欺瞞
「ここも行ったし、これもやったし、これは時期が違うし、ねえ、後何がしたい?」
オミトはパンフレットをパラパラめくりながら話す。
旅行をしてすでに1か月経った。
3人で、温泉に入ったり、城下町を見たり、博物館に行ったり、遊園地や美味しいものを食べたり、キャンプに行ったりレジャーらしいレジャーはだいたいやり尽くした。
ソファーを腰掛けながら、窓の外にある海を見た
「海、まだ、早い?」
「ええ、そうね。間違いなく寒いと思う。」
「んー、もう高いホテルも泊まったし、美味しいものも食べたいしね。」
「山、は?」
久遠が雑誌を見ながら言った。
「何しに行くんだよ。」
「きのこ狩り、か、山芋でも掘る?それか鮎釣り。」
「季節か、それ?」
みんなでやいやい盛り上がってると、オミトの電話が鳴った。
「知らん番号だ。」
「出る?」
「ああーーはい、もしもし?」
オミトは人差し指を口に当てて、静かにしてと合図してからスピーカーモードに変えた。
「うちの会社からアンタらに疑いがかかってるわ。」
電話の主はリッコだ。
「殺し屋から強盗にジョブチェンジでもした?」
「こないだの件かよ、報酬が貰えるのにたかが数十万に手つけるか。」
「そう?退職金変わりにでももらったんじゃないの?」
「はあー?言いがかりも甚だしい。」
「アンタらの現場だけなのよ、金が極端に残ってない現場。」
「知らねえ、もうお前らの会社と仕事はしない。こないだの案件もキャンセルが急遽入った。」
「でも、その現場すら荒らしてたじゃない?」
「は?」
オミトは全く心当たりがないようで、
「おいおい!そんなことしてないぞ!拷問すらロクにしてないんだから。」
「は?でも、掃除屋が証言してたわ。」
「……チッ。」
2人はしばらく言い合ってた。
横を見ると、久遠が話を聞きながらげっそりしていた。
そして、オミトが電話を切り終わった。
「逃亡生活、する?」
「いや、掃除屋が入る前後に来やがった火事場泥棒をぶっ殺せば問題なくなる。」
「どうやって、探す?」
久遠とオミトは悩んでいた。
「……何の話?」
私は二人の顔を交互に見た。
「現場で金品がなくなるって話、前にしたよね?」
「リッコが来たときのこと?」
「そうそう。」
「リッコどころか、会社から俺たちが犯人じゃないかって疑われてさ。」
「というか、ほぼ、確定。」
金品が盗むというのは殺し屋業界ではご法度らしく、オミトたちはその最低限のルールを破ったという扱いを受けているらしい。
個人的には拷問が許されてるんだから、盗みくらい大した問題ではないんじゃないのか?
「なんでそんなことになるの?」
「わからん。あの、変わった近所の女の人いるじゃん?」
野乃香のことだ。
「あのときの現場ですら俺たちに」
「じゃ、じゃあ。野乃香に証言してもらうのは?」
「は?」
「だって、一緒にいたでしょ?その現場に?野乃香からリッコに話したらどうにかならない?」
私は必死だった。
このまま何もしなければ自体がただ悪化するだけな気がした。
それがオミトたちが死ぬことなのか、それよりもっと恐ろしいことなのかわからなかったのも確かだが。
「上手くいくか?」
「シュノや、俺たちよりは、信憑性、ある。」
「それもそっか。」
オミトはパンパンと手を叩いた。
「さ。旅行は中止して帰ろう。」
口元を歪ませて
「早くしないと今度は俺らが賞金首になりそうだからな!」
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