異世界転生者の果て

虹凛ラノレア

異世界転生者の果て


 気が付いたら周りは見覚えのない風景が視界に映った。


 何故私はここに?私は確か———事故で亡くなった…?


 私はどうやら現在流行っている『異世界転生者』になったようだ。どこでそこが分かったかって?そりゃ周りを見れば分かる。通りすがりの人は剣や杖を持ちながら歩いている。道端では転んでしまった子供に治癒魔法をかけている所も見かけた。


 自分はどのような異世界チート能力を持っているのだろうか…?私はとりあえずどのチート能力を所持しているか近場の草原に足を軽々とステップしながら向かった。


 近場の草原に到着した。やはりここは異世界で間違いないであろう。何故か?目の前にスライムがいるのだから間違いない。さてどのようなスキルが扱えるのだろうか。


 そうそう普通は画面を開いて自分のスキルとかレベルを確認出来るんだっけ?よし開いて確認してみよう。


 名前:〇〇〇 Lv:∞  HP:∞ MP:∞

 能力:全属性攻撃魔法スキル MAX、回復魔法スキル MAX、剣術スキル MAX、全属性耐性スキル MAX

 

 やはりほぼカンスト状態のステータスだ。よし、そこらへんのスライムに撃ちまくって試してみるか。


 そこらへんにいるスライムは秒で全て倒した。次は冒険者ギルドにでも出向いて自分の凄さを披露するか。まぁ、ここは謙虚にいかないと周りの目が痛い程に驚かれるんだけどね。


 私は冒険者ギルドに入り、受付嬢と話しをした。受付嬢と話し、とりあえず入会手続きをしなければならないようだった。


 入会手続きを終え、中級ぐらいの難易度の依頼を受けた。最初は受付嬢に初心者だと危ないと言われたが自分のスキルでは安易にクリア出来るであろう。


 私は中級難易度の依頼を30分ぐらいで終わらせ、冒険者ギルドの受付嬢に依頼達成した事を告げ、物も渡した。


 周りの人々は私に注目し驚きを隠せない表情になっている。まぁ、当然の反応だ。ここの住民では何年間も住んでいて各々鍛錬をしてようやくクリアできる依頼なのだから。


 私は注目の的となり周りには助けを呼ばれる事も多くなった。次第には仲間も増えていった。


 ここの世界では強い人は勿論、注目の的になる。いや、以前の世界でもそのはずだ。何事もこなす人や、知識を沢山身についている人は魅力的な人だろう。


 私は以前の世界では、人並に努力をして生きてきた。勉強も頑張り、就職し、仕事も自分で出来る範囲内はこなしてきた。


 しかし、以前の世界ではどれだけ足掻いても自分より勉強や仕事が出来る人など沢山いた。


 何度も思った。何故、世界は平等ではないのではないのか…と。結局の所、自分は『凡人』なんだ…と認めざるを得ない状況だった。


 私はこの異世界転生で前世ではなかったダントツにずば抜けている能力を使い、今度こそ人生を謳歌してやると思った。


 異世界転生をしてから私は能力を思う存分使い、周りには沢山の仲間がおり、国の偉い貴族にも、次第には王様にも一目置かれるようになった。


「やっぱり〇〇〇の凄さには負けるな!」

「〇〇〇がいてこの国は安泰だ」

「〇〇〇には何度も救われてるな。今後も期待しているよ」

「〇〇〇はこの国の英雄だ」


 前世では味わった事のない周囲からの圧倒的な信頼、期待の眼差し、自分無しでは国が滅びかける程の存在価値。


 そう…私をようやく認めてくれた…と実感した時だった。


 私は皆を認めさせ、自分の存在価値の偉大さを異世界で堪能した。そして余韻に浸った後、以前の世界と今の世界の違いを冷静に考え始めた。


 この世界でも元々、私程のチート能力を所持している人などいなかった。いや私が以前いた世界で自分のような『凡人』がそもそもこちら側の世界でも普通だ。


 この世界の普通の人々は私が前世にいた『凡人』の自分と一緒なんだ…と気づいた。この世界もまた自分がチート能力を扱うのを見て、何故、世界は平等ではないのではないのか…と思っていたのであろう…。


 そう、結局の所だ。この世界の住民も自分は『凡人』なんだ…と認めざるを得ない状況だ。

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異世界転生者の果て 虹凛ラノレア @lully0813

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