第11話 屋上へ来るべし

4限では、明後日のお台場での時程を確認した。

朝の9時頃にお台場海浜公園駅で集合し、班ごとに活動するらしい。


そこからは徒歩で東京ジョ〇ポリスでミッションをクリアしていくとの事だ。

どういうミッションなのかは明かされていないが、恐らくアトラクションを乗ればクリアできるものだろう。


その後に昼食を食べて解散だが、嵯峨達はその後どこで遊ぶかを話しているようだ。

勿論俺は、速攻帰る。


周りの生徒と仲良くなるために、この様なもよおしを開いてくれるのは粋な計らいだ。

だが世の中には、そこでさえも馴染めない人間がいるのだ。


それよりも俺は、玉木さんにどうやって話しかけるかの方が重要だ。

昼食の時にアトラクションの感想を聞けば違和感無いだろう。

うん、それでいこう。


しかし気づいてみれば、少し前までの俺は目的もなくただボーッと生きていたが、今になってはしっかりとした"目標"がある。

やはり目標達成を目指して生きるのは楽しい。

例えるならばRPGでボスをどうやって倒すか、自分のステータスと照合して考える事だ。


これも華織のお陰だななんて考えていると、噂をすれば何とやらだ。

華織からL〇NEが来た。


"屋上へ来るべし"


大方、俺の班にいる女子の事を聞きたいんだろう。

そこで少しでもアドバイスを貰えたらいいか。


俺は一昨日と同じように、弁当箱を持って屋上へ向かった。


無骨なドアを開くと、前と同じ場所にあぐらをかいて座っていた。

多分そこがいつものポジションなのだろう。


「あ、きたきた!」


華織は俺を見て、顔をパァっと輝かせていた。

やっぱり、可愛いな…


「お、おう…」


華織は自分の隣の地面をトントンと叩いた。

恐らく、ここに座れっていうことだろう。

隣に座るのは小っ恥ずかしいな…

まぁ、そんなのは今更か。

そんな事を考えながら、俺は華織の隣に座った。


「見て見て!今日はサンドイッチ作ったの!」


そう言った華織は、弁当箱を開けて自慢げに見せてきた。

顔がジャジャーンと言ってる。

キャベツやトマト、照り焼きなどがパンに挟まれていてとても美味しそうだった。


「それでそれで、班のメンバーはどうだったの?」


「杉山くんと、嵯峨くんと玉木さんだったよ」


面子を聞いた華織は、げっとした顔をしていた。

やはり危ないメンバーなのだろうか。


「杉山くんは良かったとして、嵯峨くんもまぁ…悪い人じゃないね。問題は玉木さんか…」


華織顎に手をつけ、考え込んだような表情で目線を落としていた。


「よりによって、玉木さんかぁ…」


クラスが違うのに玉木さんを知っているのか?

あまり人と交流が無さそうな人であるが。


「玉木さんを知ってるのか?」


「あ、うん。可愛いけど、ちょー静かで怖い?事で割と有名だよ」


ま、まさか有名だったのか。

そこまで恐ろしい子に話しかけなくてはいけないのか?俺は。いくらなんでもハードルが上がりすぎだろう。


「せ、せめて、話しかけるのは嵯峨くんにするというのは…」


「ダメね」


「そ、そんなぁ…」


やはり鬼だ。

華織は鬼である。

そんな怖いことで有名な人に、自分から話しかけるだと…?

果たしてそんな事が可能なのか…?


「まぁでも、アドバイスはしてあげるよ」


いくら鬼とは言っても、アドバイスくらいはくれるらしい。

もっともそれが、役に立つのかどうかは別問題だが。


「それはあまり踏み込み過ぎないことだよ。相手の領域にガツガツ踏み込んで、嫌われたらもう終わり。」


「な、なるほど…?」


嫌われたら終わり…。

やはり俺には無理ではないか?

そんな事言われたら、余計に話しかけられないじゃないか…


「あの子のA〇フィールドは超硬いからね!慎重に頑張れ!」


簡単に言うがな、こちとら昨日初めて杉山くんに話しかけたんだぞ。

次はいきなり玉木さんって、いったいどんなクソゲーだよ。

しかも残機は1。


「まぁ、今の君ならできるさ。たぶん」


余計に心配になってきたぞ。

本当に大丈夫なのか…?

ま、まぁ俺には華織がついているんだ。

大丈夫だろう。多分。


「それじゃ!私戻るね!」


弁当を食べ終わり、華織は下へ戻った。

俺は暫く、屋上から見える景色を眺めていた。


**********

ご愛読ありがとうございます!

お台場、懐かしいですね!



筆者である私も、玉木ちゃんに同情してしまいます…



さて、悠は玉木さんにどうやって接近するのか!?

次回もお楽しみに!!

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朝比奈くんは友達が欲しい! 橘 はさ美 @_Tachibana_

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