31. 依頼は砦の材料作り
「さて、今日ドナルの奴が冒険者ギルドに乗り込んで来ていた件だが、奴がさっき言っていた通り、あいつが街長を継ぐことになったという決定事項を伝えるためだ」
ドナルの奴がやってきて口走ったことの真偽を問えば、ダレンさんは真顔で答えてくれた。
ドナルがこの街の長になる?
一体どうやって?
「どうやって、と言う顔だな」
「当然でしょう。あいつは害悪なだけの老人のはずです」
「俺たち街の者にとってもその認識で正しい。だが、ここで面倒なことをしてくれたのは国なんだよ」
「国?」
「ああ、国だ。国のお偉いさんがやってきてドナルを街長に任命すると言い放ってきた。そいつの出自の確認とかいろいろとしてみたんだが、どうにも本物のようでな。ドナルがこの街の街長になることは避けられそうにない」
国の人間が街の人事に口を挟んできたか。
言われなくてもこの街は獣人排斥派が存在感を示せない街だ。
むしろ、その存在が邪魔者でしかないという風潮すらある。
そんな街で獣人排斥派をトップに据えるには国が強硬手段を執るしかないわけだ。
まったく、面倒なことをしてくれる。
「それで、この街は従うんですか?」
「従うもなにも、背くことができるはずもない。この街だって国の一部なんだ。誰も彼もが乗り気じゃないが逆らえないんだよ」
力なくダレンさんが言うが、目には力が宿ったままだ。
なにかいい考えでもあるのかな?
「それでだ、腕利きの錬金術士殿にお伺いしたい。お前、砦を作れないか?」
「砦を?」
「ああ。砦だ。外部からの侵入者を防ぐ城壁と砦だけあればとりあえずはいい。必要な機能は砦や城壁を改築して取りそろえるさ」
「砦を……砦を作る」
そんな大それたこと考えたこともなかったな。
いままでは大きくても装備までしか作ったことがなかったのに、いきなり街とは。
いや、でも、考え方を変えれば……。
「ダレンさん。その返事、いますぐ必要ですか?」
「いや。いますぐでなくても構わん。ただ、冬の間にはほしい。次の準備もあるからな」
「わかりました。帰ったらすぐにでも実験してみましょう」
砦を作るには城壁と砦本体が必要。
砦を作るには木材と石材、それから粘土とかが必要かな?
城壁は大量の石材と粘土でできそうだ。
素材と作るものさえわかっていれば、想像と工夫で何とかするのが錬金術士の腕の見せ所!
なんとか上手く形にしてみせる!
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