ヒトカスはさあ・・・
※第四話の予備知識
トッポ・クルシュ(黒エルフ)
森の間伐作業にハマり、おおよそ10年ほど没頭
見事なブナとマツの森を完成
天然モノのマツタケの量産にご満悦
だがスギ、テメーはダメだ。スギ死すべし慈悲はない
そのついでにあちこちにログハウスを増産したが最近コボルトが住み着いた
エメル・ラジャン(白エルフ)
トッポの間伐作業に粘着するついでに魔法のキノコの大量生産にハマる
エルフたばこに匹敵するかそれ以上の威力があるとご満悦
彼ピに強請り錬金術にて濃縮ポーション化に成功
この高貴なエルフはもう駄目かもわからんね
アルバート・ハーレー
ヒトの国ルーン王国の第二王子
長身で赤毛の美丈夫で年齢は28歳。
とある一件でトッポに命を救われ心の友と思っている
第一王子ルークが継承権第一位なんだし、父王はさっさと自分を嫡廃してくれと密かに思っている。
だがルークは病弱のため、父王は水面下で着々と立太子の準備をしていることを彼は知らない
ちなみにルークは優秀な錬金術師を抱えており、病気に見えなくもない効果のあるポーションを作れることをルークは知らない
アリス・ハーレー(14歳)
ヒトの国ルーン王国の王女
王家は男系の傾向があり、唯一の姫
純粋培養の箱入り娘かと思えばそうではなく、智謀に長けた腹黒
時折城から逃げ出しどこかに消えるアルバートの後をこっそり付け回し、その際に少年みたいな美エルフに遭遇しガチ恋
隙あらば愛しの黒エルフきゅんに接触しようとするヤベー奴
既にモデルの様なスレンダーな身体に愛らしい顔を持つが壊滅的に胸が平たい
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「トッポ、そろそろ首を縦にふってくれんか?」
「そうですっ! わたくしの婚約者になるべきですっ!」
「アリス、お前が喋るとややこしいから黙れ」
苦虫をかみつぶしたような顔でムッツリと黙るトッポと、いかにも騎士! って感じの赤毛の益荒男、そしてその横にいるなんかちんまい少女は満面の笑み。
だが益荒男ことルーン王国第二王子が「パチン」と指を鳴らすと、どこからか鎧騎士がわらわらと現れアリスを担ぎ上げると静かに立ち去った。
「いや、別にいいよ。薬は作るよ。けどパーティーとかそう言うのは嫌なんだよなあ」
「そうですわっ! トッポは私の婚約者ですのっ! こんな合法ショタを貴族子女と言う名の獣の群れに投げ込むなんてっ……ちょ、なんでっ、ドワーフが!? ぬ、ヌワー!?」
トッポの横で喚き始めた白いのにイラっとしたのか、トッポが指を鳴らすとどこからかドワーフが現れ、白いのを担ぎ上げると静かに立ち去った。
顔を見合わせてため息をつくトッポとアルバート。
「しかしだな、私はお前に施されるばかりではないか」
「この森というか、南部の密林をエルフにくれただろ? それで充分だろうに」
実際エルフ……と言うよりトッポがかつて挙げた功績が大きすぎた結果、アルバートの父親、つまりこの国の王陛下は手つかずだった大陸南部の森林地帯全てを王家の直轄地とした上で、これまで森を適切に管理してきたことをエルフの功績とでっち上げて下賜したのだ。
なんでそんな回りくどい事をしたかと言えば、それは偏にトッポの功績が、とてもじゃないが表ざたに出来ないセンシティブな内容だからだ。
とは言えこれは王家の善意だけと言う訳でもなく、政治的な打算もある。
なにせ南部の大森林は凶悪な魔獣が闊歩する危険地帯で、人を動員して開発しようにも被害が大きく、費用対効果を考えるとどう見ても大赤字なのだ。
けれど森から出てくる魔獣が周囲の村を襲ったりする。
なら治安維持の意味もこめ、エルフにアウトソーシングしたと思えば、ヒトもエルフも両得だったのである。
なにせエルフを筆頭に亜人種とヒトカスが呼んでいる者たちは軒並みヤベー戦闘力を備えている為、この程度の森など歯牙にもかけない。
さて、話は少し遡る。
今から丁度10年前の話だ。
その頃、アルバートは王国騎士団の見習い騎士としてシゴかれていた。
王家の習いと言うか、王位継承権を持つ王子は、10代の頃に文武いずれかで何らかの功績を挙げるという義務がある。
さてトッポの功績だが具体的な話をしよう
。
まずはこの当時、騎士団の軍事訓練の一環で森の魔獣討伐に森へ赴いたアルバートご一行。
そこに冬眠から冷めたばかりのベヒモスに出くわし、あっという間に騎士団は壊滅。
這う這うの体で逃げ出した。
そこに通りかかったトッポ。
なんでもベヒモスが生息する地域には、とても刺激的な薬の材料となる岩キノコが群生している。
それを収穫に来たらしい。
ところがベヒモスが暴れた事で、岩キノコが生えている岩山が崩壊。
とんだ徒労に終わった事にブチ切れたトッポが、同じく薬を楽しみにしていた大精霊と一緒に大暴れし、ベヒモスを倒した。
腹いせなのか、全身を細かくバラして素材にしたほどだ。
そして怒りも収まった頃、漸く彼はアルバート達に気が付いた。
トッポは「ナニよ。おめーらも巻き込まれたんか……災難やね。ほらこれ飲めや」と彼が作ったポーションを無理やり飲ませた。
ヒトカスの作るポーションとは格が違うエルフのポーションであるからして、死にかかっていた騎士団は全員復活。
そのまま帰ったら恰好つかんべ……とトッポは「これもってけ」とベヒモスの素材をくれてやった。
その代わりに死にかかってた馬数頭を対価に貰った。
もちろんそれもポーションで治し、元気にして連れ帰ったが。
その馬はトッポの管理地に作った牧場で順調に繁殖させている。
こうして確実に死んでいたアルバートたちのピンチを気まぐれにトッポが救ったのだ。
でもこれだけじゃない。
どうもベヒモスのヤバさにアルバートはPTSDを患い、あろうことか髪が抜け落ちた。
それはそれは見事なハゲっぷりである。
彼は婚約者である公爵家令嬢を溺愛していて、このハゲを晒すとか無理だろと落ち込んだ。
その時にふと思い出したのだ。
あの破天荒で風変わりなエルフの事を。
とんでもない効果のポーションで助けてくれた……ならあるいは? そう一縷の望みをかけて森に単身向かったアルバート。
一応トッポとの邂逅の際に、どの辺に住んでるという話は聞いていた。
まあ彼の領域に入った途端、精霊たちが気が付くのでトッポの方から森の際まで出迎えたのだが。
そして相談をすると、今度は肉が美味い牛をくれるならいいよと言うので、王家御用達の最高級の肉牛を50頭で商談が纏まった。
アルバートはおもむろに薬を取り出したトッポにそれを頭にぶっかけられ、物の10分でフッサフサに復活。
我、終生の友を得たり……そう噛みしめつつ落涙した。
それを聞いた王陛下ジークフリート。
アルバート経由でとある薬をトッポに依頼。
トッポは肉が美味い豚を要求。
陛下は最高級の王家御用達の高級豚を100頭用意した。
こうして陛下のインポテンツが治ったのである。
アルバートの命を救ったまではいい。
だがハゲとインポはダメだ。
とてもじゃないがこんな話が表ざたになれば、流石の王国民も苦笑いであろう。
賢王と名高いジークフリートがアラフィフでインポ……言えるわけがない。
ちなみにこの薬のお陰で姫が二人増えたのは余談である。
とまあこんなやりとりがあり、トッポを一方的に兄の様に慕う様になったアルバートが、時折公務の息抜きを兼ねて来訪するのだ。
その際は騎士団の軍事訓練が大義名分である。
とは言え騎士たちもまんざらでもないのだ。
先ほどドワーフがわらわらと現れたが、彼らは騎士達相手の商売のためにここにいるのだ。
アルバートはトッポに会いに来る時、2か月前ほどに先ぶれを出す。
それを確認したトッポはドワーフを呼ぶという流れだ。
ドワーフが作る武具は優秀だが、彼らは作ることが目的で、それを売ろうという気はあまりない。
ドワーフの鉱山街にわざわざやってきて売ってくれ! と言う奇特な奴には売るが、逆に言うとそれで終了なのだ。
しかし武具は流れ流れてヒトカスの街にも巡ってくる。
当然プレミア価格になるのだ。
なのでトッポのコネで呼んでもらい、騎士たちは直接彼らから購入するのだ。
ドワーフは無類の酒好き。
それも喉が裂ける程に強い酒精がある酒が良い。
騎士団は大量の荷馬車に蒸留酒の樽を満載でやってくる。
これにはドワーフもにっこりである。
ただ金だけの取引なら絶対に来なかったろう。
これはトッポのアドバイスである。
そして今回のアルバートは、ハゲ治療薬のオーダーである。
王国貴族にはハゲが多い。
そんな諸侯を懐柔するために、陛下はハゲ薬を下賜する。
諸侯はニッコニコで忠誠を預ける。
もはやトッポ印の特殊ポーションはオーパーツ扱いである。
いつもなら家畜を対価に貰うのだが、現在のトッポの森は、住み着いたコボルドさん達が畑をやったり畜産をしたりと開拓が進んでいる。
彼らは小柄な人型ワンコだが、犬の習性と同様に、順位付けした社会を形成する。
そして彼らはトッポをリーダーと見ているらしく、彼が喜ぶことを頑張って褒められる事を至上の悦びに感じるらしい。なにより彼らはとても働き者だ。
トッポは前世から犬派なので、コボルトたちが頑張ってると顔面崩壊させて撫でまくる。
結果、森の奥が開拓され、広大な農地が生まれ、家畜は大量に増えた。
ゆえにもうその手の対価はいらないのだ。
だがヒトカスの国で使う金を大量に貰ってもバスタブに入れて成金ムーブを楽しむ位にしか使えない。
だから今回はロハでいいよとトッポは言うのだが、一方的に得しかしてないと感じているアルバートは心苦しいらしい。
莫逆の友と思っている相手に借りてばかりは嫌らしい。
そこに見た目ショタエルフにほれ込んだアリスが結婚を目論むも、悲しいかなトッポの性癖は最低でもCカップ以上の胸なので、アリス姫はアウトである。
もちろんヒトカスとエルフの寿命の差があるから、結婚自体あり得ないのだが。
「ま、たまにこうして酒でも付き合えや。どうせお前、先に死ぬんだし」
トッポがアルバートの杯に酒を注ぎながらぶっきらぼうにそう言った。
珍しくセンチメンタルな気分だったようだ。
「ああ、また来るよ」
そうしてイケメンスマイルを返すアルバート。
元ハゲの癖に絵になる男であった。
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