第5話 たんけん3 ひこうき編

雨も上がり、いせきをでたわたし達は来た方向とは逆のほうになにを目指すワケでもなく歩いていた。

雨が降った後の森のにおいはどことなく落ち着く感じがして、私もりーもあまり喋らずただ鼻歌を歌いながら歩き続けていた。

見つけたものは特になく、苔の生えた石垣を見つけただけだった。

シマは思ったよりも広くて、ずっと歩いても続いているような気がした。

「ねーお腹すいたー」

「きのう食べたでしょ」

「たーベーたーいー」

「新しく食料見つけれたらね」

「うーん・・・」

私もお腹は空いている。でもすぐに食べてしまったら生きていけなくなるから仕方ない。

「ねえもしかしたらさ」

「なあに?」

「わたし達がこうやって歩き続けてるのって、お腹いっぱいでもご飯が食べれるぐらい食べ物がある世界に行くためかもしれないね」

「・・・?」

「・・・やっぱりなんでもない」

それからまた黙って歩き続けた。

かなり歩いた頃、奥に何か人が作ったような何かが見えてきた。

「あれなんだろー」

「行ってみよう」

少し歩いたら、その何かが姿を現した。

「ひこーきだ!」

緑に塗られたものすごく大きな飛行機だった。

遠くから見えていたのはエンジンの一部で、近づいてみると信じられないぐらいの大きさだった。

しかし胴体あたりが真っ二つに折れていて、ここに着陸したというよりは落ちてきたという感じだった。

「たべものないかなー」

「・・・探してみる?」

「うん!」

真っ二つになった胴体から中に入ってみると中にはいろいろな物が散乱していた。

「おおお!!てっぽうだ!!」

りーが大きくて重そうな銃を持ち上げ、振り回していた。

「危ないから捨てて」

「・・・はーい」

ガゴォォン・・オォン・・ォン

投げ捨てた銃は相当重かったらしく、落ちた時に飛行機の中で大きな音が響き渡った。

「うわあ!」

今度はりーが音にびっくりしてこけて詰んである箱を倒してしまった。

「・・・大丈夫?」

「ご飯だ!!!」

りーは私の心配を無視して、倒した銀色の箱に飛びついた。

開けてみると、あの袋に入ったご飯がぎっしり詰まっていた。

「食べていい!?」

「いいよ」

りーは飲み込むみたいにものすごい速さで食べ尽くしてしまった。

「もういっこ!!」

「だめ。」

「えー!まだこんなにあるじゃん!」

「今食べたら後でさっきよりもっとお腹すくよ?」

「うー・・・」

私もお腹が空いていたので一つ食べてみた。あんまり美味しくないのは変わらないけど、今持っているやつとは違う味がした。

「!」

食べ終わって飛行機の中をうろうろしていたりーが突然何かに気づいたようなそぶりをした。

「どうしたの?」

「歌思い出した!」

「じょにーがかえるときにはふらーふらー、ききとしてむかえよーふらーふらー、おとこたちはうったい、おんなたちはまいおどるよよろーこびむかえーよーじょにーのかえりを」

「何それ?」

「わかんない」

「でもなんか元気になる歌かも」

「そうだねー」

飛行機の床はひんやりしていて気持ちよかった。

この飛行機の中にもよくわからないものが沢山あったけど、「落下傘」とか「重油」とかが書かれた箱とか、どことなく不穏なものがたくさん落ちていた。

あれはなんなんだろう、これはどんなことに使うんだろうと色々考えているうちに、飛行機の小さな窓から夕陽が差してきた。

「すいっちはっけん!」

ぱちっ・・・

操縦席の方から順に白い光が灯った。

飛行機の中はあっという間に明るくなり、入ってきていた夕日はその明るさでかき消された。

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