未来探検家 〜閉鎖都市TOKYO〜

どこんじょう

序章『未来探検家』

プロローグ。今より一万年後の未来にて

───西暦12025年、人類の滅んだ地球にて。

 少女……『炭川美来』は一人、佇んでいた。


 何故、人類の滅んだ地球に“少女”がいるのか。もしや、人類ではないのか

 ……否、美来はれっきとした人類である。遺伝子配列のどこにも異常は見られず、強いていうならほぼ全分野のIQがずば抜けて高い程度の違いしかない。

 西暦2007年生まれの18歳。髪の毛は黒く、あまり長くはない。むしろ少し短い方に入る。身長は161cmで同年代の女性の中では平均よりも高く、しかし高すぎる訳でもなく。体重は50kg程度で好物は砂糖───というより糖分の高い食べ物全般。


 さて、これだけ聞けば『なんてことはない。地球上の何処かにはいそうな女の子』であるわけだが、ここで疑問が生まれるだろう。


 ───西暦と年齢が一致しない。


 生まれた年と年齢を照らし合わせた場合、現代は『2025年』でなくてはおかしい。

 しかし、彼女が今いるのは『12025年』の地球だ。


 不老不死?

 ───否、それなら16歳とは表現しない。


 コールドスリープ?

 ───否、彼女の肉体は16年しか生きていない。


 ……答えは意外にも単純。

 彼女は、のだ



♢♦︎♢♦︎♢



「んぁ……疲れて寝ちゃってたな、こりゃ」

 少女は緑色の大きなゴーグルを外し、瞼を擦る。

「ふぇあ……うぉっ、とぉやっば……」

 欠伸をしようと体を動かし、その拍子に足場が揺れて崩れかける。

 欠伸をするだけで崩れかける足場など、一体どれだけ脆いんだと言いたくなるだろう。

 だが、この足場なら崩れかけるのも当然だ。


───何故なら、彼女が寝ているのはだからである。


 欠伸ごときで崩れかけるというより、むしろこんな不安定な足場で寝れる方がおかしいのだ。

 そもそもが彼女に襲いかかってきた兵器を適当に壊して適当に積み上げたもので、そこに計画性なんてものは一切ない。

「そういえばどうして今日はこんなに多かったんだろ。ふーむ……あ、そっか。今日は“あの日”だったか。国名なんだっけ、記念日なんだよね?

 残ったまま滅びたのか。別の未来アッチは生活の痕跡がないんだよねー。そういえば予定は別の未来アッチだった。

……まぁ忘れてたね。稼げたしモーマンタイモーマンタイ。あーそっかココだもんね。

 帰ったらちょっと拝借しようかな。これだけ回収したなら許されるでしょ。

 たまたま今日でよかったな。棚ぼただね」

 側から見れば意味不明な独り言。それでも本人の中ではしっかりと繋がっているので問題はない。

……一応断っておくが、彼女の頭がおかしいわけではない。少々頭が良すぎて本人の脳内で完結しているだけなのだ。


「んむ。これだこれ。かなり貴重なんだけど流石にこれだけいたら数も多いね。

母数が増えるとその分目当ても出やすくて助かるな。いやほんと散歩気分だったんだけどな。思わぬ稼ぎだ」

 独り言を呟きながら兵器の残骸を漁る。

 楽しそうだが怖くも感じる蒼い瞳で、その価値を見定める。

「うん。これはまだ研究が進んでないんだよね。

 これは個人的に欲しい。これは頼まれてる。これはもう調べた。報酬がいいんだよね、取っておこう」

 それぞれに脳内でラベルを付け、腰に装着している機械で次々と吸収していく。

 吸収した“モノ”は後から取り出すことができ、彼女はこれを使っているのだ。

 満足するだけ吸収し、その後はこれを持って現代に帰還する。それが彼女のであり、である。




「よし、そろそろ帰ろうかな。現代あっちの方はもうそろそろお昼だろうし」

 そろそろお腹が空いたと、彼女は帰る準備を始めた。

 帰ったら何を食べようかとそんなどうでもいいことを考え、“それ”に気づく。

「……キミ新人でしょ? 不意打ちが狙いかもだけど、バレてるよ」

「チッ。マジかよ」

 壊れかけのビル壁の裏から男が現れる。

 両手で銃を構えながら、両目で彼女を見据えている。


「私の手に入れた“遺物”が目的なんだろうけど、これは渡すつもりないよ?」

「知ってる。だからわざわざこうやって狙ってんだろうが」

「う〜ん。やめときな? どうせ私が勝つし

 負けたら君の集めた遺物はパーだ。損しかない」

「……勝てばいい話だろ」

「うにゃー……私の実力知らないなぁ?」

 銃を構えられているというのに、彼女は全く動じない。

 それどころか、銃を構えている相手に忠告をしている。

 年齢・体格・武器。全てで勝っているはずの男に向かって、「自分が勝つからやめておけ」と、まるでそれが当たり前かのように。


 だが、男は引かない。

 怯えてはいるものの、それ以上に好奇心満点の表情で彼女を見つめている。

「あーなるほど。ソッチだったか。

 まぁ、そういうことなら良いよ。OK。サービスとしてその遺物、ちゃんと返してあげる」

 余裕満点の表情で、彼女は手のひらを差し出した。

「どうせ死んでも死なないんだ。

 その言葉を皮切りに、二人は動き出す。




───彼女は『炭川美来』。2007年生まれの18歳。

 身長161cm、体重50kg。好物は糖分の高い食べ物全般


職業───『

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