証言

「本当にやるの?」

「言い出したのシュノだろ。」

「それはそうだけど。」

「証言頼むだけだよ、あのイカれ女にはたいした迷惑じゃないだろ。」

オミトと2人で、大して舗装もされていない道を歩く。

10分もしないうちに廃墟になった家が立ち並ぶ集落へついた。

その中で唯一、新築の家が目立つ。

「……あれ?」

ちょうど野乃香の家の場所だ。

ただ、前回とは違いとても綺麗になっている。

前になかったインターフォンを押した。

「野乃香?私よ。シュノよ。」

これで人違いだったら単純に恥ずかしい。

特に警戒もせず、ドアが開いた。 

「あ、シュノ。」

嬉しそうにしてくれる。罪悪感を感じる。

「久しぶりね。最近家にいなかったみたいだから、びっくりしたわ。」

「ねえ、今空いてる?」

何だが騙しているみたいで気は進まない。

「うん。今日は暇だから。」

隠れていたオミトが姿を表す。

「んんっ?殺し屋さんまでナニ?ナニ?」

野乃香は後ずさりしている。

「今からリッコにーーお前をあのとき、迎えに来た女に電話するから質問答えてもらっていいか?」

「状況はよくわからないけど、電話で話すだけなら、別にいいわ。」

オミトはリッコに電話をかけて、しばらく話した後野乃香に変わった。

私は2人を見守ることしかできなかったが、比較的に落ち着いて話していた。

「ん、わかった。ああ、わかってる。こっちでも調べておく。」

オミトは電話を切ったあと、

「野乃香だったっけ?」

「そうよ。」

「助かった、全部じゃないけど、疑いが晴れた。」

「ま、よかったわね。ーー何のことかわからないけど。」

「オミトはどうするの?」

「ちょっと久遠と出掛けてくる。はい。」

オミトは上着の内ポケットに入っていた封筒を渡す。本一冊くらいありそうな厚さだった。

「しばらく帰ってこないから、これで好きに過ごして。」

「急ね、どのくらい?」

「んー、1か月。最悪、半年くらい?」

「長いね。」 

「退職手続きしてくるさ。」 

「大丈夫なの?」

「……多分、何とかなるから。」

オミトは家に帰って行った。

「殺し屋さん、仕事でもあるの?」

野乃香は心配そうに見てきた。

「んー、そうね。そんなとこかも。」

「シュノは暇なの?」

「ああ、うん。そうだけど……。」

「じゃ、うちに来て!」

野乃香は私の手を引っ張って、家の前までついた。

「ここって本当に野乃香の家?」

「そうよ?」

ヒビだらけの壁、ちょっとずれている瓦。正直住めるとは思えない家だったはず。

だが、私の目に映るのは白く塗られたヒビ1つない壁。整った瓦。

雑草と小石の転がるただの荒れ地だった庭が、石畳みが敷かれ、灯籠が置かれ見事な日本庭園に生まれ変わっていた。

「1か月前とは全然違うわね。リフォームってこんなに早くできるもの?」

「あの人が業者入れてくれたら、何とかね。でも、離れはまだリフォームは終わってないの。」

家の中にはいると、草色の畳と、高そうな家具が目につく。

「すっごく豪勢……。」

「そう?家具やデザインは業者に任せたから、私あんまり関わってないのよね。」

劇的に変化するリフォーム番組でも見ている気分だった。

「ねえ、庭歩いてもいい?」 

「どうぞどうぞ。」

野乃香と一緒に歩く庭園は、どこかの観光地に来たのかと思うくらい丁寧に整えられていた。

「旦那さん、でいいのかな。すごいね、ここまでするなんて。」

「まあ、やりたかったらしいよ。住んでくれる人がいないから手入れする気になれなかったらしくて。」

「へえ?勝手に入ってよかった?」

「いいの、いいの、うちも滅多に帰ってこないから。いつもは出張だし。」

「そ、そう。」

「それよりさ、1ヶ月間何してたの?旅行?」

「一応……?」

「じゃ、その話もっと聞かせて!」

「う、うん。」




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