第4話 たんけん2 あまおと編
起きたら遺跡の中だった。
どうやら神様に関する文章を読んでいるうちに寝てしまったらしい。
外からはざーざーという雨の音が聞こえる
りーは相変わらず気持ちよさそうに寝ている
普段忘れているのに、今日はやけにお腹が空いた。
それでも何だかやる気が起きなくて、葉っぱに雨粒が当たる音をぼーっと聞いていた。
ぽちゃぽちゃ、ぱらぱら、ざーざー。
いろんな音がたくさんくるのに、その音はなぜかやさしくて聞いてて心地がよかった。
「んー・・・おはよあおいちゃん・・・。」
「起きたの」
「おなかすいた」
りーが自ら起きてくることは珍しい。それぐらいお腹が減っていたんだろう。
「えむあーるいーもあと6個かな」
「りーがたべてもいいよ」
「だめ」
「これからたべ物どうするの?」
「そこらへんで拾って食べるとかしかない・・・」
朝ごはんにえむあーるいーを流し込んだ。
あまり美味しくないけど、十分だった。
りーはとてもおいしそうに食べているが、本当かどうかわからない。でも本当においしいと思っているのかもしれない。
「ほうはほうふふほ?」
「飲んでからしゃべって」
するとりーはめちゃくちゃな早さでたべきろうと必死に飲み込みまくった。もちろんむせてしまった。
「今日はどうするの?」
「濡れたくないしいせきにやむまで居るかな」
「ひまだねー」
いせきの中の石像は天窓から降る雨にぬれて、寂しい表情をしていたように見えた。
天窓の下に持ってきたスキットルを置いて水を貯めた。
とたん、とてん、とてたん、てん。
いせきの中で、心地いい音が響いた。
「いい音だねー」
「そうだねー・・・」
なにをするわけでもないし、できないので壁にすがりかかって目をつぶった。
とたん、てん、とててん、ぴちゃ。
スキットルに雨水が溜まり始め、金属を叩く音から、水面に水滴が落ちる音に変わり始めた。
とてん、てん、とん。
りーが飲んだのか、また金属を叩く音に変わった。
「飲んだでしょ」
「起きてたの!」
「別にいいよ。減るもんだけど飲まなきゃ死んじゃうし」
「・・・ありがと!」
いせきに流れ込んでくる雨の音は私を現実から遠ざけた。
私が誰だったとか、なんでここにいるとか、ここはどこなのかとか。
目の前のこと以外に考えていたつまらなくて、終わりのない悩みやなぞが、雨と流されて地面に染みて地球に吸い込まれる感じがした。
「るーるるーふふーんふーんるーるーるー」
「なにそれ」
「しらない。なんかあたまんなか流れてるの」
「ふーん・・・」
しばらく、多分ずっと、りーは鼻歌を歌っていた。
たしかにどこかで聞いたことがあるような、でもなにか違うような曲だった。
私もなにかないかなと、いろいろ考えていると不思議なぐらいはっきり覚えている歌があった。
「さーくらーのはーなーがふーるこーろーにー、あーなーたのもーとへむーかいーまーす」
「なにそれ」
「しらない。なんか覚えてる。」
桜の花がふるころに、あなたの元へと向います
あなたの温かい笑顔を見るために
桜の山で見た、かわいいあなたのその笑顔
叶わぬ敵わぬ恋心でも、あなたの元へと向かいます
「おわり?」
「ここから覚えてない」
覚えている歌詞をずっと繰り返して歌った。
意味はあんまりわからないけど、好きな感じがした。
なんだか楽しかったのか、りーもまねして歌い始めた。
歌い疲れて寝たあと、雨はすっかりやんでいた。
スキットルにはあふれるほどの雨水が溜まっていて、赤色の夕日の光をうつしていた。
「まだここにいようよ。」
「もう暗くなるしそうしよう。」
「やた!」
夕日がいせきの石像を照らして、最初あった時みたいな感じに戻っていた。
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