第13話 いや、途中いきなりどうした?

 市販のホットケーキミックスを使っているからといって侮れない。

 甘さが控えめになっていて、とても食べやすい味だ。

 俺が夢中でホットケーキを食べている間、母さんはニコニコしながら俺の事を見つめていた。

 そして、俺が最後の一切れを飲み込んだところで、母さんはゆっくりと口を開いた。


「ねえ、悠真。話したいことがあるんじゃない?」


「……やっぱりバレたか」


「そりゃ分かるよ。私だって、あなたの母親だからね」


「そっか」


「でも、今は無理して言わなくてもいいよ。いつか、自然に言えるようになったら教えてくれればいい。あなたのペースで」


「ありがとう、母さん」


 俺が感謝の言葉を伝えると、母さんは優しい表情で頭を撫でてくれた。

 その手つきがすごく優しくて温かく感じた。

 それからしばらくすると、俺はソファの上で横になっていた。

 何となくだが、眠くなってきた気がする……。

 まだ寝たくないと思いつつも、睡魔には抗えず、瞼が落ちてくる。

 そして、そのまま眠りにつくのであった。

 翌日。今日は美月さんの家で勉強会をする日である。

 昨夜、美月さんから連絡があり、


「今日、私の家に来てくれないかな? 悠真君と一緒に勉強したくて」


 と言われたのだ。


「おはようございます」


「お、来たな、悠真君」


「おはよう、悠真君」


 俺が美月さんの家のインターホンを鳴らすと、すぐに美月さんのお父さんが出迎えてくれた。


「悠真君。今日は美月の部屋に案内しよう」


「美月さんの部屋ですか?」


「ああ。美月も悠真君が来るのを待っているはずだ」


「分かりました。お邪魔します」


 美月さんのお部屋か。

 美月さんはどんなところに住んでいるのだろうか。

 美月さんとお父さんの後をついていくと、二階に上がっていく。

 階段を上り終えると、そこには廊下が広がっていた。

 美月さんの家には何度か来ているが、美月さんの部屋に行くのは初めてなので緊張してしまう。

 美月さんの部屋の扉の前に立つと、美月さんのお父さんがこちらを振り向いてきた。


 俺が無言でうなずくと、美月さんも同じようにうなずいた。


「じゃあ、入るぞ」


「はい」


「うん」


 俺と美月さんが返事をして、扉が開かれた。

 扉の向こうにあったのは、綺麗な水色のカーテンやベッドカバー、クッションなどが置かれている女の子らしい雰囲気の部屋だった。


「悠真君。来てきてくれてありがとうね」


「いえいえ。それで、俺に見せたかったものというのは?」


 俺が尋ねると、美月さんはクスッと笑う。


「それはね……これだよ!」


 そう言いながら、美月さんは自分のスマホをこちらに向ける。

 すると、画面に映し出されたのは——料理をしている俺の姿だった。

 あれ? この写真は確か……

 俺は目を丸くしながら、隣にいる美月さんを見る。

 すると、彼女はイタズラっぽい笑みを浮かべていた。

 そういえば、前に美月さんが送ってくれた写真を消さなかったんだっけ。

 あの時は、美月さんから「消しちゃダメだからね」と言われていたけど。


「ふふっ。私が撮った悠真君の写真の中でもお気に入りの写真なんだ」


「……」


「悠真君?」


「あぁ、ごめんなさい。ちょっとボーっとしちゃって」


「もう。しっかりしてよね」


「すみません」


「まあまあ。それよりも、早く料理を食べようじゃないか」


「えっ、父さんが作ったんですか!?」


「もちろんだとも」


「へぇー、凄いですね。楽しみです!」


 俺はワクワクしながらそう言ったのだが……この後、俺は自分の発言に後悔することになるとは思わなかったのであった。

 *

 ***

 あとがき お読みいただきありがとうございます!

(2/28まで毎日更新予定)

 次回は悠真の作ったお菓子が食べられます(笑)

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 テーブルの上に並べられているのはチョコレートケーキ、チーズスフレ、フルーツタルトなどの様々な種類のスイーツたち。

 どれも美味しそうだ。


「おおっ、これは全部悠真君が作ってきたのか?」


「はい。といっても、ほとんど母さんが手伝ってくれたのですが……」


「それでもすごいよ。それにしても、こんなにもたくさんの種類を作るなんて大変だったんじゃないか?」


「まあ、確かに作るのは少し面倒くさかったですけど、楽しかったですよ」


 俺は苦笑いをしながら言うと、美月さんが微笑む。

 ちなみに、美月さんはモンブラン、俺はショートケーキを作った。

 そして、俺たちが話している間も、美月さんのお父さんは黙々とスイーツを口に運んでいた。

 そんなにたくさん食べると糖尿病になりそうな気がするんだけど……。

 ただ、美月さんが嬉しそうにしているので、気にしないことにした。


「ん~、おいひぃ」


「良かったね、美月」


「うん!」


 美月さんの笑顔を見て、美月さんのお父さんは優しい表情になる。

 美月さんのお父さんも、美月さんのことが大好きなんだろうな。

 美月さんのお父さんも甘いものが好きなようだから、今度、うちの母さんと一緒に洋菓子店巡りでもしようかな。

 母さんも甘いもの好きだし。

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