すこし不思議で、すこし明るい、はじまりの予感
- ★★★ Excellent!!!
クロちゃんこと石黒さんは、すこし不思議な女の子。
本や雑誌はたくさん読むけど、「空気が読めない」彼女には、他人の気持ちを察することがむずかしく、他人との距離の取り方も「読み間違えて」ばかりいる。
「空が青いのはレイリー散乱です」
まわりの状況とほぼ無関係に繰り返されるこのフレーズが、どこか散文詩のような本作品のなかで、リフレインのように繰り返されます。
大気中に散乱する光の波というイメージは、とりとめもないクロちゃんの連想が、ひとつとしてたしかな意味をもたないまま、駆けぬけてく様子を暗示するかのようです。
そんな彼女の前に、爽やかな光をはなってあらわれる前田しのぶ君。クロちゃんが、初めて興味をもつ相手です。
「しのぶ」という彼の名前からクロちゃんが連想するのは、火星探査車パーサヴィアランス(忍耐)。
二人を結びつけるのは、赤い惑星と、二人が共有したこの連想なのでした。
天晴。あっぱれ。