41. 決行日は春の大掃除日

 間もなく春、という頃までかけてすべてのマジックバッグを引き渡し終わった。

 あとは決行日を待つだけなんだけど、僕はそれも聞いていない。

 そこまで深く首を突っ込むのもどうかと思うけど、一応ダレンさんに聞いておくか。


「ん? 作戦決行日か」


 いつも通り街に行き、ポーション販売が終わったあと、ダレンさんのいるギルドマスタールームに足を運んだ。

 そこでダレンさんから作戦決行日を聞いてみることにする。

 教えてくれなければそれまでだけどさ。


「ああ、アークたちにはお世話になっているし話してもよかろう。春の大掃除の日だ」


「春の大掃除。もうすぐですね」


「そうなる。引き渡しが間に合ってよかったと考えているぞ。向こうは間に合わなかった場合に備えての次善策を用意していたようだがな」


「でしょうね。でも、兵士の展開は間に合いますか?」


「間に合うのではないか? まだ1カ月あるからな。それよりもこちらの体勢が間に合うか」


「こちらの体勢?」


 はて、こちらの体勢とはなんだろう。

 そこについてもダレンさんから聞いたけど、ちょっと意外な答えが返ってきた。

 こちらの体勢とは、街の中に獣人族国家の兵士たちを招き入れるための体勢だそうだ。


「大掃除のときは街門もしっかりと戸締まりしてから討伐に向かう。これを開けないことには街の中を制圧してもらえないんだ」


 なるほど。

 新しい国境を勝手に作っても街を制圧できなければ意味がないと。

 特に獣人排斥派を一気に蹴散らせなければ意味がない。

 あいつらが立て籠もってしまえば、本格的な戦闘になりかねないからな。

 防衛側のやる気はともかく。


「事前に人を招き入れておくことは?」


「可能なのか?」


「不可能ではありませんよ。ダレンさんはルナのことを知っていますよね」


「ああ。……ああ、同じようにすれば!」


「数はあまり用意できませんけど、それでも10人くらいの分は用意できるはずです。あとは上手く潜入してもらって門を開けてもらうしかないですね」


「そうなるな。わかった、その作戦で行こう」


 こうして、僕が作る物がもう少し増えた。

 構わないけど貸しが増える一方じゃないかな。

 ダレンさんは作戦が成功したらまとめて支払うと言っているけど、どうだか。

 まあ、期待しないで待っているよ。

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