第6話 天国か地獄か!?龍星軍のバカンス!!~前編~ (6)
荷物を部屋に置き、着替えてからビーチへと向かった。
「わぁ~きれいな海ですね~」
「わはははは!まずは腹ごしらえだぜ!」
「準備運動と水分補給だ、馬鹿者。いくら馬鹿なお前でも、熱中症でどうにかなるぞ。」
「この分なら、夜の花火も楽しめそうだわ~」
「ついでに肝試しでもするか?」
「凛、こっちこい!はぐれるなよ。」
「あ、はい・・・・!」
私を気遣う言葉に合わせ、手が伸びてくる。
瑞希お兄ちゃんのキレイな手。
仕事でボロボロになっている働き者の手。
その手が私の手をつかむ。
ギュッ♪
にぎってくれた。
「あーん、みーちゃんばっかりずるい!」
「あまり目立つなよ、お前ら。」
「無理じゃねぇ?可愛いコンビだから?」
「わははははは!」
「誰が可愛いだ烈司この野郎!皇助も笑うな!」
(可愛いコンビ・・・・か。)
男の子同士でそれはアウトかもしれないけど、コンビと呼ばれるのは悪くない・・・・かも。
(コンビもいいけど、恋人同士も・・・・)
チラッと目だけで相手を見る。
私の好きな人は、幼馴染相手に怒っている。
からかわれているだけなのに、本気でお説教しているところも愛しい。
細マッチョでしなやかな身体は美しい。
風になびくサラサラの髪と、桜色の唇。
誰もが、瑞希お兄ちゃんを見て振り返る。
「ねぇ、あの人、可愛くない?」
「イケメンだよね~」
(ですよねぇ~!!)
まばゆい太陽の光の中、瑞希姿の瑞希お兄ちゃんがまぶしい・・・!
「りーん、どうした?目ぇ細めて?」
「あ、いえ・・・まぶしくて・・・!」
「じゃあ、ゴーグルやめて、サングラスにしろよ。ほら、貸してやるから。泳ぐまで、こっちにしとけ。」
「あ・・・すみません。」
海に来るということで、今回ばかりはシルキロールはやめた。
さすがに、口元にマスクは怪しい。
元々、顔の半分が隠れていれば、私だと判明しなければいいだけの話。
だから、目元を隠すためのゴーグルも用意してきた。
持っていたけど・・・瑞希お兄ちゃんにすすめられ、サングラスに切り替える。
(だって、瑞希お兄ちゃんが身につけていたものだもの♪)
〔★動機は不純だ★〕
好きな人が身に着けていたものなら、身に着けたいって思うのは乙女心じゃない?
「つーか、グラサンなら、五十嵐から借りてくればよかったのになぁ~たくさん持ってるんじゃねぇーの?」
そう言って笑いながら、私をからかう姿も、すてき・・・♪
「いや、ホントそうですね~」
渡されたサングラスをかければ言われた。
「けど、凛は意外だったな~」
「え?」
「それ。」
私を指さしながら瑞希お兄ちゃんは言う。
「凛、水着、着なかったからよ~」
胸キュン100%の笑顔で言った。
「サーフィン用のスーツで来るとは。波乗り得意なのか?」
「あ、あははははは!気がついたら、着て来ちゃってましたぁ~」
そうなんです。
私が女の子の体を隠すのに選んだ方法は―――――
(サラシを巻いた上から、サーファーさんが着るスーツを着ること!!)
これなら、全身タイツみたいに身体を隠せるもんねん!!
〔★いろいろツッコミどころが多い★〕
(ヤマトに相談してよかった。)
彼の勧めで、サーファー用の水着を着た。
これなら喉も、スーツで隠れてる。
海で一番大事な酸素を補給する場所を隠す必要がないから、呼吸もしやすいと・・・。
(ありがとう、ヤマト!なんだかんだで、私のこと考えてくれてる良い子だよね・・・)
〔★持つべきものは友達だ★〕
「凛にサーフィンの趣味があるとはなぁ~よくするのか?」
「趣味じゃないです。未経験です。」
「えっ!?それなのに、着てきたのか!?」
「え!?えーと、やりたい気持ちが抑えきれませんでしたので~。」
「ぷっ!あはははは!ホント、面白い奴だなぁ~」
爆笑しながら頭をなでられる。
「じゃあ、俺が教えてやるよ。」
「え!?瑞希お兄ちゃん出来るんですか!?」
「まぁな。ほら、行こうぜ。」
そう言いなら、私の手を引っ張る愛しい人。
「は・・・はい・・・!」
これで2人きりで、マンツーマンで~
「あーん、ずるいわよみーちゃん!」
「サーフィンなら俺もできるぜ、凛たん。」
「短時間で波乗りのコツを教えてやろう、凛道。」
「わはははは!ついでに、サーフィンガールナンパしようぜ~」
「みなさん!?」
全員ついてきた。
こうして、2人きりの夢は、あっさりと終了した
〔★短い夢だった★〕
◇
◇
◇
サーフボードの上に2人で乗って海面をただよう。
「大丈夫か、凛?」
「ゴホゴホ!へ、へーきです・・・!」
ヤマトの策を受け、成り行きでサーファースーツを着てきた私。
ヤマト監修(かんしゅう)の元、胸もしっかり抑え込み、良い感じの胸板にした。
もし、誤算があるとすれば―――――――
「その咳だと、絶対器官に入ってるぞ!ほら、無理するな。」
「は、はい・・・・」
(上手にサーフィンできないことなのよね・・・)
見るとやるとじゃ全然違っていた。
手取り足取り、瑞希お兄ちゃんがボディータッチしてくれたのはいいけど・・・
「乗れるまで、時間かかりそうだな~」
「バイクよりもですか?」
「相手は自然だからなぁ~」
ボードを浮き輪代わりにして、2人ならんでプカプカ浮きながら話す。
「でも、その自然相手に、他の皆さんは強いですね・・・・」
「イエ~イ!」
「ホーホホホホ!」
「フン・・・!」
「わーはっはっはっはっ!!」
「「「きゃあ~素敵~!!」」」
やまびこみたいに、こだましてくる声。
やり慣れているらしい他の先輩方は、お姉さん達の黄色い悲鳴と熱い視線の中、ボードを乗りこなしていた。
「まぁ、あいつら運動神経が良いからな・・・」
「みたいですね・・・」
私はそんな4人を、瑞希お兄ちゃんと2人で遠くから観察していた。
「つーか、凛はどうして、サーフィンしようと思ったんだ?」
「え!?えーと~」
さすがに、『胸を隠すためだけに着てます』とは言えず・・・
「カッコいいイメージでやってみたくて・・・」
「ぷっ!カッコつけが。」
ニヤリと笑われ、ぐしゃぐしゃと髪を撫でまわされる。
「凛は凛らしいままでいいんだぞ~?まだまだガキだな~中二病?」
「どうせ僕は、瑞希お兄ちゃんよりはガキですよぉー」
「ははは!すねるな、すねるな!ちょっと上がって休憩するか?」
「そうですね~のどがカラカラです。」
「おーい、お前ら!俺ら水分補給しにいくけど、どーする!?」
口元に手を当てて他の4人に呼びかければ、返事が返ってきた。
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