第9話 美月周りの話がごちゃごちゃしてきた。

 私は怒りのあまり、拳を強く握り締めた。

 しかし、武一さんの怒りとは裏腹に、刑事は落ち着いた口調で話す。


「落ち着いてください。私は彼を責めようと思っているわけではないんです。むしろ、同情しているくらいですよ」


「何だと?」


「いい加減、自分の息子が邪魔になったんでしょう。それで殺したんです」


「ふざけるな! そんな理由で人殺しができるわけがない!」


「まあ、普通ならそう思うでしょうね。ですが、残念ながら現実に起きてしまった事です。受け入れるしかないでしょう」


「ぐっ……」


 武一さんは悔しそうな表情を浮かべた後、黙り込んでしまう。

 一方、私は刑事に対して質問をした。

 どうしても確認しておきたい事があったのだ。

 それは光輝を殺した犯人の事である。

 一体、誰が犯人なのか知りたかった。

 しかし、刑事は首を横に振る。

 どうやら、教えてくれるつもりはないらしい。

 仕方ないので、別の話題に切り替える事にした。


「あの……お願いがあるのですけが……美月さんを探してくださいませんか?」


「美月さん……確か、光輝社長の一人娘でしたよね」


「はい」


「分かりました。全力で探しましょう」


「ありがとうございます」


 刑事の協力を得た事で、少しだけ希望が見えてきた気がする。

 後は美月さんを見つけるだけだ。

 だが、美月さんの行方については全く見当もついていない。

 私は刑事に尋ねた。


「美月さんの特徴は覚えていますか?」


「そうですね……。背丈は150センチほどで、年齢は10代半ばといったところでしょうか」


 美月さんの身長なら覚えている。

 彼女の特徴と一致するはずだ。

 ただ、見た目だけで判断するのは難しい。

 やはり、実際に会ってみないと分からないだろう。

 それから私達は美月さんの捜索を始めた。

 まずは美月さんが行きそうな場所を重点的に探す。

 そして、聞き込みをしたり、SNSを使って情報を集めたりした。

 しかし、一向に見つかる気配はない。

 それでも、私達は必死になって美月さんを捜す。

 しかし、結局見つからなかった。

 どうすればいいのだろう。


「美月さん……」


 私は絶望していた。

 まさか、こんな事になるとは思わなかったのだ。


「大丈夫か?」


 武一さんは心配してくれているが、正直言って何も答える気にならなかった。

 もう諦めるべきなのかもしれない。

 そう思った時だった。


「あれ? 皆瀬みなせさん?」


 背後から声をかけられたので振り返ると、そこにはスーツを着た男性が立っていた。

 誰だろうか?

 見た感じ、刑事ではないようだ。

 とりあえず、返事をしてみる。

 すると、意外な答えが返ってきた。

 その男は、光輝の元秘書だという。

 つまり、私達にとっては味方のような存在だ。

 私は彼に事情を説明した後、美月さんについて尋ねる。

 すると、彼は予想外の言葉を発してきた。

 なんと、美月さんが行方不明になったという。


「そんな馬鹿な!? 美月さんがいなくなったなんて嘘です!」


 私は思わず叫んだ。


「いえ、事実です」


 彼は冷静に話した後、さらに衝撃的な発言をした。


「実は……私と美月さんは不倫関係にありまして」


「えっ!?」


 私は耳を疑った。

 美月さんとこの男が不倫関係にあったなんて、想像すらしていなかったからだ。

 一方、美月さんと付き合っているという男性は、話を続ける。

 どうやら、美月さんと知り合ったきっかけは合コンのようだった。

 そこで意気投合し、何度かデートを重ねていたらしい。

 しかし、ある日を境に急に連絡が取れなくなったのだという。

 最初は仕事が忙しいのかと思っていたが、いくら待っても連絡が来ない。

 不安になった男性は、美月さんの自宅を訪れた。

 しかし、彼女はいなかった。


「それで、美月さんがどこにいるのか分かりますか?」


 私が質問すると、彼は首を横に振った。


「それが……分からないんです。会社にも行ってみたのですが、無断欠勤をしているようで」


「そうですか……」


「ただ、最近様子がおかしかったんですよね。何か悩んでいるような素振りを見せていましたし……」


「悩みですか?」


「はい。それに、心当たりもあるんです」


「それは何ですか?」


 私は思わず身を乗り出した。

 すると、彼の口から驚くべき言葉が出てくる。

 それは……光輝の事件に関するものだった。

 どうやら、美月さんは光輝の事件について調べていたという。

 しかし、美月さんは警察には頼らず、自分で解決しようとしていた。

 その結果、彼女は何者かによって連れ去られてしまったのだ。


「な、何だって!?」


 武一さんは驚きの声を上げた。

 無理もない。

 美月さんが誘拐されたという事実を聞かされたのだから。


「本当なのか?」


「はい。先ほど警察の方から、そう聞かされました。間違いありません」


「くそっ……」


 武一さんは悔しそうな表情を浮かべた。

 一方、私はある疑問を抱く。

 どうして、警察は美月さんが誘拐された事を隠したのだろうか?

  確かに、犯人からの要求がなければ公表しない方がいいのかもしれない。

 だが、光輝の事件を捜査している以上、美月さんの居場所を突き止める事は可能だったはずだ。

 それなのに、何故……?

 私は刑事に対して質問をした。

 すると、刑事は首を横に振る。

 どうやら、理由は教えてくれないようだ。

 私は諦め、次の質問をする。

 美月さんの誘拐に、光輝は関わっているのだろうか?

 もし関わっていたとしたら、一体何を企んでいたのだろうか?

 刑事はその質問に対して、意外な答えを口にした。

 それは……美月さんを殺すつもりだったのではないかというものだ。

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