第4話 天国か地獄か!?龍星軍のバカンス!!~前編~ (4)
(あれから13回・・・・烈司さんが止めるまで、両頬に交互にチューしてくれたのよね・・・)
甘い記憶を思い出し、シルキロールで隠した口元がゆるむ。
「凛、楽しみだなぁ~海♪」
「はい!楽しみです♪」
「着いたら、即、泳ごうな~♪浮き輪で浮くのもいいかもなぁ~♪」
「はい!泳ぐのも、浮くのも~」
“あかんで!!”
浮かれかけた私の頭に、奴の顔と声が響く。
“わかってるとは思うが、あかんで、凛!?”
(・・・・・わかってるよ・・・・)
思い出したのは、甘い記憶だけじゃなかった。
◇
◇
◇
瑞希お兄ちゃんからの旅行のお誘いがあった日、私は真っ先に自慢した。
「瑞希はんと海ぃ~!?」
「えへへへ~そうなんですよ!」
クーラーの利いた部屋で、グラサンとカチューシャをしている友達に話した。
「ヤマトにも、お土産買ってきてあげますからね!」
「うはははは!わしゃぁ、凛の土産話の方が気になるわ~!」
私の言葉に、ゲラゲラ笑いながら答えるのが、五十嵐(ごじゅうあらし)ヤマト。
凛道蓮の正体を知る、唯一の親友でもあります。
「ほれ、飲み物!部屋の温度これぐらいでええか?」
「うん、ありがとう、ヤマト。」
学校が夏休みということもあり、ヤマトの家まで遊びに来ていました。
彼は一人暮らしなので、誰かを気にすることなく楽に話せます。
ただし、いわくつきの部屋なので、生きてる人間以外もいそうですが・・・・
「うはははは!しっかし、瑞希はんらと旅行かいなぁ~自分、家族にはどないゆーねん?」
「友達の家に勉強のお泊り会すると。」
「はぁ~菅原凛なら、『お勉強』のキーワードさえ言えば、何でも自由になんねんなぁー?」
「・・・・・・・まぁね。」
そう、龍星軍4代目総長・凛道蓮というのは仮の姿。
私の本当の正体は――――――――――
(あゆみが丘学園高等部1年B組所属のいじめられっ子・菅原凛、15歳よ!)
〔★むなしい解説だ★〕
「うははは~ほんまもんの姿の方が地味って、どないやろなぁー?」
「大きなお世話ですよ。」
自分でもそう思ってますっての!!
〔★自覚はしていた★〕
(とにかく!この旅行をきっかけに、瑞希お兄ちゃんと急接近して、ラブラブになる!!)
気合を入れている私に、ヤマトがいつもの調子で言ってきた。
「で?どないするんや?」
「え?」
「誘われたんはわかったけど、なんちゅーて断るんや?」
「断る!?」
「うはははは!またそうやって、とぼけてぇ~!ぶっちゃけ、行かへんのんやろう?」
「なに言ってんの!?」
このLOVEチャンスを冗談!?
馬鹿じゃないの!?
「行くに決まってるじゃないですか!?何でキャンセルしなきゃダメなんですか!?」
「何でって~」
怒る私に、眉をハの字にしたヤマトが言った。
「自分、男の子設定やけど、女の子やん?」
「それがなにか?」
「水着、どないすんねん?」
「え?」
水着?
「あのメンツで、凛1人だけ、海に入らへんわけにはいかんやろう?女の子の日を理由に断れば、それこそ女子やってバレるやんけ?」
「あぁああああああ!?」
(忘れてた!!)
バカなのは、私の方だった!?
〔★一番忘れてはいけないことだ★〕
言われて思い出した衝撃の事実。
一気に体中の血の気が引く。
叫ぶ。
「忘れてた!瑞希お兄ちゃんとのお泊りに気を取られ、忘れてましたよぉ~!!」
「うはははは!なんや、なんや?旅行に浮かれて忘れとったんかいなぁ~?」
「忘れてた!てか、抜け落ちてた!!」
「ぶっ!うははははははは!!そりゃあ~抜けとるのぉ~!わしゃてっきり、前みたいに、瑞希お兄ちゃんと入る気やったんかと思うたでー♪」
「なっ!?」
「おっ!リンゴアメみたいになってるでぇ~!?さては想像したんやなぁ~?すっけべぇー!」
「あんだとコラ!?入るかボケ!!」
〔★現実では入っている★〕
「でも、どうしよう!旅行には行きたいけど、海に入らないのは不自然だし・・・」
「山に変えてもらったらええんちゃうん?」
「瑞希お兄ちゃんは海に行きたがっているんですよ!?好きな人の要望に応えるのが、好感度アップの条件でしょう!?」
「せやけど、それで女の子ってバレて、自分はかまへんのかー?」
「かまうね!ダメだね!」
ということは・・・・・
「・・・・・・・あきらめるしかないの・・・・・?」
瑞希お兄ちゃんとの旅行。
好きな人との、初めてのお泊り旅行。
「あかんで!!」
情けなくつぶやいた瞬間、怒鳴られた。
「キャンセルするのはあかんで、凛!」
「ヤマト・・・・」
「このタイミングでバレちゃあかんと、わかってるとは思うが、あかんで、凛!?恋は、常に粘ったもん勝ちや!」
「ヤマト。」
「まぁ、わしは前回粘ってあかんかったけど、凛はあきらめたらあかん!凛みたいなええ子、幸せにならにゃあかんで!?」
「ヤマト・・・さっきと言ってること違わない・・・?」
「思春期はいろいろあるねん!ほなしゃーない!『あの手』で行こうや!」
「あの手?」
「せや!女の子やとバレないで、瑞希はんらと海に入れる方法やぁ~!」
「なにっ!!?そんな方法あるの!?」
グワッシッ!!
「がは!?」
思わず胸ぐらをつかめば、ヤマトの首が変な音を出す。
「ど、どーすればいいの!?どうすれば、バレないの!?ねぇ!?」
「ちょ、あかんあかん!苦し・・・!」
「どうすれば、瑞希お兄ちゃんの生の水着姿を間近で見られるの!?ねぇ!?」
「ちょ、思考が思春期男子になっとるけど、ええんかい・・・!?」
「いいから!どうすればいいのぉ~!?瑞希お兄ちゃんとお泊りしたいんですよぉ~!!」
「わしは、首絞めをやめてほしぃい~~~~~!!」
その後私が、ヤマトから『思春期男子が思いつく方法』を聞きだしたのは30分後のことだった。
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