第5話 神に選ばれた大聖女
「はっ……?」
いきなりの言葉に目が点になる。
「お前、なんで俺が聖騎士になったと思ってるんだ?聖女は聖騎士としか結ばれないからわざわざ聖騎士になって今まで頑張ってきたんだろう?先日の魔物討伐の功績が認められてようやく陛下からお許しが出たから、早速お前に結婚を申し込みにきたんだよ」
「そ、そんなの、聞いてない……」
「いや、小さいころさんざん『ハルのお嫁さんになってあげる』って言ってたの忘れたのか?」
確かに言っていた。言っていたけど、そんなの聖女として選ばれる前の話だ。
「え、え、え。いや、言ってたけども」
「花冠を頭にのっけて二人きりで結婚式もしたよな?そのときお前、初めて光の魔法を使ったの、覚えてない?」
ああ、そうだった。神様に祈ったのだ。どうか二人を祝福して欲しいと。夫婦として認めて欲しいと。そうしたらまばゆい光が溢れて、慌てて駆け付けた大人たちにあれよあれよという間に教会に連れて行かれ、聖女として認定を受けたのだ。その後ラインハルトもまた魔力を発現し、追いかけるようにして聖騎士になり、セレスティーネのもとに現れた。
「お前知ってる?聖騎士って聖女の祝福を受けたやつだけがなれるんだぜ?あのときお前が俺を生涯の伴侶として選んで、俺がそれを受け入れたことで、俺は魔力を発現したんだ」
「へ?そ、そうなの?」
「ああ。あの瞬間頭の中に『我がいとし子を生涯かけて守る力を授けよう』って声が聞こえたからな。俺の力は本来お前を護るためのものなんだよ」
「し、知らなかった……」
ずっと自分は落ちこぼれの聖女だと思っていたのだ。神様の存在なんて考えたこともなかった。全くダメな聖女である。
「お前は間違いなく神に選ばれた大聖女で、俺はお前に選ばれた聖騎士だ」
ちょっと照れたように微笑むラインハルトの眩しい笑顔にくらくらする。
「そ、それじゃあ、私がハルのお嫁さんになるのね?」
「ああ。セレス、どうか俺と結婚してくれ。この時を待っていた。ずっと、お前だけを見つめてきたんだ。愛してる」
「ハルっ!」
セレスティーネは片手に骨付き肉を握りしめたままラインハルトに抱き着いた。ラインハルトもまた、肉を片手に酒瓶を片手にした状態でセレスティーネを優しく抱きしめてくれる。
「う、うわーん、嬉しいよぉ。もう、もう大聖女ごっこやめていいんだよね?一緒に領地に連れて行ってくれるんだよねっ!」
「ああ。今までよく頑張ったな。これからは二人でのんびり暮らそう」
「おいしいもの、いっぱい食べたい!」
「よしよし、俺がいっぱい食わせてやるからな」
「ハル大好き!」
「俺も愛してるよ」
歓喜の涙を流すセレスティーネを優しく見つめるラインハルト。セレスティーネの心は喜びに満ち溢れていた。
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