第6話 なぜの次のなぜ
「実家の財政は、改善の兆しが見え始めたと聞いたが?」
「はい。陛下のご厚意に感謝しております」
「ならばどうしてまだここにいる?」
王子はやはり表情を動かさない。部屋に招き入れたのは、この話を他の者に聞かれないよう気を遣ってくれたからだろうか。
「まだ妃を選ばなかった殿下のお気持ちが分かりませんから」
淡い金の瞳が——まるで瞳まで月のようだ——しばらく私を映し続ける。
「私のために着飾ってくれた令嬢たちや、その準備に身を砕いた者たちには、悪いことをしたと思っている」
そして、王子は謝罪とも取れるようなことを口にした。しかし私が求めているのは、今はもうそれではない。
「いえ、殿下。その点についてはもう良いのです。我々以外にも困窮している一族には、ご慈悲を頂けたと伺っております。ですから、私は単に理由をお聞きしたいだけですわ」
「好みの令嬢がいなかったから、ということにしたのではなかったか?」
「検証の結果、そうではないということになりました」
月王子が自分の勝手で妃を選ばなかったということはない。以前は予感でしかなかったが、今は確信を持って断じることができる。我儘を言う人ではないのだ。何か考えあってのことに決まっている。
「話せば家に戻るか。納得せずとも」
「納得できない場合は、お約束しかねます」
「私は妃を
しかし答えとしては不合格だ。「なぜ」の答えにまた「なぜ」と聞きたくなる答えで、どうして納得できるだろう。
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