第一章『閉鎖都市TOKYO』

1話。決死の上京

「……やっと、着い、た」

 喧騒の鳴り響く街で、小さな少女が息切れしながら言う。

 オレンジ色の髪をしたポニテの彼女は『エマ・レリック』。13歳の中学生だ。


 息を整え、街を見上げる。

 好奇心に満ちた、キラキラした瞳で、最高の元気を取り戻しながら。

「これが『閉鎖都市TOKYO』……!」

 大声を出さないよう気をつけつつ、溢れ出る思いに耐えられずについ声を出してしまう。

 今はというのに、どうしてもその思いは抑えきれなかったようだ。


「───はッ! 危ない危ない……バレてないよね?」

 慌てて周りを見渡す。

 声はもう出てしまったので仕方ないとして、流石にずっと景色に観入っていれば怪しく思われるだろう。

 それはマズイ。かなりマズイ。なので一旦飲み物を飲んで落ち着くことにする。


「……ぷはっ! ……ん!、よしっ!」

 お茶を飲み、頬を叩く。自身に喝を入れ、もう一度観入ってしまわないように痛みを覚えた。

 なんのために此処に来たのか。その目的を忘れてはいけない。

 そのために野を越え山を越え、ビルを越え門を越え国境を越えて来たのだから。


(一旦振り返っておこう。さっきみたいについ興奮して忘れちゃうかもしれないし。

……いや、私に限ってそれはないか。でも振り返っておいて損はないだろうし、一応やっておこう)

 周りに聞こえないよう、心の中で目的を振り返る。

 考え事のしすぎで挙動不審にならないよう気をつけつつ、彼女は思考を始めた。


(私の目的は二つ。

 一つ目は『あの人と出会って話をする』。これが第一目標。

 生粋の天才ってことぐらいしか情報はないけど、これは文句を言っても変わらないから仕方ない。これで頑張ろう

 そして二つ目。『』。正直、これが本命の目標。

 一個目の方が大事だけど、心情的にはそっちを目当てにやってきたし……。

 あ、でも肝心のなり方がわからないんだった……うえ〜……)

 目的を振り返り、その達成方法を考えてなかったことに気づく。

 やはり振り返ることは無駄ではないのだと誇らしげに頷き、そして達成方法を考えてなかった自分の詰めの甘さを反省した。


(……いやでも、なり方は実際に聞けば良いだけの話だし。ってことは、あの人に会えばわかるってことだよね。

 つまりどちらにせよ、あの人と出会えば全部解決するってことだね!)

「よし、そうと決まれば人探しだ! 聞き込みするぞー!

……ん〜まぁ、よし! ちゃんと声は抑えた!」

 切り替えの早さは流石というべきか、彼女はすぐに元気を取り戻した。

 相変わらず声は出てしまっているが、反省の成果か半分程度には抑えられている。


 昂っている気持ちを落ち着けるため、もう一度お茶を飲む。

 今度は景色に観入ることもなく、彼女は街へ駆け出していった。

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