第4話 ラインハルトの結婚
「えっ!そうなの?」
予想もしていなかった話に思わず声を上げる。
「ああ、先日の魔物討伐の功績が認められて、正式に伯爵家を継ぐことが認められたんだ。親父も早く引退したがってたしな。聖騎士としての仕事もあるから、今後は王都と領地を行ったり来たりする生活になると思う」
セレスティーネは幼いころラインハルトとともに駆け回った領地を懐かしく思い出す。咲き乱れる花の香、頬をなぞる優しい海風。何よりおいしい海の幸……。海が近いので特に新鮮な魚を使った料理は絶品だった。ああ、おいしい魚が食べたい……。
「ああ、いいわね……私も帰りたいなあ……」
おいしい魚料理に想いを馳せるセレスティーネ。
が、続いた言葉に息をのんだ。
「で、当主になるにあたって、嫁さん、貰わないといけないんだよね」
「そ、そんなっ!」
セレスティーネは絶望した。愛とか恋とか一番無縁そうなラインハルトでさえ私より先に結婚してしまうのだと。ラインハルトは太陽のように輝く黄金の髪に紺碧の瞳を持つ美丈夫だが、今まで浮いた噂一つ聞いたことがない。そのため、突然の結婚報告に戸惑いが隠せなかった。なんとなく、このままずっと二人でいられるものだと思っていた。
セレスティーネだって年頃の娘だ。自分の恋愛や結婚に興味がないわけではない。しかし、大聖女という立場から、それが叶えられないかもしれないと半ばあきらめてもいた。それでも、ラインハルトがそばにいてくれるなら、それでいいかもしれないと思っていたのだ。
「……おめでとう。ハルの結婚式はいつもよりはりきって光らせてあげる」
「そうしてくれると嬉しいな」
嬉しそうに微笑むラインハルトに胸が締め付けられるような痛みを感じた。
(ハルが、結婚、かあ……)
もしいつか、自分が結婚することがあったなら、相手はラインハルトがいい。小さいころからずっとそう思っていた。知らず知らずのうちに目に涙が浮かぶ。
(いけない、ちゃんとお祝いしてあげなくっちゃ)
「で、その幸せな花嫁は誰なの?私の知ってる人かしら」
努めて明るい声を出すとラインハルトは不思議そうに顔を傾けた。
「そんなのお前に決まってるだろ?」
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