第7話 天国か地獄か!?龍星軍のバカンス!!~前編~ (7)
「わかった!俺ら、もう一勝負してから行くわ!」
「すぐ追い付くから待っててね~凛ちゃん!」
「次も俺が一番だろう。」
「わははははは!」
「熱中しちゃってますね・・・」
「はははは!競争になれば、俺もそうなるわ。」
ポンポンと頭を軽く叩かれたのもよかったが、瑞希お兄ちゃんと2人きりになれることになったのが嬉しかった。
波に身を任せ、陸地へと近づいて行く。
程なくして砂地へと上がる。
荷物を置いているパラソルへともどる。
そこで私はゴーグルをサングラスに、瑞希お兄ちゃんはパーカーを着る。
パーカーのファスナーを首元まで上げながら言った。
「さーて、なんか飲むついでに、軽く食っとくか?」
「そうですね・・・ちょっとお腹がすいたかも・・・」
「でしたら、忍者食はいかがですかぁ?」
「「はい?」」
背後からの声に、思わず身構えて振り返れば――――――――――
「え!?忍者!?」
黒い生地と、短い丈の着物を着た女性が立っていた。
「な、なんで忍者が海に!?」
「うふふふ・・・・くノ一よ、坊や。」
ウィンクすると、手にしていた紙を差し出すキレイなお姉さん。
短い髪をアップしており、その首すじと口元のほくろが印象に残った。
「ただいま開店キャンペーンで、割引クーポンお配りしてます♪よかったら、お姉さんと一緒に来てね?」
「それ、俺に言ってんのかな、異性のお姉さん?」
「え!?・・・あ!?やだ、ごめんなさーい!お兄さんね・・・」
瑞希お兄ちゃんの言葉に、パーカー姿の彼の股間を見ながら誤魔化し笑いをするくノ一さん。
〔★アダルトな確認だった★〕
「てっきり、可愛い姉弟かと~!じゃ、じゃあ、よかったら、来てねぇ~」
そう言って私にチラシを渡すと、そそくさと去って行くセクシーなお姉さん。
私は瑞希お兄ちゃんと2人、微妙な空気で残される。
「・・・お、お兄ちゃん・・・」
「はははは・・・・俺、気にしてないから。」
「いえ、まだ何も聞いてませんが?」
「気にしてないって言ってるだろう!?」
「ご、ごめんなさーい!とはいえ、割引券ですよ!?せっかくだから~」
「うわぁ~ダイナマイト美人じゃん?」
「Cカップかぁー!?わはははははは!!」
「ぎゃあああー!?」
突然、両肩に何かが乗り、大きな声が耳に響く。
ビクッとしながら前進して、振り返ってみれば、やっぱりあの2人だった。
「烈司さん!百鬼さん!」
「モニカちゃんもいるわよー♪」
「うひゃ!?」
落ち着く間もなく、背後から抱きしめられ、思わず叫んでしまう。
「もぉ~みーちゃんてば、ダメよぉー?」
がっちりと私を抱きしめたまま、モニカちゃんが眉をハの字にしながら言う。
「いくら間違えられたからって、凛ちゃんに八つ当たりしないの♪うらやましいぞぉ♪」
「じゃあ、かわってみろやこの野郎!・・・早かったな?」
「そりゃあ~凛たんと遊びたいのは瑞希だけじゃないからな?」
「そうよぉ~今度はモニカちゃんが可愛がる番♪チュ♪」
「わっ!?」
「あ!?コラモニカ!こんなところで凛にセクハラすんな!」
「なによ~世間じゃオネェは公認的存在よぉ~」
「凛はノーマルな男だ!離せっての!」
「やーよ!みーちゃんばっかり、ず・る・い~」
「おいおい、お前ら。いい加減に~」
「何を騒いでる、小動物共。」
その声に合わせて、私の体がモニカちゃんか引き離される。
「チューチュー騒ぐんじゃない、お可愛らしい小動物2匹ととオネェさんよ。」
「獅子島さん!」
救いの手(?)を差し伸べてくれたのは、最後にやってきたラスボ・・・・初代メンバーの先輩。
「オネェはともかく、落ち着け小動物。」
「誰が小動物だ!?」
落ち着いて口調で言うと、怒る瑞希お兄ちゃんを見ることなく、私を見る獅子島さん。
私というよりも・・・・
(あ、違う。私じゃない。)
私が手にしたチラシを見ながら眼鏡の先輩は言った。
「『越後の龍』の呼び込みか。」
「えちごのりゅう?」
「凛道、上杉謙信(うえすぎけんしん)は知っているな?」
「え?戦国時代の武将ですよね?」
〔☆良い子のためのワンポイント解説☆〕
上杉謙信(うえすぎけんしん):織田信長が生きた戦国時代最強武将で「越後の龍」・「毘沙門天(びしゃもんてん)の化身」などの異名を持ち、義理人情に熱い武将として、たくさんのカッコいいお話を残した大名のことだよん☆彡
「そう、その謙信の配下の忍びが【軒猿(のきざる)】というのは知っているか?」
「いいえ、初耳で・・・あれ?」
でもどこかで、聞いたことが・・・呼んだことがあるような―――――――!?
「あ!?これだ!」
手にしたチラシを再度見ながら叫ぶ。
「ここに、『軒猿』って文字が入ってます!このチラシのお店・・・『越後の龍 軒猿店』とありますよ!?」
「そういうことだ。今、戦国ブームなのだろう?それで町おこしをしているらしい。その一つに、『越後の龍』という企業があってな。今の娘はそこの従業員だろう。ほら、あのように。」
「こんにちは~ニューオープンした軒猿店です~」
「ただいま、男女2名様を対象にサービス中です~」
「男性のお客様は本日、ドリンク無料サービスですよぉ~うふ♪」
その言葉通り、周りを言われて見渡せば、くノ一コスプレのお姉さん達が客引きをしていた。
それも男性中心で。
「あ・・・いつの間に。」
「商魂たくましいことだ。」
そんなのお姉さん達を冷めた目で見る獅子島さん。
「客寄せのためなら、ゆるキャラでも何でも使うか。忍者の方が外国人ウケがいい。使い方としては間違ってない。」
「そうですが・・・僕はちょっと・・・」
「あれ、凛は忍者嫌いなのか?」
「そうじゃないです!『西田くるみ』が活躍する『あっぱれ姫将軍シリーズ』好きですもん!ただ・・・・甲賀や伊賀なら知名度もありますが、の・・・のん・・・えーと・・・!」
「軒猿だ、凛道。ならば、覚えておけ。戦国史上、もっとも優秀な忍び集団といえば軒猿だ。」
「え?なぜです??」
「忍びは、裏方の仕事で、敵に知られてはいけない組織。その実態が現代まで謎のままということは、相当なものだと思わんか?」
「なるほど!わからない=優秀な忍びですものね!」
「ふ・・・我ら黒子ファイブと同じようなものだ。」
(それは違う気がする・・・・)
〔★思いっきりバレバレだ★〕
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