33. 武器の機能テスト

 武器の性能を試すためということでギルドの裏にある訓練場まで来た。

 ただ、ここにある案山子程度に本気で武器を振るわれると案山子がはじけ飛ぶだけなんだよな。

 どうしたものか。


「アーク。この武器で本気を出すとどうなる?」


 早速ダレンさんから質問が飛んできたがどう答えるべきか。

 本気を出した場合の破壊力は僕もよくわからないんだよね。


「とりあえず、そのバトルアクスなら大抵の金属はできます。押し切るんじゃなくて鋭さだけで切れます。魔力を通さないと切れ味が鈍いままなので持たなければたいした切れ味がないのですが」


「なんつーもんを作って来てんだよ」


「仕方がないでしょう。スカーレゴルドの装備ってそういうものです」


 本当にそういうものだから仕方がない。

 魔力を流さないと切れ味が鈍るように細工はしてあるけれど、本来なら重さだけで大抵の金属が切れてしまうんだからね。

 こんな斧、普通は危なっかしくて使えやしないだろう。


「アーク君。私の剣や盾も特別製ですか?」


「キルトさんの装備も特別製ですね。剣はダレンさんの斧よりもさらに切れ味がいいですし、盾は大抵の攻撃を受け止めます。爆発物による攻撃を受けても盾で身を守ればびくともしないだけの頑丈さを得られますよ」


「それはそれは。恐ろしくもありますが頼もしい。ダレン、私たちで打ち合ってみましょう」


「んー、ここにある訓練道具を使うと軒並み破壊しちまいそうだしそれしかないか。アーク、お互いに打ち合っても壊れないよな?」


 打ち合った場合か。

 どうだろう……?

 答えあぐねていると不安そうにダレンさんが再び聞いてきた。


「おい、アーク? 本当に大丈夫なのか?」


「えーと、キルトさんの盾は大丈夫です。マリナードブルーを使っているので壊れません。バトルアクスと剣はちょっと試してみないとなんとも」


「不安だなぁ、そのセリフ」


「まあ、試してみようじゃありませんか。行きますよ、ダレン」


「仕方がねぇか。おう、来いや、キルト!」


 突如として始まった冒険者ギルドマスターのダレンさんと酒場のマスターキルトさんの打ち合い稽古。

 それを一目見ようとたくさんの冒険者たちが周囲に詰めかけてきた。

 ふたりはお互いに間合いを牽制し合うと、一息に距離を詰め斬りかかる。

 そして、剣とバトルアクスがぶつかった瞬間。

 双方の武器が大きく弾き飛ばされて宙に舞った。


「わあ、危ねぇ!?」


「逃げろ!!」


 武器が飛んだ方向の冒険者たちは慌てて飛んできた武器を避け、怪我人は出ずに済んだ。

 でも、この武器がぶつかるとあんな反応になるのか。

 初めて知ったよ。


「おい、アーク! いまのはなんだ!?」


「アーク君。さすがに聞いていませんよ?」


「あー。おそらく、お互いの武器にかけてあった衝撃強化の魔法付与が悪さをしたのかと。強力な衝撃強化を施した武器同士がぶつかるとこうなるのか……」


 初めて知った。

 そもそも、魔法付与した武器同士がぶつかる場面を見るのも初めてかな。

 いや、自分で作ったにせよ恐ろしい武器だ。


「アーク、お前、作ったものにはちゃんと責任を持て」


「いや、個別にはテストをしてあるんですよ。どっちも破壊力抜群なのは間違いなく」


「破壊力抜群な武器同士がぶつかるとこうなるのですね。私たちも学びを得ました」


 3人で乾いた笑いをあげながら弾き飛ばされた武器を見やった。

 うん、気を付けよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る