼ばわりするな!」


「ということでな~公の場では、モニカはカッコいいお兄さんなんだよ、凛たん。」


「気分は宝塚の男役だぜ♪イエーイ♪」


「そ、そうでしたか・・・」






烈司さんの説明に、ピースしながら舌を出すモニカちゃん。


それだけで、遠くの席に座っている別のお姉さんグループがモニカちゃんにスマホを向けているのが目に映った。






「あの・・・あちらの席の方に隠し撮りされてるみたいですけど・・・?」


「イエーイ、それはよくないな・・・。伊織、席を変えられないか?」


「移動するのがつかれる。」


「年寄りくさいわねん!?」


「モニカたーん、言葉遣い。」


「あん、じゃなくて、いけねぇ!そうだった・・・・ふっ・・・・」






キザに決めながら微笑むと、その顔で自分を隠し撮りしたグループを見るモニカちゃん。


軽く手を振れば、その席からきゃぁあ~!と黄色い悲鳴が上がる。






「モテますね・・・モニカちゃん・・・・」


「ふっ・・・女に騒がれるのも困ったもんだぜ・・・!」






知らない人が聞けばうぬぼれてるように聞こえるだろうけど、きっと違うと思う。


この人は本気で迷惑している、と。




〔★キレイなオネェさんは男が好きだ★〕






「けっ!!気に入らねぇー!」





そんなモニカちゃんに、彼女の隣の席の人が文句を言う。






「声かけられたモニカはわかるが、なんで烈司と伊織までお呼びがかかるんだよ!?」


「俺の感じゃ、お前みたいな肉食系はNGだったみたいだぞー?」


「俺でも、伊勢エビの殻ごと食うような相手に声はかけん。」


「くっそ!俺様の良さを見た目で決めやがってぇ~リアルで確かめもしねぇで決めつけやがってぇ~!?モニカ、連絡するなよ!」


「しないさ。」


「え!?しないんですか?」






モニカちゃんの返事を思わず聞き返す。






「連絡しないのに、連絡先を聞いたんですか!?」


「言ったじゃん、凛ちゃん?『字のキレイな女性が良い』って。これ見て、そう思う?」






個人情報の紙が書かれた紙を見せながら聞いてくるお姉さん。


でも・・・






「少なくとも、右側に書いた女性の字は達筆ですよ?」




お習字でもしているのか、キレイな字である。






「だから凛ちゃんは可愛いんだよねぇー♪」






そんな私に、ご機嫌な顔でモニカちゃんは言った。






「俺から『連絡する』なんて、『一言も言ってない』じゃないか?」


「あ!?」



そういうこと!?




(そういう言葉の駆け引きだった!?)






「モニカちゃん、頭よすぎます!」


「しー!声が大きい・・・・勝手に撮影してきた子達もこっちに来そうだから、早く食っちまおうぜ・・・・?」


「うっ。」






パチンとウィンクされ、ドキッとする。


芸能人のカッコいいシーンを見る時みたいなドキドキ。


余計なお世話だとわかっているけど・・・・




(本当にもったいないな・・・・)




〔★凛は残念さを感じている★〕





「惜しいな。それで心身が一致していれば、今頃バラ色の人生だったぞ、勘兵衛?」


「公共の場だから大人しくしといてやるが、次にその名で呼んだら、かき氷を口の中に突っ込むぞ伊織この野郎。」


「やめてください、2人共!」


「今のは伊織が悪い。モニカのフェロモンで女どもが寄ってくるのは仕方ねぇだろう?」


「瑞希お兄ちゃん。」


「ゆっくり食事できなくなったからって、八つ当たりしてんじゃねぇーぞ。」


「みーちゃん!」


「フン・・・」






私の一言よりも、瑞希お兄ちゃんの二言で大人しくなるお二人さん。





(ホント、瑞希お兄ちゃんって素敵・・・!)





私なんてまだまだね!


頑張ろう!




そう思ったら、疑問がわき起こった。






「どうして、瑞希お兄ちゃんは声をかけられなかったんだろう・・・」


「あん?俺?」


「だって!百鬼さん系の肉食獣でもないのに、誘われなかったのはおかしいですよ!」


「誰が肉食だ凛助!?野獣と言え!」


「そっちが褒め言葉なんですか!?いや、でも、本当に~僕はともかく、瑞希お兄ちゃんが声をかけられないっておかしいですよっ!」


「いや、俺に言われてもなぁ~」


「あ~・・・・そのことだけど凛たん、多分なぁー・・・」




「あのーちょっといいスか?」






烈司さんの言葉と知らない声がだぶる。






「ちょっとだけ、今いいかな?」


「え?」


「あん?」






いたのは、よく日焼けしたパーマ頭の男。


少し後ろには、連れらしい男達がニヤニヤしながらこっちを見てる。






「どちら様ですか?」


「いや、坊やには用はないんだよねぇ~用があるのは、右隣の子で~」


「なんだよ?」






目だけでチラチラと瑞希お兄ちゃんを見ながら聞くパーマ男。






「なんの用だよ?」


「いやいや!そう警戒しないで!ちょっと確認したいことがあって~」






ジロッとニラむ瑞希お兄ちゃんに、しろもどしながらパーマ男は言った。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る