第3話 天国か地獄か!?龍星軍のバカンス!!~前編~ (3)





これに彼は、私の前髪をかきあげながら笑う。






「悔しかったら、ヒヨコちゃんからドラゴンに進化してみろ♪で?行きたいところはあるのか?」


「はあ!?ポケモンでもそんな進化はしな・・・・・え?行きたいところ?」


「そう、旅行先。」






指先で、私の前髪をいじりながら瑞希お兄ちゃんが言う。






「凛の希望を第一にしたい。どこへ行きたいんだ?」


「え?海じゃなかったんです?」


「ん!?ん~・・・・いや、龍星軍の4代目になってから、トラブル続きで休めてないだろう?好きなところ連れて行ってやるよ。ただし、国内限定でな?」


「え・・・ええええ!?いいんですか!?」


「おうよ!一緒に行こうぜ!」


「瑞希お兄ちゃんと一緒・・・・!?」




これって、これって、これって!!




「瑞希お兄ちゃんと旅行!!?」



二人っきりで!!?




〔★凛のテンションは上がった★〕




「だからそう言ってるだろう~?金の心配もしなくていいぞ、未成年♪凛1人ぐれーなら、俺が金出してやるからな?」


「そ、そんな!悪いですよ、瑞希お兄ちゃんにお金出させるなんて・・・!」


「そうだぜー瑞希。水くせージャンか、俺らもいるのに?」


「へ?」




俺らもいる?




思わず、言った相手を見る。




「凛たんの分は、俺達も出すからよ。」


「烈司さん・・・・?」





てか、『俺達』とおっしゃいましたとよね?





「なんだよ、親切だなオメーら?つーか、モニカはわかるが、皇助は女以外には金出さないだろう?」


「ばっか!あれで皇助の奴、凛たんを気に入ってんだぜ~?伊織だってレトロにツンデレしてるしよぉ~まるわかりじゃんかよ?」


「あの~・・・・」






楽しそうに話す2人に恐る恐る聞く。







「旅行って・・・・誰々行くんですか・・・・?」


「だれって~」


「決まってんだろう!」






不思議そうにする烈司さんと瑞希お兄ちゃんが、私の好きな人が言った。






「凛と俺ら初代メンバーの6人で行くんだよ♪」




(えええええええええええええええええええ!?)



二人っきりじゃないの!?




〔★3倍の人数だ★〕





「とりあえず、凛が行きたい場所を決めさせて~」


「計画はモニカと伊織に立てさせるか?あいつら、そういうの好きだからな。」


「それだと伊織がらみの宿になんねぇか?金の面で楽させてもらっちゃ・・・悪いじゃんか?」


「つーても、その方が防犯面を気にしないで、リラックスできんだろう?俺ら、敵がいまだに多いだろう?」


「う!そ、それもそうだな・・・俺らはいいが、凛を巻き込んじまうのは良くないからなぁ~」


「あと、戦闘後の後始末を考えればその方が良いぞ。皇助は手加減をしないからな。」


「そうだった・・・!あいつのせいで、危うく退学になりかけたんだった・・・!!」


「じゃあ決まりだな。」


「そうだな。つーことで、凛!」






私の頭を、髪を撫でまわしながら瑞希お兄ちゃんは言った。






「『みんな』でどこへ旅行に行きたい?」


「・・・・・・・・・・」




どこって言われても・・・・




「どうした?遠慮はいらないんだぞ?」


「あ、いえ・・・聞いてた話とちがぅたので、その~」






瑞希お兄ちゃんと2人きりだったと思っていただけに、ちょっと・・・かなりショックだった私。


そんな私を見て、まっとうな瑞希お兄ちゃんが首をかしげる。






「え?俺、なんか言ったか?」


「いやいや、瑞希こそ天然過ぎんぞ?最初から今まで、さんざん『海に行きたい』って騒いでたじゃんか?それじゃねぇ?」


「え!?お、俺、そこまで言ってないよな、凛?」


「え!?いえ、その~」





言っていましたとは言いにくい。


海海と聞きすぎて、行先は海なものだと思っていた。


それが決まってないというなら、ここまでの瑞希お兄ちゃんのアピールはどうなるんだろう。






「わ、悪い悪い!気にしなくていいぜ、凛!俺のことはいいからさ~海は・・・・まぁ、行けそうなら、バイクをかっ飛ばしていけばいいし~はははは!」


「瑞希お兄ちゃん・・・」


「ただなぁ~気になる海ってのが、良い温泉旅館があるところで~海を見ながら湯につかれて、飯も最高で~♪いや、伊織のおかげで泊まれた場所なんだけど、良い湯でさ~♪銭湯とはまた違うんだよなぁ~・・・♪」






そう言って苦笑いする姿で察する。






(行きたいのに、私に遠慮して嘘ついてる!!)






〔★わかりやすかった★〕





そうとわかれば、私の出す答えも決まってる!!




「海が良いです!!」


「へ?」


「凛たん?」


「僕、海に行きたいです!!瑞希お兄ちゃんお勧めの海を見ながら入れる温泉へ!!」


「マジか凛!?」






言った瞬間、パアと顔を輝かせる瑞希お兄ちゃん。






「だよな~!?夏と言えば、海だよな!?」


「わ!?」






そう言うなり私を思いっきり抱きしめる愛しいお方。


助手席から体をひねらせ、それをしてのける彼はやはりすごいと思う。






「そうかそうか~♪凛がそこまで言うなら、海でいいなぁ~♪」


「あう・・・」






頬ずりされ、良い子良い子され、顔が熱くなる。


ハートも燃え上がる。






「も・・・・もちろんです!海でお願いします!!」


「よっしゃ!決定~!いいな、烈司!?」


「はいはい、お熱いことで~」






嬉しそうに私を抱きしめる瑞希お兄ちゃんに、呆れたような顔でタバコをくわえて火をつける烈司さん。




「んじゃー海に決定な。」


「おう!」


「は、はい・・・!」


「サンキュー凛!」





チュ♪





「ふぇ?」





やわらかい何かが、私の頬に触れる。






「あはははは~俺ら、気が合うな!」


(い・・・・・・・・今のは・・・・・!?)




「楽しみだな~海!凛は、良い子良い子♪」




チュ、チュ、チュ♪




(ふひゃあああああああああああ!?)






ま、間違いない!!



私の両頬に、瑞希お兄ちゃんの―――――――






(唇がふれた!?)



いや、押し付けられた!?



「ちゅー・・・・!?」






(チューされたよぉぉぉ!!)





酔ってないのに!


事故も起きてないのに!!






(自主的にキスしてくれた~~~~~~!!?)




〔★奇跡が起きた★〕




「おーおー、いつから、モニカのモノマネはじめたんだよ、瑞希~?ありがとうのチューかよ~?」


「たりめぇーだよ、ばーか♪」


「で、ですよねぇ~~~~~~~!!?」




(びっくりした! そう烈司さんが言ってくれなかったら、強烈な幻覚だと思いこむところだった!!)




〔★それだけ嬉しいらしい★〕




「マジで凛は良い子だなぁ~♪よしよし!」


「そ、そんなぁ~・・・えへへ・・・♪」




その後、瑞希お兄ちゃんからの感謝は、しばらく続いたのだった。







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